神木隆之介と杉咲花、互いを「神様」「花様」と呼び合う仲 リスペクトし合う役者魂

俳優・神木隆之介が、庶民からいきなり殿様になった青年・松平小四郎を演じた映画『大名倒産』(前田哲監督)が6月23日に公開される。シンデレラボーイと喜んだのもつかの間、任された一国は100億円の借金を抱えたビンボー藩。返済できなければ「切腹」という絶体絶命のピンチをどのように乗り越えて行くのか――。神木と、幼なじみのさよに扮(ふん)した俳優の杉咲花に、7メートルの橋の上から飛び降りるアクションもあった撮影の裏話や、見どころを聞いた。

映画『大名倒産』で共演した神木隆之介(上)と杉咲花【写真:YOSHIHITO KOBA(Sketch)】
映画『大名倒産』で共演した神木隆之介(上)と杉咲花【写真:YOSHIHITO KOBA(Sketch)】

深夜に撮影したダンスシーン、「さすがに笑えなかった」と本音も

 俳優・神木隆之介が、庶民からいきなり殿様になった青年・松平小四郎を演じた映画『大名倒産』(前田哲監督)が6月23日に公開される。シンデレラボーイと喜んだのもつかの間、任された一国は100億円の借金を抱えたビンボー藩。返済できなければ「切腹」という絶体絶命のピンチをどのように乗り越えて行くのか――。神木と、幼なじみのさよに扮(ふん)した俳優の杉咲花に、7メートルの橋の上から飛び降りるアクションもあった撮影の裏話や、見どころを聞いた。(取材・文=西村綾乃)

 物語は浅田次郎の同名時代小説を映画化したもの。神木と杉咲はドラマ『学校のカイダン』(日本テレビ系、2015年)で初共演して以降、映画やCMなどでタッグを組んでおり、互いを「神様」「花様」と呼び合う仲だ。

神木「花様は僕が目指している芝居をする方。『学校のカイダン』で初対面したときから『怪物』と思っていました。今回、目の前で花様の芝居を見て、怪物度が増したと感じました。癒やし系の雰囲気を持ちながら、芯はブレない。これは花様と、花様が演じたさよに共通するところ。主演は僕ですけど、この映画は間違いなく杉咲花の映画と言えます」

杉咲「何をおっしゃいますか(笑)。神様が現場をよく見て、声をかけて、周りを奮い立たせてくださるので、みんな安心してお芝居をすることができるんです。撮影に入る前、前田監督から『アドリブが多い現場です』と聞いていたのですが、本当にカットがかからない場面が何度かあったりもして緊張していたのですが、シーンを深めていくことができたのは、神様がぶれずに立っていてくださったからだと思います」

神木隆之介【写真:YOSHIHITO KOBA(Sketch)】
神木隆之介【写真:YOSHIHITO KOBA(Sketch)】

 アドリブ満載の撮影では、悪者に追われた小四郎とさよが、追っ手を逃れるため、高さ7メートルほどの太鼓橋の上からジャンプする場面もあった。

神木「僕らを追う悪者がナイフを手にする場面があるのですが、そこで監督が悪者役の方に『ナイフをなめて』ってリクエストしたんです。聞いた途端、『ベタだな』と突っ込みたくて仕方がなくて、思わず『初めて見た』というアドリブを入れました。それに花様も乗ってくださって。どんな反応も受け止めてくれるので、全幅の信頼を置いて撮影ができました」

杉咲「橋のシーンは事前に何度か飛び降りる練習をしました。神様は慣れていて、とてもリラックスして臨まれていたのでさすがだなと。私は覚悟を決めて『もうどうにでもなれ』と思ってダイブしました(笑)」

 京都・西本願寺で行った撮影では、重要文化財を守るため、「勝手にふすまを開けてはいけない」など注意事項が多くあったが、歴史を感じる場所に立ち「気分は江戸だった」と笑顔に。強い結束力で難題を次々にこなしたが、神木は1つだけ大変だったことがあったそう。

神木「コメディー映画なので、演じている僕らが楽しくないとお客さんに伝わらない。だからいつも楽しい気持ちでいようと思っていましたが、エンドロールの撮影だけは少し引きつってしまった時がありました。兄弟を演じた松山ケンイチさんらと、ダンスをするのですが、『自由に踊って』という指示があったので自由に動いていたら、監督から『笑顔で』『もっと笑って!!!』と、カットがずっとかからず…。踊りのネタも尽きたし、時間もかなり深い時間だったので、さすがに顔がこわばりました(笑)」

杉咲花【写真:YOSHIHITO KOBA(Sketch)】
杉咲花【写真:YOSHIHITO KOBA(Sketch)】

 本音を明かした神木だが、天真爛漫に踊る姿には、そんな気配は少しも感じない。放送中のNHKの連続テレビ小説『らんまん』でも、植物学者・槙野万太郎を朗らかに演じている。心をどのように保ち続けているのだろうか。

神木「僕も人間なので、ネガティブな思考になるときもあるんです。ファッション誌をめくって、『こんな風にスタイルが良く生まれていればなぁ』ってへこむこともあるし。仕事で遅かった翌日、早朝から撮影という日もあるけれど、『何とかなる』って切り替えています。いい未来を想像すると、絶望的に悪いことは起こらないと信じています」

杉咲「タフですよね。すごいなぁ。主軸にいる責任感もあると思いますが、簡単にまねできることじゃないなって思います。私はまだまだ一俳優として課題に向き合うことが多くて、大きな山が日々更新されている状態。神様の言葉を胸に刻みたいと思います」

□神木隆之介(かみき・りゅうのすけ) 1993年5月19日、埼玉県生まれ。12歳のときに主演した映画『妖怪大戦争』で『第29回 日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。映画『桐島、部活やめるってよ』、『るろうに剣心』シリーズなど多くの映画やドラマに出演。アニメーション映画『千と千尋の神隠し』、『君の名は。』では声優を務めるなど多彩に活躍する。

□杉咲花(すぎさき・はな) 1997年10月2日、東京都生まれ。映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年)で『第40回 日本アカデミー賞』、『第41回 報知映画賞』、『第59回 ブルーリボン賞』の助演女優賞を受賞。NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』など映画やドラマ、CMに出演している。アニメーション映画『思い出のマーニー』では声優も務め、幅広い表現が高く評価されている。

<スタッフクレジット詳細>
【神木】
▼スタイリスト:TAKAFUMI KAWASAKI、ヘアメイク:MIZUHO(VITAMINS)

【杉咲】
▼スタイリスト:Tatsuya Yoshida、ヘアメイク:Mai Ozawa(mod’s hair)

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