【電波生活】5日で150組に声をかけても密着できるのは1組… コロナ禍明けた『YOUは何しに日本へ?』の舞台裏

注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はテレビ東京系『YOUは何しに日本へ?』(月曜午後6時25分)。来日する外国人(YOU)を空港で勝手に出迎え、アポなしでインタビューを行い、うまくいけば、そのまま密着取材を慣行する人気番組。歩いて日本を縦断する外国人に密着することもある。入国制限もほぼコロナ禍前の状態に戻っているようだが、藤枝彰プロデューサー(P)と大宅優ディレクター(D)に、取材の舞台裏の奮闘ぶりや密着しやすい外国人の共通点、コロナ禍前との違いなどを聞いた。

『YOUは何しに日本へ?』の番組ロゴ【写真:(C)テレビ東京】
『YOUは何しに日本へ?』の番組ロゴ【写真:(C)テレビ東京】

異例の取材体制…現場はディレクター、カメラマン、通訳のわずか3人

 注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はテレビ東京系『YOUは何しに日本へ?』(月曜午後6時25分)。来日する外国人(YOU)を空港で勝手に出迎え、アポなしでインタビューを行い、うまくいけば、そのまま密着取材を慣行する人気番組。歩いて日本を縦断する外国人に密着することもある。入国制限もほぼコロナ禍前の状態に戻っているようだが、藤枝彰プロデューサー(P)と大宅優ディレクター(D)に、取材の舞台裏の奮闘ぶりや密着しやすい外国人の共通点、コロナ禍前との違いなどを聞いた。(取材・文=中野由喜)

 まずは取材体制から。かなり大変な様子がうかがわれた。

 藤枝P「取材のベースは成田空港と羽田空港です。おおむね成田の第1と第2ターミナルに各1チーム、羽田の国際線で1チーム、計3チームが常時取材しています。おおまかに言うと午前のチームと午後のチームに分かれていて、1日6チームが空港で取材しています。月に20日間は取材しますので最低でも1カ月に120チームで取材という形になります。1チームの構成はディレクター、カメラマン、通訳の3人だけです。アシスタントディレクターも連れずにロケを行う番組はかなり珍しいと思います」

 外国人に声をかけてインタビューに応じてくれる割合、実際に密着取材できるケースはどの程度なのか。

 大宅D「1チームあたり1度取材に出向くと20組くらいの外国人の方に声をかけています。たとえば20組に声をかけて答えてくれるのは半分の10組くらいですが、そのうち京都でお寺を見たいとかスキーをするため北海道に行くなどいわゆるザ・観光目的の人が95%で、放送で使えそうなユニークな目的を持った人はほとんどいません。街頭インタビューの様子だけ放送できる人が1度取材に出向いて1組いたらいい方です」

 藤枝P「放送できる街頭インタビューの人も少ないですが、その後に密着取材できる人となるともっと少なくなります」

 大宅D「密着取材できる外国人と巡りあえるのは5日間くらい取材して1組いるかどうか。つまり100~150組に声をかけて1組いるかどうかという感じです」

 藤枝P「ただ、せっかく密着取材してもいろんな事情で放送できないこともありますから」

 大宅D「ある外国人を1週間取材したのですが結局放送までいたらなかったこともありましたし、ウナギを食べたことがないので人生初ウナギに挑戦したい! と話す外国人の方をつかまえたので名店と言われる店を紹介して密着取材をしたのですが、実際に食べたら本当に口に合わなかったようで最悪のリアクションをされたことがあります。店主の前で半分以上も食べ残してしまい、結局、店側から放送NGと言われてしまいました。僕の今までの取材の中で一番リアル感があって面白い映像ではあったのですが……」

 藤枝P「アポをとらず、事前に約束や打ち合わせをしない体当たり取材が番組開始以来10年続けてきた伝統。非効率的ですがこの汗かき感を出すのもテーマ。想定外なことも見どころの一つだと思っています」

 150組中やっと1組に密着できても放送できるとは限らない。放送までたどり着くのは大変な道のりだとあらためて痛感する。

 藤枝P「密着取材中に、途中で止めてほしいと言われることもあります。プライバシーに関わる大事な話だから撮らないでとか」

 大宅D「気軽に取材OKと言ったけど、こんなにずっとカメラを回しているのかと嫌がられることもあるんです。確かに一緒にいる間はずっとカメラを回しています。正直、僕も逆の立場なら嫌です(笑)」

 出演料など取材協力費などはないようだが、ここで密着できそうな外国人の見分け方などコツはあるのか聞いてみた。

 大宅D「取材をOKしてくれそうでも、そもそも僕が密着したいと思うかどうかが重要で、その2つを満たす人が極端に少ないように思います。そんな中での肌感覚ですが、派手でイケてる人ほど典型的な旅行者が多く、インタビューだけで落ち着きがちです。実際に密着取材したいと思えるのは地味で真面目そうな人が多いんです。不思議と変わった目的で来日した外国人ほど真面目そうで朴訥(ぼくとつ)とした感じの人が多いように感じます。それに取材される外国人には何もメリットがないので、まじめで誠実な人じゃないと成立しないんです」

 コロナ禍の前と後で変化を感じることはあるだろうか。

 大宅D「来日する外国人の表情を見ていると、コロナ禍が明けることをめちゃめちゃ楽しみにしていたという人が多い印象があります。来日を楽しみにしていたという気持ち、熱量が伝わってきます」

 藤枝P「3年待ったんだ、という人がすごく多いです。コロナ禍は、我々も空港のロケが完全にストップし、再放送的な内容でしのいできた3年間でしたが、来日する外国人の方も本当に楽しみにしていたという人が多いと感じます。番組開始から10年ですが、今、あらためて強い熱量で来ていると感じます。この番組を知っている外国人の方も増えています。その意味でも、日本を知ってもらう、楽しんでもらうきっかけの一端を担えればと思います」

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