長州力、熱海移住1年半で「仙人の心境」 現地で語った東京との違い 楽しみは孫の来訪

元プロレスラーの長州力が東京から静岡・熱海に移住して1年が過ぎた。温泉地で有名な熱海での暮らしは、海が一望できるなど理想的な生活に。一方で飲食店の閉店が早いなどのデメリットも感じている。移住してもなお、CMやテレビに引っ張りだこの長州を熱海で取材した。

熱海でビールを飲む長州力【写真:ENCOUNT編集部】
熱海でビールを飲む長州力【写真:ENCOUNT編集部】

移住先に熱海を選んだワケ 「山の中で住もうとは思わない」

 元プロレスラーの長州力が東京から静岡・熱海に移住して1年が過ぎた。温泉地で有名な熱海での暮らしは、海が一望できるなど理想的な生活に。一方で飲食店の閉店が早いなどのデメリットも感じている。移住してもなお、CMやテレビに引っ張りだこの長州を熱海で取材した。(取材・文=水沼一夫)

 まだ日の明るい午後4時半過ぎ、長州は熱海市内の焼き鳥店ののれんをくぐった。食事は朝、夜の1日2食と決めている。「昼は食べないな」。テーブルの上には好物の焼き鳥のほか、YouTube撮影用の機材もセットされている。しかし、長州は一切カメラを気にしない。いつも以上にリラックスした表情で、串を口へ運び、ビールを胃袋へ流した。これが、熱海の生活スタイルだった。

 長州が熱海に拠点を移したのは昨年1月。熱海以外にも複数あった候補地の中から、検討を重ねた上で自ら決断した。ゆったりとした時間の中を、夫婦で暮らしている。

 譲れない条件は「海」だった。

「要するに山が好きか、海が好きか。海のそばにいると、何か気持ちが楽じゃん。俺はね。山の中で住もうとは思わない」

 故郷・山口の実家も海へはすぐ。「田舎は田舎でかぶってはいるけど、まあ同じような」と重ね合わせ、望郷の思いを口にした。

 現役時代、試合で全国を飛び回った。長年東京で暮らし、67歳で引退後も新日本プロレスの道場で汗を流すのは日課になっていた。

 熱海に、レスラー仲間はいない。娯楽も、六本木や新宿などの“不夜城”を持つ東京とは、何もかもが違う。

 だが、長州はすべてを達観しているように見えた。海を見下ろす部屋で、「仙人の心境だよ」と言った。

 仕事は現在、熱海でこなすことも多い。収録があれば、クルーに来てもらうこともある。都内に出向くこともあるが、マネジャーいわく、「熱海に来ると結構対応がいいので、そのほうがいいですよっていうのを最近売り文句にしています。東京で仕事をするときは、何時に終わるんだ、いつまでに終わらせられないかみたいになるんですけど、熱海になると全然時間のことを言わないですよ。さみしいんでしょうね。もう帰っちゃうのか、みたいな」。東京から新幹線でわずか45分。仕事もはかどっているようだ。

 現役を引退してからSNSでブレークし、CMやテレビで引っ張りだこ。有名人だけに、どこへ行っても撮影や握手を求められる。それでも、腹が減れば1人で飲食店を訪れることもある。だんだんと、熱海の店にも詳しくなってきた。最近、発見したのは小さな飲食店で飲んだ長野の地ビール「インドの青鬼」。本人は“インドのビール”と間違えているようだが、「本当にうまいんだよ」と愛飲している。

 たまの楽しみは、3歳になる孫の来訪だ。普段は都内に住むが、遊びに来たときに備えて、リビングには大量のプラレールを保管している。海や釣り、熱海サンビーチの砂浜など、子どもの遊び場には困らない。

「おもちゃみたいだよ。背中にねじがあるんじゃないかと思うくらい」と、愛らしい孫にデレデレになっている。

 一方で、熱海の中心街には都会のようなけん騒はない。ホテルで夕飯を取る観光客が多いため、飲食店の閉店は早い。それは、熱海が“地元”になった長州にとっては、ちょっぴりさびしいことだ。最近の若者は民泊のような部屋を借りて、コンビニで買い出しを済ませる傾向もあるという。

地元民だからこそ分かる熱海の現状 平日は高齢者ばかり

 人気観光地の熱海も、地元に溶け込むと、にぎわいに特徴があった。「おととい花火が上がっていた。すごいよ、若者が酔っぱらって」。週末になると、わっと若者が訪れるが、平日は高齢者の姿が目につく。

「人が一瞬にして消えちゃう。平日昼間なんか、商店街だけ観光客がいるけど、あとはもう、高齢者ばっかりで」

 さらなる引っ越しについては、現時点では考えていない様子だ。「いや、考えてはいないぞ。考えてはいないけど、やっぱり海があるところがいいよな」。将来はどうなるかは分からないが、「行くところがなかったらずっといる」と、骨を埋める気持ちもあるようだ。

「仕事なんてやめている」と言いつつも、周囲は放っておかない。後輩の武藤敬司とのコンビも注目を集め、地方移住でありがちなおとなしい“隠居生活”とは無縁だ。

 出演について「需要があるから出ているだけ。需要があるから」と控え目に語る長州だが、理想的な環境を手に入れ、悠々自適。まだまだ活躍してくれそうだ。

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