KAIRI、WWE時代の恐怖体験 ホワイトアウトの猛吹雪もチェーンなしで雪山走行「周りは事故だらけ」

来る8月4日、東京・新宿FACEで「Sareee-ISM~ChapterII~」が開催される。同大会はWWE帰りの女子プロレスラーのSareeeが主催する自主興行の第2弾。今回は、Sareeeと同じく元WWEに在籍経験のあるKAIRIをパートナーに、シードリングの中島安里紗&マーベラスの彩羽匠とタッグマッチを戦うことが発表されている。18日に東京・銀座にある猪木元気工場で開かれた会見では、SareeeとKAIRIの両者が出席したが、会見後にKAIRIを直撃。大会にかける想いを聞いた。

“世界を旅する海賊王女”KAIRI
“世界を旅する海賊王女”KAIRI

WWE時代に一番大変だったこと

 来る8月4日、東京・新宿FACEで「Sareee-ISM~ChapterII~」が開催される。同大会はWWE帰りの女子プロレスラーのSareeeが主催する自主興行の第2弾。今回は、Sareeeと同じく元WWEに在籍経験のあるKAIRIをパートナーに、シードリングの中島安里紗&マーベラスの彩羽匠とタッグマッチを戦うことが発表されている。18日に東京・銀座にある猪木元気工場で開かれた会見では、SareeeとKAIRIの両者が出席したが、会見後にKAIRIを直撃。大会にかける想いを聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

 KAIRIに対し、まず最初に聞きたかったのは、「WWE、という世界最大のプロレス団体で生き抜いていく上で最も大変だったことは何か?」だった。

「大変だったことですか。一番を決めるのは難しいけど、やっぱり私とSareeeちゃんのような(日本人)選手は特にそうなんですけど、一人で渡米して、一人で会場に行ったり、生活をしたり。慣れない異国の地に行って、全てなじんでいくっていうことが大変でしたかね」

 そこまで話したKAIRIは「もうざっくりになりますけど」と続けたが、海外に出ていく日本人が急増しているとはいえ、島国・日本で生まれ育った一般的な日本人による、日本語が通じない異国の地での生活は、それだけでも困難に陥ることが予想されるのに、そこにプロレスが加わるとなれば、また別のハードルを乗り越えなければならない。

「やっぱり試合の会場でも、日本だったら雑談とか、いろんな仲間だったり、記者の方だったり、日本語での会話ができる。何も考えずとも言葉が出てくるじゃないですか。アメリカだと全て英語になって、しかもネイティブな会話を理解しなくちゃならない。こっちに合わせてくれることはなかなかない中でメンタルを整えて、大きな会場に一人で出ていくっていうところが、やっぱり大変だったかなー」

 KAIRIの話を聞く限り、裏を返すといざリングに上がってしまえばあとは己の経験値でどうにかなる、というニュアンスのようだ。

「結局、プロレスはプロレスであって、もう言葉じゃないので、そうなっちゃえばいいですけど、そこまでの過程が……。いろいろ(と大変さを)感じますね」

「Sareee-ISM2」ではSareeeとKAIRIの元WWEスーパースターズがメインで闘う
「Sareee-ISM2」ではSareeeとKAIRIの元WWEスーパースターズがメインで闘う

好対照なKAIRIとSareee

 この後、KAIRIに「一番のトラブルは?」と尋ねると、「トラブル、トラブルだらけだったからなー」と言葉を発し、多少の間、時間を置いて、次の具体例を挙げた。

「ひとつ例を挙げると、自分が(WWEのトップクラスが戦うリングの)RAWに昇格してから、もう全部一人で運転していかないといけないんですけど、ある時、カナダで試合があって、雪山を越えないと会場に行けないっていうのがあって。ちょうどブリザードじゃないけど、吹雪みたいな時があって、はい。私のクルマは4輪駆動でもないし、タイヤにチェーンもついてなかったんですけど、それでも雪山を越えないといけなくて。もう目の前はホワイトアウト状態なのに(苦笑)。周りを見たら事故だらけだったり……」

