猿之助容疑者は「実刑の可能性が高い」「殺人罪に問われることも…」 弁護士が今後の展開を解説
歌舞伎俳優の市川猿之助=本名・喜熨斗(きのし)孝彦=容疑者が母親への自殺ほう助容疑で逮捕された事件で、父・市川段四郎さんの死への関与についても依然として捜査が続いている。再逮捕はあるのか、どんな罪に問われる可能性があり、量刑はどうなるのか。今後の焦点について弁護士に聞いた。
母親の自殺を手助けしたとして、警視庁は猿之助容疑者を自殺ほう助の容疑で逮捕
歌舞伎俳優の市川猿之助=本名・喜熨斗(きのし)孝彦=容疑者が母親への自殺ほう助容疑で逮捕された事件で、父・市川段四郎さんの死への関与についても依然として捜査が続いている。再逮捕はあるのか、どんな罪に問われる可能性があり、量刑はどうなるのか。今後の焦点について弁護士に聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
事件が起こったのは先月18日。猿之助容疑者と段四郎さん、母の喜熨斗延子さんが都内の自宅で倒れているところを猿之助容疑者のマネジャーが発見し、119番通報した。報道によると、2階のリビングにあった両親の遺体には布団がかけられており、司法解剖の結果、死因は向精神薬の過剰摂取による中毒死と判明。猿之助容疑者は複数の遺書とともに地下の自室で意識がもうろうとした状態で発見されるも、その後病院に搬送され回復、同19日に退院している。
同18日は猿之助容疑者のスキャンダルについて触れた週刊誌の発売日で、猿之助容疑者はこれまでの調べで「家族会議をして、死んで生まれ変わろうと話し合った」「両親が薬を飲んだ」といった主旨の供述をしている。警視庁は今月27日、母親の自殺を手助けしたとして、猿之助容疑者を自殺ほう助の容疑で逮捕。父・段四郎さんの死への関与についても捜査を続けている。今後の捜査のポイントについて、レイ法律事務所の河西邦剛弁護士は「結論からいうと実刑の可能性が高い。殺人罪に問われることも考えられます」と解説する。
「まず、猿之助容疑者が『両親が自殺をする手助けをした』と認めている以上、段四郎さんに対しても自殺ほう助が認められる可能性は高いでしょう。問題は同意殺人や殺人など、それより重い罪に問えるかどうか。向精神薬の錠剤をすりつぶして与えたという供述がありますが、それを段四郎さん本人が飲んだのなら自殺ほう助、猿之助容疑者が飲ませた場合は同意殺人となる可能性が高い。さらに、段四郎さんが自死について理解や承諾をしていなかった場合は殺人罪が適用されます」
父・段四郎さんはかねてから要介護状態で認知症の傾向があったという報道もある。同意殺人と殺人の判断の境目はどこになるのか。
「例えば、日常会話で『死にたい』と口にしても、それだけで自死の同意と見なすことはできません。脅迫された場合やだまされて自死に同意した場合でも、同意殺人とは見なされず殺人扱いとなる。本人に自死についてのしっかりと認識と承諾があったのか、それだけの意思決定能力があったのかが焦点となります。ただ、段四郎さんの病状については入院履歴などからある程度は推測できますが、家族会議があったとされる夜の状態は今のところ猿之助容疑者の供述しか直接的な判断材料がない。殺人罪に問うには、段四郎さんに自死する意思がなかったと証明する必要があります」
自殺ほう助、同意殺人、そして殺人。それぞれのケースの量刑についてはどのようなことが言えるのか。
「自殺ほう助、同意殺人の量刑はいずれも6か月以上7年以下の懲役または禁錮です。両親に対してそれぞれ自殺ほう助の場合でも懲役3~4年以上、段四郎さんに対して同意殺人が適用された場合はさらに重くなるでしょう。仮に殺人となった場合は法律上の規定は5年以上から無期懲役、あるいは死刑もありますが、情状によって大きく変わってくるので刑期については何とも言えません。いずれにせよ、実刑となる可能性が高いです」
家族会議では「3人で死んで生まれ変わろう」という話し合いがあったとされており、猿之助容疑者も自分も後を追うつもりだったと供述しているが、もし仮にこの「3人で」という前提が最初からなかったならば、自殺ほう助や同意殺人にも疑義が生じてくる可能性があるという。事件の真相解明が待たれる。