久保史緒里、友情出演した映画でまさかのハプニング 撮影中止に「私雪かきのプロなんで」

乃木坂46の久保史緒里(21)が映画『リバー、流れないでよ』(公開中)で友情出演している。タイムスリップやタイムループものを得意とする京都発の劇団「ヨーロッパ企画」の長編映画第2弾。久保と本作の原案・脚本を務めた「ヨーロッパ企画」の上田誠氏が語り合った。

インタビューに応じた久保史緒里(左)と上田誠【写真:矢口亨】
インタビューに応じた久保史緒里(左)と上田誠【写真:矢口亨】

公開中の映画『リバー、流れないでよ』に友情出演

 乃木坂46の久保史緒里(21)が映画『リバー、流れないでよ』(公開中)で友情出演している。タイムスリップやタイムループものを得意とする京都発の劇団「ヨーロッパ企画」の長編映画第2弾。久保と本作の原案・脚本を務めた「ヨーロッパ企画」の上田誠氏が語り合った。(構成=平辻哲也)

 NHK大河ドラマ『どうする家康』では信長の娘、五徳役を好演中の久保。ヨーロッパ企画の作品には森見登美彦原作の舞台『夜は短し歩けよ乙女』(21年)、フジテレビ「サマータイムマシン・ハズ・ゴーン『乙女、凛と。』」(21年)に出演している。

久保「私の初めての舞台が『3人のプリンシパル』(2017年2月)だったんです。乃木坂46にとっては伝統ですが、けいこしても選ばれないと舞台には立てない。だから、演劇って厳しいものというのが強いんです。その中で、『夜は短し歩けよ乙女』に出させていただけた。初めてグループの外の舞台で、1人だったので、すごくうれしかったんです」

上田「当時、コロナ禍で演劇界には逆風が吹いていました。その中で、たくさんの人に見てもらうには、どうしたらいいかを考え、日頃からステージに立たれている久保さんにお力を借りたかったんです。いろんな人が混じり合う物語だったし、音楽劇にしたかった、という理由もありました」

久保「私個人に興味を持ってくださってうれしかったです。私は、歌を歌う時に、歌詞を紙に書き出す人間なんですよ。分からないことが浮かんだら、分からないままに過ごすのがもったいない、と思ってしまう。初対面の時に、そんな話をしたら、上田さんが共感してくださって、面白がってくださいましたね。私のアイドルとしての向き合い方に対しても、『なるほど』と言っていただけたのがうれしく、勝手に運命を感じました」

上田「アイドルはきれいなところだけを見せるようなイメージがあったけど、久保さんはちょっと違った。そこにも魅力を感じました」

久保「私は人見知りなところがあって、初めましての現場だと、あまり素の自分を出さないんです。最初の舞台の時も、最初から100%ではなかったんですけど、終わる時には心の扉が100%開いていた。そんなことはあんまりないんです。今回の映画では、心の扉を完全に開いた状態で現場に入れることができました。ヨーロッパ企画の温かい空気感が大好きです。実家にいるみたい安心感が漂っていました」

『リバー、流れないでよ』は京都の奥座敷と言われる貴船を舞台に、老舗旅館とその周辺が突然、2分間のタイムループを起こすというストーリー。久保は、物語の大きなカギを握る旅人ヒサメを演じた。

上田「僕は、映画は写真に近いものだと思っています。写真って撮りたい場所で撮るもの。それが時間的に引き伸ばされたのが映画という感覚があります。だから、最初に場所を決めてからシナリオを書くんです。今回は、主演の藤谷理子の出身地・貴船で撮ることにしました。そこに、旅先でエンストしたみたいな旅行者がいたら物語が面白くなると思って、ヒサメの役を思いついたんです」

久保「脚本を拝見した時は、2分間はすごく短い、その時間を繰り返すにしても、物語が前に進むのかなと疑問であったんですよ。だけど、本当に少しずつ、だけど着実に、ある方向に向かっていく話で、私も2分間の中の渦に巻き込まれる感覚がありました」