 20代の日本人女性が言語も十分に通じない異国の地で、自ら運転する車の窓外にそんな光景が広がっていたら……と想像しただけでも少し緊張感が走る話だ。

「それでも一人で会場までなんとか行ったかな。でも、対戦相手はそこまでたどり着けなくて、試合もなくなっちゃったんですけど(苦笑)」

 今だから多少は笑って話せるのかもしれないが、実際、現場での心中を察するとあまりある話だった。

 ちなみに「向こうではそういうのも罰金なので。そういう面では厳しかったですね、はい」とKAIRI。きめ細やかな日本人だからこそ、時間を守る、といった基本的なことは破らないだろうが、それだけにひと一倍気を遣うことも多かったに違いない。

 さて、先にも述べたが、今回の「Sareee-ISM~Chapter II~」で、KAIRIはSareeeと組んでメインイベントに登場する。対戦相手は中島安里紗(シードリング)&彩羽匠(マーベラス)の2人。

 先日の会見では「誰がどう見ても、負けず嫌いの女4人じゃないですか。中島安里紗選手も絶対にそうだし、匠もね、元スターダムだったので何度も対戦してますが、毎度毎度バチバチだったので」とKAIRIが言えば、Sareeeも「これはすごい“闘い”になる気がしています、本当に」と興奮を隠しきれない様子だった。

 また、会見中にタッグマッチの面白さを力説するKAIRIに対し、一騎打ちのほうがやりやすい旨をSareeeが口にするという、実に対照的な両者の一面が見てとれたが、KAIRIは、タッグの面白さを気づかせてくれた先輩のアスカと(高橋)奈七永の名前を挙げながら、以下のように説明した。

「全員がハッピーじゃないと嫌」(KAIRI)

「やっぱタッグって、1番近くで相手がどう立ち回るかとかも見て学べるし、1番近くで学べたり。入場からもそうなので、そういうところでどんなこと考えてるのかなとか。先輩と組むときはそうでしたし、逆に後輩と組む時は緊張してる子をどういう言葉でフォローしてあげようとか考えたり。私は性格的に全員がハッピーじゃないと、ウィンウィンじゃないと嫌なので、今回もSareeeちゃんが喜んでいる姿を見たいんですよ」

 話を聞いていると、非常に面倒見の良い姉御肌な気はするが、会見ではどこか不思議ちゃん的な面も見てとれた。要は多面的な魅力を持つプロレスラーがKAIRIなのだと認識した。

「自分のために頑張るのもいいけど、相手とか誰かのためにもというのが入っていると、より強くなれる気がして、私は。その辺はシンクロじゃないけど、そういう面がプロレスのいいところだなって私は思うんですね。慣れないなら慣れない面白さもあるし、噛み合えばそれはもちろん面白いけど、噛み合わなければそれはその面白さもあるし、うん」

 この言葉には、世界を股にかけて活躍してきたKAIRの懐の深さが感じられた話だと思う。

「やっぱり何かに向けて挑戦することって勇気がいるし、不安とか誹謗中傷とか絶対につきまとってくるじゃないですか。それは誰にもつきまとってくるものかもかもしれないけど、やっぱり私は挑戦していたいし、自分も挑戦している人を尊敬するから、そういう人たちと仕事一緒にできるのがうれしいんですよ。だからSareeeちゃんが今回、一人で興行するってどれだけ難しい、大変なことかもわかるので、うん。一緒にサポートじゃないですけど、できればなと思っています」

 そして最後に、KAIRIはSareeeに協力することで生じる、その先の広い視野を持っていることも口にする。

「やっぱり団体だけを、とかじゃなくて、業界を、業界全体をですね。私はプロレスに恩返しをしたいので。はい。それがちゃんとできたらいいなと思っています」

 世界最大のプロレス団体であるWWEを経験したKAIRIとSareeeがメインを務める「Sareee-ISM~Chapter II~」。彼女たちが真夏の新宿でどれだけ熱い火花を散らすのか。それは全く予想できないが、世界を股にかけて活躍してきた日本人女性の意地とプライドだけは、これ以上なく伝わってくるような“戦い”を望んでやまない。

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