「寝かしつけは本当に地獄」「おんぶと抱っこを同時に…」 三つ子ワンオペ育児の壮絶な現実

ただでさえ大変な乳幼児期の子育て、それがワンオペ、ましてや三つ子なら……。夫は単身赴任、実家は遠方という環境の中、女手ひとつで小学5年生の三つ子を育てる女性に、多胎児育児の現実と行政支援のあり方を聞いた。

三つ子をワンオペで育てるのは想像以上に壮絶だ(イラストはイメージ)【画像:イラストAC】
三つ子をワンオペで育てるのは想像以上に壮絶だ(イラストはイメージ)【画像:イラストAC】

夫は仕事柄短期の転勤が多く、家に帰るのは2週間に2日だけという単身赴任生活

 ただでさえ大変な乳幼児期の子育て、それがワンオペ、ましてや三つ子なら……。夫は単身赴任、実家は遠方という環境の中、女手ひとつで小学5年生の三つ子を育てる女性に、多胎児育児の現実と行政支援のあり方を聞いた。

 イラストレーターの宮瀬とまとさんは、2012年4月に女の子、男の子、男の子の三つ子を出産。会社員の夫は結婚前から仕事柄短期の転勤が多く、家に帰るのは2週間に1回だけという単身赴任生活の中、女手ひとつで子どもたちを育ててきた。

「三つ子の妊娠が分かったときは、びっくりして頭の中が真っ白でした。どんな生活になるのか想像もつかないし、楽しみより不安の方がずっと大きかった。切迫早産の可能性があったため、妊娠後は実家の近くの大きい病院に入院。夫は仕事で常に家を空けている生活だったため、出産後は実家で両親の助けを借りながら子育てを始めました」

 実家で両親のサポートを受けての子育て。しかし、その両親が先に限界を迎え、1年半余りで実家を離れることを決断する。

「両親とも高齢で、体力的に参ってしまっていた。私も実の親の前では甘えてしまうところもあって、このままじゃダメだと子どもたちが1歳半のときに実家を出ました。そこから3歳で幼稚園に入園するまでの期間は、暗黒の時代というか、地獄のような日々でした」

 夫は理解があり、2週間に一度の仕事がない日は一生懸命家事や育児に参加してくれた。実母も月に1度ほどの頻度で手伝いに来てくれた。それでも夫が仕事に出ると、たった1人で3人の子に向き合わなければならない。1人で3人を24時間見続ける三つ子育児とは、どういったものなのだろうか。

「まず、外出はほとんどできません。3人の機嫌や空腹、トイレなどのコンディションがそろって、3人分の着替えや支度を済ませることは奇跡に等しい。何かひとつでもかけたら外出は諦めなければいけません。3人が熱出して3人に吐かれて、家じゅうめちゃくちゃに汚されたこともありました。寝かしつけは本当に地獄。3人の機嫌を観察しながら、おんぶと抱っこを同時にして、順番に寝かしつけていく。1人でも夜泣きしたら全員起きてしまうので、泣き出す前の気配を察知して抱っこしながら別室に向かう。その緊張感と、自分1人に3人分の命がかかっているという責任感で、毎日ほとんど眠れていなかったと思います」

 行政の支援も頼ったが、多胎児向けの支援サービスはほとんど実態が伴わないものばかり。精神的に限界を迎え、「とにかく話を聞いてほしい」と児童虐待のチャンネルに電話したこともあったという。

「ファミサポ(ファミリー・サポート・センター事業、子どもの送迎や預かりなど、地域で有償の相互援助活動を行う事業)や多胎児サークルなど、同じ境遇の人たちの集まりを紹介されて、それだけ。もう限界ですと保健師さんに訴えても、『頑張ってください』と言われるだけ。協力してくれる方はいますかと聞かれて、母が月に1度来てくれますと言ったら、『それはよかったですね!』と言われたこともありました。行政側に支援の知識もサポート体制も、何もそろってないことを痛感しました。1人ではもう限界だと思い、働いて保育園に入れようと思っても仕事を探す時間もない。市役所の保育課の窓口では『ただでさえ空きが少ないのに、3枠も取りたいなんてありえないですよ』と言われて。なんてひどいことを言うんだろうと絶望しました」

 子どもたちが3歳を迎え、幼稚園に入園したあとは、「まだまだ大変なのは変わらないけど、24時間の育児から解放されてホッとした」と本音を漏らす。その子たちも今や小学5年生。相変わらず夫は単身赴任の生活が続くが、夫婦仲は良好だ。

 多胎児育児の当事者として、これから双子や三つ子を育てるパパママには、「もっと周囲を頼らないとダメ」とアドバイスを送る。

「1対1でようやくワンオペで、そもそも多胎児育児はワンオペにすらなっていない。双子の時点で普通の育児とはまったく違う。『助けて』と言い続けないと行政は何もしてくれない。本来は制度の問題でおかしな話なんですが、助けてと言ってもいい、ではなく、言うべき。言わなければいけない状況だと思います。行政には、シッターチケットやタクシーチケット、それらを呼べるだけの給付金でも、何でもいいから人が来てくれるサービスをお願いしたい。実際にそれらのサービスあっても、本当に最後の最後ということも多い。もう少し気軽に利用できる世の中になることを望みます」

 あまりにも壮絶な多胎児育児の現実。行政には幅広く実効性のある支援が求められている。

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