桜井日奈子、「やめたい」ともがいた10代 当時のマネジャーへの感謝「本当に愛があった」
俳優の桜井日奈子(26)が映画『魔女の香水』(宮武由衣監督、6月16日)で、新境地を見せている。これまで得意のコミック原作のラブコメ路線から一転、香水で起業を目指す働く女性の役だ。
『魔女の香水』で思い出した新人時代
俳優の桜井日奈子(26)が映画『魔女の香水』(宮武由衣監督、6月16日)で、新境地を見せている。これまで得意のコミック原作のラブコメ路線から一転、香水で起業を目指す働く女性の役だ。(取材・文=平辻哲也)
『魔女の香水』は魔女と呼ばれる一人の女性、白石弥生(黒木瞳)が創る香水の香りが、若い女性、若林恵麻(桜井)を華やかな未来へと導くシンデレラストーリー。劇中にはベッドシーンもあり、桜井にとって新境地といえる。
「上質で上品で、大人の作品だなと思いました。今までは漫画原作で、女子高生役が多かったので、お芝居の幅を広げられる大人の作品に出会えたことがうれしかったです。ベッドシーンはそのうちの一つでしたし、挑戦できてよかった。CMでは歌っている、踊っているというキャッチーなイメージが強いかもしれないけど、そうじゃないところも見せていきたい」
これまでは同年代のキャストとの共演が多かったが、黒木と共演。ドラマ初主演となった日本テレビ系『そして、誰もいなくなった』(2016年)、フジテレビ系『砂の器』(19年)に続き3度目だが、本格的な絡みは初めてだ。
「この作品で一緒にお芝居できるのがうれしかったです。オーラがすごいので、圧倒されてしまう。本当に集中してないと、お芝居がおろそかになってしまいそうで、気が抜けなかったです。リハーサルから、全力でお芝居していました。スタッフさんとお話されているときはフランク。黒木さんは本当に魔女のような方でしたね。黒木さんのような唯一無二の女優になりたい」
恵麻は、正社員を目指す高卒の派遣社員。ところが、上司のセクハラ行為を抗議したことで職を失ってしまう。失意の中、魔女と運命的な出会いを遂げ、起業家の道を歩んでいく。
「恵麻はすごく勇気のある子だと思います。自分の仕事がなくなるかもしれない状況でも、間違っていることに『違う』と言える。多分、私にはできない。社長になるのは無理だけど、いい右腕になると思います。すごく運がいいんです。右腕になったら、どんどん会社が成長していくかもしれない」と笑う。
バラエティー出演に意欲「積極的にやりたい」
名もなき恵麻のシンデレラストーリーには自分自身のデビュー当時を思い起こさせる部分もあるようだ。
「上京してきた自分と重なる部分があったんです。魔女さんに助言してもらって、どんどん才能を開花させていく感じがタレントとマネジャーの関係に近いんです」
桜井は岡山県出身。17歳だった14年に「岡山美少女・美人コンテスト」で「美少女グランプリ」に選ばれ、現在の事務所に所属。翌年、大東建託の「いい部屋ネット」のCMが話題になった。
劇中、恵麻は“魔女”から宝石のような言葉を授けられるが、桜井にも、当時のマネジャーからいわれた言葉がある。
「言葉にはすごい力があるから、いい方向に進みたいんだったら、なんでも、プラスの言葉に変換しなさい」というものだった。
その後、担当は変わってしまったが今も感謝の思いは強い。
「ストレートに言葉を伝えてくる方で、10代の自分には消化しきれなくなって、悩んでいた時期もあった。悩んでいた時期は、泣きながら、母に『もうやめたい』と言ったこともありましたが、今思えば、本当に愛のあるマネジャーさんでした。厳しい言葉をかけてくれる人って、なかなか出会えないから。もっと向き合い方があったんじゃないかと思いますが、仕事を続けていれば、また会えると思っています。成長した姿を見せられるように頑張りたいと思っています」
俳優としてのキャリアで印象深いのも、16年の俳優デビュー作だという。昭和に活躍した画家で同名女性誌を創刊した編集者、中原淳一さん(1983年死去)の生涯を描く舞台『それいゆ』だ。
「戦中戦後のお話で。女学生からストリッパーになる難しい役でしたが、演出家の木村淳さんが私に向き合ってくれた。稽古では、感情が湧き上がって、鼻血をポタポタ垂らしたり、心が乱れたり、しんどかったけど、木村さんとの出会いがあって、今の私があります」
俳優業と並んで好きなのが、バラエティー番組だ。
「芸人さんが大好き。バラエティーのお仕事は楽しいので、マネジャーさんにも、積極的にやりたいと伝えています」。ドラマや映画だけでなく、バラエティー番組でも、桜井の笑顔がたくさん見られるかもしれない。
□桜井日奈子(さくらい・ひなこ)1997年4月、岡山県出身。2014年「岡山美少女・美人コンテスト」で「美少女グランプリ」を獲得し芸能界デビューを果たす。15年「いい部屋ネット」のCMで全国的な知名度を獲得。16年『そして、誰もいなくなった』(日本テレビ)で連続テレビドラマ初出演、2018年映画『ママレード・ボーイ』で初主演を飾る。ドラマ・映画・舞台と活躍の場を広げ、近年の主な出演映画は『任侠学園』(19)や間宮祥太朗とのダブル主演『殺さない彼と死なない彼女』(19)など。