サバゲーでの大量の農薬散布、一部から「環境破壊」と批判相次ぐ 専門家「虫よけスプレーの方が効果的」

森や屋内など、障害物のあるフィールドでエアガンを撃ち合い勝敗を決めるサバイバルゲーム(サバゲー)。あるサバゲー場が害虫対策のために森の中に大量の殺虫剤を散布する動画がネット上で拡散、「環境破壊だ」「私有地だから問題なし」と賛否両論となっている。実際に殺虫剤散布の効果や環境への負荷はどの程度あるのか。害虫駆除用品メーカーのタニサケに話を聞いた。

障害物のあるフィールドでエアガンを撃ち合い勝敗を決めるサバゲー(写真はイメージ)【写真:写真AC】
障害物のあるフィールドでエアガンを撃ち合い勝敗を決めるサバゲー(写真はイメージ)【写真:写真AC】

昨年投稿された動画が今月26日になって突如拡散、一部から「環境破壊」と批判が殺到

 森や屋内など、障害物のあるフィールドでエアガンを撃ち合い勝敗を決めるサバイバルゲーム(サバゲー)。あるサバゲー場が害虫対策のために森の中に大量の殺虫剤を散布する動画がネット上で拡散、「環境破壊だ」「私有地だから問題なし」と賛否両論となっている。実際に殺虫剤散布の効果や環境への負荷はどの程度あるのか。害虫駆除用品メーカーのタニサケに話を聞いた。

 拡散した動画では、防護服にガスマスクを装着したスタッフがもうもうと白い煙を上げる大量の殺虫剤をサバゲーフィールドの森林に散布する様子が約1分にわたって収められている。動画自体は昨年の6月17日に投稿されたものだが、今月26日になって突如拡散。あまりの殺虫剤の量に、ネット上では一部から「これ森中の虫死滅するだろ」「たかが遊びのために生態系を破壊をしていいわけがない」と批判の声が殺到している。一方で「私有地なら何やってもいいだろ。家の庭で蚊取り線香たいたり、スズメバチの巣を駆除するのと何が違うの?」「マダニに刺されたら最悪死ぬからこれくらいは必要」という擁護の声や「最初見たときはギョッとしたけど、サバゲーのことはよく知らないしこれくらいは普通なのかも?」といった反応までさまざまで、賛否両論となっている。

 実際のところ、殺虫剤の効果や環境への影響はどの程度あるのだろうか。ゴキブリキャップなどで知られる害虫駆除用品メーカー・タニサケの担当者は「効果は期待するほどないでしょうし、一方で環境への影響もそこまで深刻ではないでしょう」と見解を語る。

「成分的には同じものですが、噴射している容器を見るに殺虫剤というよりも業務用の農薬のようです。虫の神経に作用する一方で、人体には影響の少ないピレスロイド系かと思われます。大量にまいているように見えますが農薬としては一般的な散布量の範囲で、遮る物のない田んぼの上からまくならともかく、森の中では葉っぱの裏や土の中の虫にはあまり影響がありません。雨が降ると殺虫成分が水に流れるので、近くに水辺がある場合は魚や水生昆虫などの生き物にはそれなりに影響がありますが、森の生き物が死滅することはありえないですし、むしろ労力の割にそこまでの殺虫効果は期待できないのではと思います」

 問題は殺虫成分そのものよりも、まかれている薬剤が粉剤である点にあるという。タニサケの担当者は人体に害を及ぼす危険性について次のように解説する。

「粉剤とはシリカゲルやタルクなどの粉に殺虫成分を混ぜたもの。粉末を吸い込むことで肺気腫や発がんのリスクが指摘されており、農薬にはだいたい使用後一両日は立ち入りを控えるよう注意書きがあります。動画ではマスクをつけて散布していますが、サバゲーイベントが翌日に行われた場合は粉末が舞い上がって吸い込む可能性があります」

 マラリアやデング熱などの感染症を媒介する蚊、発症した場合の致死率は3割ともいわれる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を引き起こすマダニなど、身近な野外でも害虫被害はときに大きな脅威となる。どんな対策が効果的なのだろうか。

「農薬を散布するよりも、個々人が市販の虫よけスプレーをする方がずっと効果が高く、環境への負荷も少ないと思います。拡散した投稿ではベトナム戦争を再現した企画が行われたようですが、市販の虫よけスプレーに使われているディート成分はベトナム戦争でのジャングル戦用に開発されたもの。そちらの方が効果的で、雰囲気も出ると思いますよ」

 環境問題に対する世間の関心は年々高まっているが、中には誤ったイメージが先行しているものや、科学的な根拠が曖昧なものもある。環境保護も虫よけも、感情的になることなく正しい知識を持ちたいところだ。

次のページへ (2/2) 【写真】防護服にガスマスクを装着し、森に大量の殺虫剤を散布する動画の一部
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