グループ卒業から5年、完璧主義の俳優・若月佑美を「楽」にした言葉

俳優の若月佑美(28)が、グループ卒業から「今」に至るまでを語った。俳優として歩む中で、さまざまな言葉で気持ちが楽になったこと、公私を切り分けて生活できるようになったこと。両親からの言葉にも救われていることなど……。誕生日の今月27日に、初のフォトエッセー『履きなれない靴を履き潰すまで』(扶桑社刊)を発売。そこにもつづられた彼女の“内面”を聞いた。

自身の“内面”について語った若月佑美【写真:荒川祐史】
自身の“内面”について語った若月佑美【写真:荒川祐史】

29歳の誕生日、今月27日に初フォトエッセーを発売

 俳優の若月佑美(28)が、グループ卒業から「今」に至るまでを語った。俳優として歩む中で、さまざまな言葉で気持ちが楽になったこと、公私を切り分けて生活できるようになったこと。両親からの言葉にも救われていることなど……。誕生日の今月27日に、初のフォトエッセー『履きなれない靴を履き潰すまで』(扶桑社刊)を発売。そこにもつづられた彼女の“内面”を聞いた。(取材・文=柳田通斉)

 インタビューの冒頭、若月は言った。

「靴を履き潰すどころか、新しい靴がどんどん出てきていますね」

 書籍のタイトルは、2019年8月に『週刊 SPA!』(扶桑社刊)で始まり、約3年半続いたフォトエッセー連載と同名。18年12月4日にグループを卒業し、当時の思いがそのまま連載名になった。「履きなれない靴」とは俳優業のこと。「それを履き潰すまで頑張っていこう」との思いだったが、現実は違ったという。

「次のステップになって、『履き潰すまでやってみよう』と思いましたが、(俳優業は)新しく深い靴がどんどん出て来る現場でした。履きなれた靴があっても、すぐに次の靴を履かなければいけない。書き始めた時にはない感覚です。当時は、『経験と知識が増えれば高みに行ける』と思っていましたが、それだけじゃないというか……。『あれっ、今までの自分では通用しない』『持っている引き出しにないことをやらなければ』と思うことが増えました。課題であり、発見ですが、それがすごく不思議で面白いです」

 言葉が好きで、残したいものをスマートフォンのメモに記してきた。衝撃的なことを言われ、瞬く間に書き上げたこともあるという。

「『1番を目指さないで下さい』のタイトルで書いたエッセーに、かかったのは5分でした。(読売テレビ・日本テレビ系ドラマ)『アンラッキーガール!』の撮影時でしたが、作品の監修をされていた占い師の方に『あなたは1番を目指さないで』と言われ、その衝撃をすぐに文章にしました。『あなたは1番を目指すと1番になれなかったことで、つぶれてしまうタイプです。2番でも十分すごいのに』という意味合いでした。聞いた瞬間、すごく気が楽になった自分がいたので」

 書籍の目次を見ると、「適花適所」「肯定さん」「正解はあなた」「愚直」「真面目な打者へ」などと、人の生きざまをイメージさせるタイトルがある。哲学的だが、自分に言い聞かせている言葉なのだろうか。

「そうですね。自分が言われてうれしい言葉を書いてきました。どういう言葉が『うれしくて、気が楽になっただろう』とイメージしながらです。私が中学生の頃、ベッキーさんのフォトエッセー『ベッキーの♪心のとびら』を読ませていただき、救われた思いになった記憶があります。あの時の自分のように、『どこかで救われている人がいればいい』と思っています」

両親とのやりとりを明かした若月佑美【写真:荒川祐史】
両親とのやりとりを明かした若月佑美【写真:荒川祐史】

父から届く「楽しんで」は、「今、悲しい~!」の感情

 高2の17歳で実家を離れ、芸能活動に入った。さまざまな競争、試練を経験してきたが、その度に届く両親からの言葉も紹介している。メールのやり取りから「Re:」のタイトルでつづった文章。どんな思いで書いたのか。

「勝負の日に父は『楽しんで』と、頑張った日に母は『スゴいね』と送ってきます。父のは『1番を目指すな』と同じで、『選ばれなかったことも楽しみなさい。選ばれていないことにこだわっていると、ただ辛い時間を過ごすことになる。落ちたことも経験で、それができない人もいるのだから』という意味です。『今、悲しい~!』といった達観した感情ですね(笑)。幼い頃から言われていて、理解できるようになったのは上京してからですが、『素晴らしい言葉だな』と思っています。母は『誰よりもかわいかった』『カッコ良かったよ』とも伝えてくれます。理由は私が完璧主義のタイプだからで、愛情だけで『良かったよ』と言ってくれる。それはやっぱり、励みになっています」

 両親への感謝は深くなるばかりだが、連載で言葉をつづる中、考え方、ライフスタイルにも変化もあったという。

「グループにいた時は、バランスで『あなたはここにいて、こうした方がいい』でしたが、今は脚本家の方、監督に私にだけにしかないアドバイスをいただいています。その一つ一つがありがたいですし、解釈できるようになっています。プライベートの過ごし方も変わってきました。以前までは特技、キャラクター、武器を求められる世界で、休日でも『仕事につながることをしなければ』と思い、料理、語学などを勉強していました。ただ、今は役の中で生きている分、『プライベートはとことん自分でいたい』と思い、仕事に関さないものをしています。まあ、ゲームだったりしますが(笑)」

 つづった活字が、本になった喜びは大きい。語彙(ごい)が豊富なこともあり、周囲からは1つの提案をされているという。

「『不思議な視点を持っているから、書いてみたら』と言われたりもします。うれしいことです。確かに『こういう物語があったら面白い』とは思いますし、いつか話し合いながら、物語の原案を作ってみたいと思います」

 昨年9月には、美術展覧会『二科展』のデザイン部A部門で特選賞を受賞した。通算9度入選。それらの実績から、二科展デザイン部の会友に選出された。そして、この度に発揮した「活字」の才能。29歳になる若月の可能性は、この先も広がることだろう。

□若月佑美(わかつき・ゆみ)1994年6月27日、静岡・富士市生まれ。2011年8月から18年12月まで、アイドルグループ・乃木坂46のメンバーとして活動。卒業後は、俳優の道を歩み、日本テレビ系『今日から俺は!!』、TBS系『私の家政夫ナギサさん』などに出演し、今年4月期のTBS系『王様に捧ぐ薬指』に出演した。映画でも『ヲタクに恋は難しい』『今日から俺は!! 劇場版』『劇場版ラジエーションハウス』など出演多数で、22年には舞台『薔薇王の葬列』で主演を務めた。また、モデルとしても活動し、20年「Oggi』6月号からは同誌美容専属モデルを務め、21年7月(9月号)では初の単独表紙を飾った。157.7センチ。

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