唐田えりか、1年半の休業期間を語る「ケータイなし、テレビを見ないで読書リポート」
女優の唐田えりか(25)がオムニバス映画『無情の世界』(6月23日公開)の1編『真夜中のキッス』(佐向大監督)に主演した。悪事に手を染めながらも、男を踏み台にして逃げ切ろうとするヒロイン役。唐田の新境地だ。
単独インタビュー、映画『無情の世界』で男を踏み台にするヒロイン役
女優の唐田えりか(25)がオムニバス映画『無情の世界』(6月23日公開)の1編『真夜中のキッス』(佐向大監督)に主演した。悪事に手を染めながらも、男を踏み台にして逃げ切ろうとするヒロイン役。唐田の新境地だ。(取材・文=平辻哲也)
3本のショートフィルムからなる本作は、俳優・小林且弥(41)が新たな映画の可能性を求めて立ち上げた『STUDIO NAYURA』の第1回製作作品。『真夜中のキッス』は、大杉漣主演の『教誨師』、『夜を走る』の佐向大が監督。取り返しのつかない事態を引き起こしたヒロインが真夜中の街を駆け巡るというノワール調の作品だ。
唐田の起用は、佐向監督たってのオファーだった。
「ちょっとサイコパス的な要素はありますけど、自分が今までやれてこなかった役柄だったので、楽しんでできたらいいなって思いました。映画の魅力は非日常だと思いますので、観客の方も楽しんでもられば、と思います」
撮影は一昨年、5日間、夕方から準備を始めて朝方までのオールナイトロケも新鮮だったという。
「監督とはリハーサルというか、ワークショップのような形で話し合いながら役を固めていきました。自分は不器用なので、自分の中にない感情や環境、疑問点があると、ちゃんと自分の中に落とし込めないんです。脚本にも書かれていないことが多いので、一緒に作っていきました。現場は少人数で、一丸となっていくのがよかったです」
唐田は2015年に『恋仲』でドラマデビュー。『ソニー損保』のCMも話題を呼んだ。モデル業と女優業を両立する中、濱口竜介監督の映画『寝ても覚めても』(18年)のヒロイン役に抜てきされ、カンヌ国際映画祭のレッドカーペットも初体験した。以来、女優として、心がけているのは「お芝居をしないこと」だという。
「芝居のことが何もわからない状態で、濱口さんからお芝居の基盤を教わりました。あの時に感じた本当の感情とか、役はこうやって作るんだとか、セリフは交わすんだということを学びました。濱口さんから学んだことをずっと持っていたいんです」
元々、海外では高い評価を得ていた濱口監督だが、村上春樹原作の『ドライブ・マイ・カー』(2021年)では第74回カンヌ国際映画祭で大江崇允とともに日本映画初の脚本賞を受賞。さらに世界の映画祭、映画賞を席巻し、22年の第94回米アカデミー賞では4部門にノミネートされ、国際長編映画賞にも輝き、その名を日本中に轟かせた。
「濱口さんは、本当にすごい人だと思っていました。既に海外でも認められていましたが、日本の映画ファン以外の方にも知ってもらうことができたことがすごくうれしかったです」
「自分が芝居しているところを撮ってみたりした」
一方の唐田には苦難の時期もあった。2020年1月から約1年半、女優業を休むことになった。
「あの時間がなかったら、今の役、今の感情に繋がっていないので、本当にたくさんのことを学びましたし、知らなきゃいけなかった時間だったと思っています。携帯電話はない、テレビも見ない、映画も見ないという生活をしていました。小説を読んで、1週間に1回レポートにまとめて、(所属事務所の)社長に渡して、話し合ったり。できる範囲で会社のお手伝いをしたり、自分が芝居しているところを撮ってみたり、そんなことを毎日して過ごしていました」
新たな役に挑み続けているのも、この休業期間があったから。昨年11月公開の『の方へ流れる』では本音を言わないヒロイン、『死体の人』では死体役専門の売れない俳優と運命的な出会いを遂げるデリヘル嬢を演じた。ほかにもプロジェクトが進んでいる。
「社長は自分以上に自分と向き合ってくださったので、自分も絶対に頑張らなきゃいけない、これはお芝居で返すしかないと思って、今やっています。社長がいてくださらなかったら、今の私はいないと思っています」
韓国エンタメの大ファンで、以前より韓国語も習得し、韓国での事務所との契約もあり、Netflix『アスダル年代記』などにも出演している。
「ずっと昔から映画、ドラマ、音楽を追いかけていますが、今、面白いのはNetflixで配信されている『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』。シーズン2まである復讐劇なんですが、展開が読めないので、面白いです。私も、もっと韓国作品にも出られたらと思っています」
女優人生の第二章が本格的に始まった。
□唐田えりか(からた・えりか)1997年、千葉県生まれ。2015年にドラマ「恋仲」でデビューし、「こえ恋」(16)、「トドメの接吻」(18)、「凪のお暇」(19)のほか、韓国のNetflixドラマ「アスダル年代記」等に出演。映画出演作に、『寝ても覚めても』(18/濱口竜介監督)、『の方へ、流れる』(22/竹馬靖具監督)、『死体の人』(23/草苅勲監督)がある。