撮影では思わぬハプニングに襲われた【写真:矢口亨】
撮影では思わぬハプニングに襲われた【写真:矢口亨】

乃木坂に入って7年「内容もすごく濃い」

 撮影は今年1月に行ったが、10年に1度の大寒波が襲来し、撮影が一時ストップするハプニングも。

上田「大河ドラマもあって、お忙しい中、本当に無理を聞いてもらって出てくださいましたね。久保さんが京都に来る時には、必ず天候の異変が起きるんです。フジテレビのドラマの時もそうでした。だから、あんまり京都の印象が良くないんじゃないかと心配し、今回こそ取り返したかったんです。でも、やっぱり大寒波が来て……(笑)、新幹線が止まったり、いろんなことが重なりました。映画の中でも、『自然と向き合いながら、営んでいくのが貴船です』というセリフを書いたんですけど、久保さんは大変でしたよね」

久保「京都にいるのに、何もできない状況で。どうしたら私は力になれるんだろうと思っていました。本当は、雪かきのお手伝いに行こうかと思っていたんです。私、宮城出身で、母方の実家は山形の雪深いところなので、雪かきのプロなんです。今回、ようやく力が発揮できると思ったけど、近づくこともできなかった」

上田「さすがに雪かきしてもらうわけにはいかないなぁ」

久保「いや、もう『なんでもします』っていうスタンスでいたんです。結局、10年に1度の大寒波には勝てず、帰ることになりましたけど、大変とは1ミリも思っていなかったです。『撮影が早く再開できますように』っていう気持ちだけでした」

上田「最初は、タイムループする映画だから、天候が変わっちゃいけないから、あんまり変わんない天気の中でまとめて撮りますか、とのんびりしたことを言っていましたけど、それどころじゃなくなってしまった」

 奇しくも、地名が入ったグループに所属する2人。ヨーロッパ企画は今年で25年。乃木坂46は今年11年を迎えた。これまでの歩みをどう見ているか。

上田「ヨーロッパ企画は目標値を立てて作った劇団ではないんです。始めたことが面白くて、『そのときめきが続けば』と思ってやっていたら、25年経っていた。活動場所も今も京都と変わってないし、人物もそんなに変わってない。割と繋がっている感じがしますね」

久保「私は乃木坂46に入って、7年。あっという間でした。ライブだったり、バラエティーなどいろんなことをさせていただいたので、内容もすごく濃い。乃木坂にいながらも、個人としても、いろんな夢、やりたいことが生まれています。ヨーロッパ企画さんの舞台は、女優業をもっともっと頑張っていきたいと思った、きっかけとなりました」

上田「それはうれしいですね。ぜひ、またご一緒しましょう」

□久保史緒里(くぼ・しおり)2001年生まれ、宮城県出身。16年に乃木坂46の3期生としてデビュー。女優としても活躍するほか、ファッション誌「Seventeen」専属モデル、『乃木坂46のオールナイトニッポン』のメインパーソナリティー、今年はWBC壮行試合で始球式を務めるなど多方面で活躍中。現在放送中のNHK大河ドラマ『どうする家康』では織田信長の娘・五徳を演じ話題に。主な出演作に、映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』、『左様なら今晩は』、ドラマ『クロシンリ 彼女が教える禁断の心理術』、舞台『桜文』など。今秋、劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎『天號星』が上演予定。

□上田誠(うえだ・まこと)1979年生まれ、京都府出身。ヨーロッパ企画代表で、全ての本公演の脚本・演出を担当。2017年に舞台『来てけつかるべき新世界』で第61回岸田國士戯曲賞受賞。近年の主な作品に【映画】『ドロステのはてで僕ら』(原案・脚本)『前田建設ファンタジー営業部』(脚本)【アニメ映画】『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(日本語吹き替え版脚本)『四畳半タイムマシンブルース』(原案・脚本)【ドラマ】『魔法のリノベ』(脚本/KTV)【舞台】『たぶんこれ銀河鉄道の夜』(脚本・演出・作曲)などがある。

次のページへ (2/2) 【写真】映画『リバー、流れないでよ』のポスターを手にした久保史緒里&上田誠の2ショット
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