野杁正明、団体批判の元K-1戦士への違和感「目先のことばかり」「落としても誰も得しない」

“怪物”の異名を取る格闘家がいる。K-1 WORLD GP世界2階級制覇王者の野杁正明だ。今月17日に行われる立ち技格闘技イベント「AZABU PRESENTS K-1 WORLD GP 2023~スーパー・ウェルター級&女子フライ級ダブルタイトルマッチ~」(東京・両国国技館)でのアマンシオ・パラスキフ(ルーマニア)戦でキャリア60戦目。今年で30歳となる節目の年に格闘技との出会いやK-1、理想の引退について話を聞いた。

K-1への思いを口にした野杁正明【写真:ENCOUNT編集部】
K-1への思いを口にした野杁正明【写真:ENCOUNT編集部】

小学生時代に受けた「いじめ」が格闘技との出会い

“怪物”の異名を取る格闘家がいる。K-1 WORLD GP世界2階級制覇王者の野杁正明だ。今月17日に行われる立ち技格闘技イベント「AZABU PRESENTS K-1 WORLD GP 2023~スーパー・ウェルター級&女子フライ級ダブルタイトルマッチ~」(東京・両国国技館)でのアマンシオ・パラスキフ(ルーマニア)戦でキャリア60戦目。今年で30歳となる節目の年に格闘技との出会いやK-1、理想の引退について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

 テレビで見た○○に憧れて――。など格闘技との出会いは人によってさまざまだ。怪物と呼ばれる男の場合は少年時代の「いじめ」だった。

「小学校2年生のときが1番でした。背の順で僕は後ろから2番目で、1番大きかった子に日常的にいじめを受けていました。普段からちょっかいをかけられて、放課後のときも呼び出されて殴られたり、蹴られたりみたいな。その子と仲の良かったもう1人に日常的にやられていました」

 いつものように渡り廊下でいじめられている野杁の前を4個上の先輩が通りかかる。その先輩が大石駿介。空手をやっていた先輩に憧れ、野杁は格闘技を始めた。

 格闘技が心を強くした。

「翌年にはいじめをしていた子が引っ越して、必然的にいじめはなくなったんですけど、強くなっていくうちに自分に自信が持てた。誰かがいじめられたら助けてあげようという気持ちになりましたね。

 自分がそうだったんですけど、いじめられていると周りに声をかけられないというか、いじめられていることが恥ずかしいって思っちゃったんです。それで周りに助けを求められなかったので、もしいじめを見たときに助けてあげたいって思う気持ちは、自分が経験したからこそだと思います」

 野杁には現在、小学1年生の娘がいる。自身が相談できなかったからこそ、相談しやすい環境を作っているという。

「そこは神経質にしています。娘も小学校に入って、いじめとまでは行かないですけど、ちょっかいをかけられたり、いろいろあるので、娘には『なんでもいいから相談して』って言ってます。なので解決はしています。

 昔はネットとかなかったけど、いまはそういういじめがほとんど。だから守れる命も守れなかったりする。一応携帯も持たせてはいますけど、SNSとかはやらせてはいないので、そういう心配はまだないのかな。ゆくゆくはやっていくと思うので注意したいですね」

 SNSでのトラッシュトークが主流になっている現在の格闘技界。格闘家だけでなく、一部のファンがヒートアップするケースもある。なかには選手に直接DM(ダイレクトメッセージ)を入れるユーザーも少なくはない。野杁はどう見ているのか。

「いまの僕は全然楽しんじゃうタイプ。誰かが試合をして活躍したら僕にアンチからメッセージが届くことがあります。気にならないですけど、SNSであおり合っているなら、直接言えばいいのにって思っちゃう。言いたいことがあれば、ジムに行ってしゃべればいいじゃないですか(笑)。ファンは見たいかも、一時的に盛り上がると思いますけど、下がるときは一気に下がる。

 だったら動画回しながら、ジムに行って証拠映像を撮ってアップした方がバーンってなるじゃないですか。そういう度胸がなくて、ぐちぐち書くだけなのでしょうもないことしてんなって思いますね」

野杁正明は「いつまでたってもK-1ファイター」と語った【写真:ENCOUNT編集部】
野杁正明は「いつまでたってもK-1ファイター」と語った【写真:ENCOUNT編集部】

元K-1戦士へ「いろいろあって抜けるのは分かる」

 SNSといえば、2022年から23年にかけては、安保瑠輝也や芦澤竜誠、木村フィリップミノルなど“K-1からの選手離脱・契約解除が目立った。現在もK-1で戦う選手のひとりとしてどう思うのか。複雑な胸中を明かす。

「K-1じゃ稼げないとか目先のことばかり考えているなと。もちろん生活がかかっているので、お金お金となるんですけど、K-1出ずにRIZINとかMMAとか行って、そこまでの知名度になったのかといったらそうじゃない。

 K-1という大きなブランドで注目されて引き取ってもらったというのもあると思うので、K-1を全部下に見るのはどうなのかなと僕は思っています。(K-1を抜けるときには)みんな『K-1には感謝してる』って言ってますけど、抜けたらK-1の悪口みたいなことを言う選手もいる。それは違うでしょって僕は思っていました」

 さらに「元K-1という形で出場するので、そこ(K-1)を落としたって誰も得しない。例えば僕がK-1を抜けて、悪口を言って、『元K-1二階級制覇の野杁正明がこう言った』みたいに書いても誰も得しない」と熱くなった。

 キャリアのほとんどがK-1だ。そんな団体へのゆるぎない思いを明かした。

「憧れの舞台。体制は変わりましたけど、昔のK-1を見て育ちましたし、僕のスタートって言ったらK-1甲子園だったと思います。K-1の舞台があったからこそいまの僕がいる。いつまでたってもK-1ファイターですよ。

 K-1抜けて、K-1ファイターじゃないって言ってる人もいますけど、じゃあ武尊くんはどうなんだって。『K-1が世界最強を証明し続ける』って言ってくれている。やっぱりそういう気持ちじゃないと。いろいろあって抜けるのは分かるんですけど、みんなK-1で名前を売らせてもらった恩もある。僕もK-1がなかったらここまで来ていないと思う、生涯K-1ファイター、K-1の強さをずっと証明し続けたいと思っています」

 今年で30歳、さらに今回の試合でキャリア60戦目となる理想の引退についても言及した。

「僕が格闘技をやっていて、1番ベストの引退だった選手って魔裟斗さんなんですよ。魔裟斗さんってまだできたじゃないですか。1番強いときにやめたじゃないですか。それが1番の成功者だと思うので、みんなに惜しまれながらやめていく。まだ見たかった、まだやれるでしょって思われながら引退したいですね」

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