群馬の山麓にレンタカーの外国人が続々 目当ては人気アニメの“聖地巡礼” 仕掛け人に聞く地域おこし

日本を訪れる外国人旅行客が増加する中、群馬の山麓に外国人が集うカフェがある。同県を舞台にしたしげの秀一の漫画『頭文字D』(イニシャル・ディー)の公式グッズを扱う「レーシングカフェ D'zgarage」(ディーズガレージ)だ。榛名山の麓に位置する同店を目指し、連日、レンタカーを使った外国人が各国から押し寄せる。オーナーの岡田誠代表に、ここまでの道のりを聞いた。

ディーズガレージの岡田誠代表【写真:ENCOUNT編集部】
ディーズガレージの岡田誠代表【写真:ENCOUNT編集部】

「マニアックな人がわざわざ日本に来て、うちに来てくれる」

 日本を訪れる外国人旅行客が増加する中、群馬の山麓に外国人が集うカフェがある。同県を舞台にしたしげの秀一の漫画『頭文字D』(イニシャル・ディー)の公式グッズを扱う「レーシングカフェ D’zgarage」(ディーズガレージ)だ。榛名山の麓に位置する同店を目指し、連日、レンタカーを使った外国人が各国から押し寄せる。オーナーの岡田誠代表に、ここまでの道のりを聞いた。(取材・文=水沼一夫)

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『頭文字D』は、渋川市の高校生・藤原拓海を主人公にした伝説の自動車バトル漫画。1995年から講談社『ヤングマガジン』で連載が開始し、2013年の終了までコミックは全48巻に上る。1月の「東京オートサロン2023」では、漫画に登場するAE86スプリンタートレノをイメージした車両がトヨタブースに登場するなど、いまだ強い影響力を誇っている。

 岡田さんはかいわいでは有名な存在だ。しかし、子どもの頃から同漫画のファンだったわけではない。

「漫画は知っていたんですけど、そんなにのめり込む感じではなかったですよね。カフェを始めようと思ったときぐらいですかね。その計画段階からすごくのめり込んで。だから10年前ぐらいです」

 渋川生まれ、渋川育ちという縁があった。また、榛名山をモチーフにした秋名山が登場するなど、群馬の名所を舞台にした漫画に一気に引き込まれた。

「単純に物語として面白いのと、ハチャメチャな漫画ですけど、あり得ないことではないですよね。だから、すごくウケがいいのかなと思っています。すごく若輩な車で強い車を倒していくっていうのは実際にあり得ることなんですよね。ドライバー次第で。そこがすごく面白いポイントなのかなと思います。86で現在の本当にすごい大パワーの車を打ち負かしていくってことは、実際にありえますよね。(峠の)下りだったら」

 峠での激しいバトルなど、あくまでも架空のストーリーでありながら、現実味にもあふれている。ゆえに多くのドライバーから支持されている、と岡田さんは語る。

 店をオープンさせたのは2016年だ。もともと実業家の顔を持っていた岡田さんは、「渋川と言えば、頭文字D。人を県外から、世界から集めていかなきゃいけない」と意を決し、漫画を観光の目玉の一つにできないかと考えた。扱うグッズはライセンスを取得して販売。「やっぱりお土産として買っていってもらうのであれば、本物でないといけない」と、リアリティーにこだわった。ついたあだ名は「頭文字カフェ」。今や、『頭文字D』の聖地として、全国的に知られる存在だ。

 そして漫画やアニメの普及とともに、『頭文字D』は海外でも人気を呼んだ。

 榛名山の麓という、決して立地がいいとは言えない場所に、レンタカーを使って海外のファンが押し寄せている。

「めっちゃ来ます。平日なんか完全に外国のお客さんのほうが多いですね。いろいろ写真を撮ったり、ライセンス商品を買っていったりっていう感じです。たぶん日本に遊びに来る計画の段階で、うちに来ることが決まっている感じですね。来るのはマニアックな人ばっかりです。マニアックな人がわざわざ日本に来て、うちに来てくれる」

 自作の服を着ていたり、ひと目でそれと分かる筋金入りのファンの姿もある。国籍は幅広く、作品の魅力が親子2代に受け継がれていることも多いという。「いやもう、特にどこからって感じじゃないですよね。アジア圏もそうだし、ヨーロッパ…。頭文字Dが放映されている国だったら必ず人気になってるようです」と、分析している。

「レーシングカフェ D'zgarage」【写真:ツイッター(@Dzgarage_w)より】
「レーシングカフェ D'zgarage」【写真:ツイッター(@Dzgarage_w)より】

地方の危機感「地域活性化なんて言っている場合じゃない」

 大都市に比べ、多くの地方は人口減に悩んでいる。若者の流出を食い止めようと工夫もこらしているが、観光資源がなければ、町おこしにもならない。その点、知名度のある『頭文字D』は、渋川市にとっても、大きな役割を果たすコンテンツだ。

 行政とも連携を図る岡田さんは、「地域活性化なんて言っている場合じゃない。もう外からお金を入れられるようにしていかないといけない。頭文字Dは世界から人を呼べる作品なのですごくありがたいと思います」と、危機感を募らせながら訴えた。

 本業はプリンの専門店で、モデル事務所も経営。プリンと『頭文字D』とのコラボ商品は、外国人のお土産としても人気だ。一方、定期的に車イベントも開催。これも県から依頼され、シーズンオフで使用されないスケートリンク場を有効活用するなど、地方経済の底上げを担っている。

 ちなみに個人で所有している車は、「現代のスポーツカーを20台ぐらい」。中でもロータリーエンジン搭載のRX-7は5~6台をそろえる。「FD3Sという型なんですけど、それからRX-7は途絶えているので、また再販されるといいなって思います」と、復活を熱望している。

『頭文字D』の世界観に浸ることのできる榛名山は、プライベートでもお気に入りのドライブコースだ。岡田さんは愛車を走らせながら、国内外からの愛好家の来訪を心待ちにしている。

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