神田伯山、夢は講釈場の建設「復興の象徴に」 人手不足の現状訴え「僕の力だけでは」

講談師の神田伯山が7月21日に都内で行われた『講談放浪記』刊行記念の記者会見に出席。講談界の現状と未来について持論を語り、さらなる講談ブームと新しい才能の出現にも期待を込めた。

自著を手にアピールする神田伯山【写真:ENCOUNT編集部】
自著を手にアピールする神田伯山【写真:ENCOUNT編集部】

『講談放浪記』刊行記念の記者会見

 講談師の神田伯山が7月21日に都内で行われた『講談放浪記』刊行記念の記者会見に出席。講談界の現状と未来について持論を語り、さらなる講談ブームと新しい才能の出現にも期待を込めた。

 雑誌連載を書籍化した自著『講談放浪記』(講談社)を20日に刊行した伯山は、本書の中で講談界はポテンシャルが生かし切れていないと言及。

 その理由を「圧倒的に人数が少ないんですね。落語家が東京大阪で900人以上はいると思うんですけど、講談界は100人くらいです。ネタも古典講談は4500席以上あるんですけど、ひんぱんに演じるのは、400話くらい、さらにその中でもおなじみの講談となると150話とか200話くらいですね。単純に(講談師の)人数がいないので、いろんなネタもまだできないとか、ネタの洗練度も落語に比べると弱い」と、落語家に比べ講談師の少なさを明かす。

「まず人数を増やす、そして聞いていただくお客様を増やす。その作業を昔から私はとても大事にしてきました。私の入門時は今以上に整ってなくて、入門のような本も、音源も何もかもなかったんです。だから入り口がなかった。初心者向けて入り口を広げようと(講談界の)インフラを整えたいというのが私が重視してきたことで、講談師の数を増やす。お客様の数を増やす。この作業が、全盛期に近づく唯一の方法なのかなと思います」と持論を語った。

 伯山は講談のファンをさらに増やすべく、講釈場を作りたいとも構想を明かす。

「師匠(神田松鯉)に対談の中で聞いたら『渋谷』ってかえってきて、渋谷と神田松鯉がなかなかつながらなくてびっくりしたんですが、『渋谷じゃだめかい?』って言われて。師匠が言うんだから渋谷に建てたいなっていう気もしなくもないですし、僕は八丁堀の聞楽亭にもすごく思い入れがあって八丁堀に建てられたらいいなと思うんです」と候補地を話すが、「一番大事なのは持続可能な講釈場を作ることだと思うんです。場所をどこにするかも綿密なリサーチをして、相当調べて選定していくくらい慎重にやりたいっていう意識はあります」と現実的な目線の話も。

「講釈師が東京だけで200人以上くらいになった頃に1軒建てられたらとてもうれしいかな。実現できるのは30年後40年後になるかもしれないですし、もっと前になるかもしれませんが、講釈復興の象徴になるかなと思っていますので、生きてるうちにかならず建てたいなと思っています」と講釈場開設の理想を語った。

 さらなる講談ブーム作りへの伯山の期待はメディアミックスにも。「『ひらばのひと』というマンガがあって、歴史上初めて講談師を主人公にしたマンガだと思いますが、これが爆発的に売れてくれたらドラマ化し、映画になったりとつながっていくのかなと。あるいはうちの弟子が突然スターになったりと……何か突破口作りのための種をまいている状態で、それが世間の人の目に届くようにという意識はありますね。粛々と自分のやれるべきことをやっていく中で、弟子たちや後輩にも期待しています」と話した。

「今、一番チケットが取れない講談師」として講談界をけん引してきた伯山だが、「僕の力だけでは大したことはないので、現状これくらいしか広めることができない中で、テレビを見ながら寝転がっている、講談に何の興味もない人に向けても、何かのきっかけでものすごい才能があるやつを振り向かせる作業を、あらゆる媒体を使ってやっているのかなと思います」と振り返った。

 そして「僕なんかくらべものにならないくらいの才能が講談界にくることを待っています」と、講談師を志す者が増えてくれることに期待を込めた。

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