小出恵介、結婚で変わった人生観「違う世界線が生まれた」「腰を落ち着けて仕事できる」
家族をテーマにしたチーズtheater 第7回本公演『ある風景』(6月21日~25日、東京・座・高円寺1に主演する俳優の小出恵介(39)。小出にとって、舞台とは? 家族とは何か?
小出恵介が語る舞台への思い
家族をテーマにしたチーズtheater 第7回本公演『ある風景』(6月21日~25日、東京・座・高円寺1に主演する俳優の小出恵介(39)。小出にとって、舞台とは? 家族とは何か?(取材・文=平辻哲也)
映画やドラマの印象が強い小出だが、舞台でもキャリアを重ねてきた。2003年に初舞台を踏み、故・蜷川幸雄さん(16年死去)の作品には、シェイクスピア作の『から騒ぎ』(08年)、寺山修司作の『あゝ、荒野』(11年)、騒音歌舞伎『ボクの四谷怪談』(12年)、『盲導犬』(13年)と4作品に出演してきた。
「僕の中では、蜷川さんは大きな存在です。26歳のときに、シェイクスピア劇で主演させていただきました。全部で4本やらせていただきましたが、こんなに早くに亡くなるとは思っていなかった。お亡くなりになった後に、自分の中での影響の大きさを感じました」
蜷川さんといえば、エネルギッシュな演出術が有名。全盛期は灰皿が飛んできた、という逸話もあるが、小出のときはどうだったのか。
「怒鳴られたり、髪を引っ張られるまでいかなくても、服をつかまれたりとかはありましたかね。当時の蜷川さんはエネルギッシュ。本当にお元気で、板の上に上がってきて、『こうやってやるんだよ』と役者の代わりに演技を見せてくれたりはしました。だんだん年を経る中、健康を心配することもありました。最後は車椅子で演出してくださいました」
その間も、岩松了の任侠劇『シダの群れ』(10年)、ケラリーノ・サンドロヴィッチの代表作でもあるダークファンタジー『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~』(12年)、野田秀樹の『MIWA』(13年)など10年代前半は舞台でも活躍してきた。
「『祈りと怪物』はキャラが濃い人、ものすごい演劇人が集まっている中、どう入っていけばいいのかともがきました。実力派のベテランに囲まれて、不安にもなりましたので、何をすればいいのかはすごく考えさせられ、その都度、自分にないスキルというか、辞書を開いているような感じがしました。日がたっても見ると、自分の経験、血肉になってきていると思います」
新作舞台『ある風景』はコロナ禍での母の孤独死をきっかけに、自身や家族を見つめ直す物語だ。
「俳優は作品や役柄をきっかけにいろいろと物事を考える、向き合う仕事だと思います。この劇中の家族はすごく仲がいいわけでもないけど、冷えきっているわけでもない。マジョリティの距離感かもしれないですけど、僕と両親の関係もそんな感じです。父は現役で働いています。劇中では、父親が認知症になるというエピソードもありますが、そんなことも起こりうる年齢にはなっているとは思います」
自身も2月に結婚し、新たな家族を持った。俳優人生にも変化はあったか。
「また一つ違う世界線、価値観が生まれてきています。自分だけでないという責任感もありますし、腰を落ち着けて仕事できる。自分以外のもののために、かける時間、エネルギーが増えているなと強く感じていて、それはすごくすてきなことだなと感じています」。今後は、映画や舞台だけではなく、日本のドラマやアメリカの作品に出ていきたい、という。
□小出恵介(こいで・けいすけ)1984年2月20日、東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。2005年、日本テレビ系ドラマ『ごくせん』でデビュー。映画『パッチギ!』(05)で注目され、その後数々の話題作に出演。18年10月より米ニューヨークに拠点を移し、20年より日本での芸能活動を再開。21年7月、ABEMA『酒癖50』で4年ぶりにドラマ復帰。23年2月には主演映画『銀平町シネマブルース』で本格的に映画復帰を果たす。現在は映画、舞台を中心に精力的に活動中。
ヘアメイク:永瀬多壱
スタイリスト:佐々木敦子