【週末は女子プロレス♯106】エキゾチックなルックスでファン魅了 豪州からスターダムに戦いの場を求めたジーナの素顔

オーストラリアから初来日し、スターダムに参戦中のジーナ。彼女にとってはこれが初めての海外で、通算試合数は100試合弱。それでも見た目以上のパワーファイトとともに経験を積み、評価が上昇中。スターダムへの参戦で、国際派への第一歩を踏み出したと言っていい。

初来日のジーナ、スターダムで躍動中【写真:新井宏】
初来日のジーナ、スターダムで躍動中【写真:新井宏】

初来日でスターダム参戦、きっかけはオスプレイ

 オーストラリアから初来日し、スターダムに参戦中のジーナ。彼女にとってはこれが初めての海外で、通算試合数は100試合弱。それでも見た目以上のパワーファイトとともに経験を積み、評価が上昇中。スターダムへの参戦で、国際派への第一歩を踏み出したと言っていい。

 エキゾチックなルックスでもファンを魅了するジーナは、1997年2月18日、中東ヨルダンで生まれた。3歳のときに家族が「ベターライフを求めて」オーストラリアに移住。父はトラックの運転手で、6人兄弟。両親は男の子がほしかったが、6人中5人が女子。ジーナは3女で、その次に生まれたのが待望の男の子だった。「その後も生まれたのは女の子ばかりだったけど(笑)」。

 家族で見るテレビ番組の中に、プロレスがあった。WWEだ。そこでジーナはプロレスの迫力に魅了される。マット&ジェフのハーディー・ボーイズ、リタ、トリッシュ・ストラタスらにあこがれ、自分でもやってみたいと思うようになった。実際、16歳でローカル団体への入門にトライするも、「18歳になってから」と断られ、両親にも反対された。

 が、あきらめきれずに18歳で再び団体のジムを訪れた。「まわりはプロレスから卒業していったけど、私だけは卒業できなかったの」。 

 オーストラリアではプロレスこそあるものの、メジャーと呼べるような団体はなく総インディーといった状態。普通に考えればオーストラリアでのプロレスはアメリカのWWEをさしており、レスラーになるためには国内でデビューし、そこから海を渡るのがよくあるパターン。サッカーやボクシングの経験があるジーナは、空中戦を得意とするハイフライヤーを夢見てローカル団体の練習生になったのである。

「マジソン・イーグルスやロビー・イーグルスに練習を見てもらったの。とくにチアリーダー・メリッサからはよくアドバイスをもらったわ。デビュー後も試合の感想など、いろいろ話してくれたのがメリッサだったの」

 デビューは2018年7月20日、金網マッチでのバトルロイヤルだった。21歳でいきなり男子との混合試合だったのだが、彼女からすれば当たり前。以後も男女の区別なく試合をした。男子レスラーと戦うことに、ジーナはメリットを見出していたという。

「男性と戦うには力が必要でしょ。力負けしないように体力をつければ、それによってレベルも上げてくれるから」

 当時の彼女は、クラブやバーのバウンサーとしても働いていた。酔った客を力でねじ伏せ警官に引き渡すのだ。ねじ伏せたのは、ほとんどが男性。彼女よりも明らかに体格でまさる男性も多かった。女性のバウンサーは珍しく、1割ほどだったという。

「生活費を稼ぐ仕事であり、トレーニングの一環でもあるけど、毎晩何が起こるんだろうってエキサイティングなところも多くて、かなり楽しんでやってたわ(笑)」

 ある日、新日本プロレスでも活躍するウィル・オスプレイがオーストラリアのリングに登場、現地の団体でセミナーを開いた。ここにジーナも出席し、オスプレイから「チョップがいいね」と褒められたという。オスプレイを通じ日本のプロレスを知り、女子プロレス団体のスターダムも知る。新日本に参戦するロビー・イーグルスからも日本のプロレスについてレクチャーを受けた。オスプレイの一言から自分が思っていた以上にパワーがあることがわかり、日本への興味もわいてきた。が、新型コロナウイルス禍により試合の機会を奪われてしまう……。

 20年3月20日の試合を最後に、再開まで11か月を要した。「コロナ禍ではどこにも行けず試合もできない。かなりフラストレーションが溜まっていたわ。バーも閉鎖されたりして、ワークアウトでシェイプアップするしかなかった。再び試合できる日を夢見てね」

 コロナ禍によってプロレスをやめるという選択肢はなかった。むしろ海外マットをリサーチする機会が増え、将来の日本行きも考えた。そんな中で思いがけなくスターダムへの参戦が決定した。今年3・26横浜武道館での「シンデレラ・トーナメント2023」で初登場、日本デビュー戦となる1回戦で妃南を破る好スタートを切ったのである。

「初めてのジャパンにはとにかく圧倒されたわ。初戦の日、バックステージで考え事してたら誰かに頬をつねられたの。そこで、あ、私はいまよその国、ジャパンにいるんだと実感。最初こそ圧倒されまくったけど、いまのところ困ったことはなにもないわね。ちょっと迷ったらステップバック、俯瞰して真似てみようと思ったし、ロビー・イーグルスから教えてもらった情報も役に立ったわ」

試合では観衆を魅了するジーナ【写真提供:スターダム】
試合では観衆を魅了するジーナ【写真提供:スターダム】

日本で衝撃を受けたスターダムの人間ドラマ

 スターダムでは、白川未奈率いる国際派ユニット、クラブビーナスに加入。ここでジーナは日本ならではのエモーショナルなプロレスを体感する。白川が4・23横浜アリーナで上谷沙弥を破りワンダー・オブ・スターダム王座初戴冠を果たすと5・4福岡でなつぽいを破り初防衛に成功、ワールド・オブ・スターダム王者・中野たむとの赤白2冠戦を提案した。ところが、5・27大田区で敗れまさかの無冠に。上谷、なつぽい、中野と、白川の試合にはどれもがエモーショナルなドラマに満ちていた。彼女たちが織り成す人間ドラマが、リングに反映される。これが外国人レスラーのジーナには衝撃的だった。

「オーストラリアではお互いの人生をぶつけ合うような試合はなかったわ。ミナの試合はセコンドについていても感情が伝わってくる。ベルトを落とした試合では、バックステージでメンバー全員泣いてしまったの」

 いずれはこのようなエモーショナルマッチをやってみたいというジーナ。そのためには日本でライバルを見つけ、日本で長く闘うことが必要だろう。

「私もそういう試合をやってみたいと思う。そう思えるようになったのもミナのそばでミナの試合を見てミナの感情を理解しようと心掛けたから。彼女はグッドティーチャー。以前はハイフライヤーになりたかったけど、いまはいろんなことにトライしたいと思ってる。ジャパンでもっと長い期間闘いたいとも考えているわ」

 そんなジーナにとって、白川との出会い以前に“開眼”した試合がある。それは来日第3戦となった4・2後楽園ホールでのシンデレラ・トーナメント準々決勝、MIRAIとの一騎打ちだ。

「これまでのスターダムでの試合でもっとも印象に残ったのがMIRAIとのシングルマッチ。打撃でやられたらやり返すの応酬で、打っていくたびに激しくなっていくの。ああ、これがジャパンのプロレスなんだなって感じたのね。それからジャパンで闘う心構えができたんだと思う」

 ここまではトーナメントにエントリーする個人としての闘いだった。ジーナのトーナメントはここで終わったが、クラブビーナスとしての活動がこの後本格始動。白川のエモーショナルな闘いに心を動かされ、MIRAIや舞華らパワーで真っ向勝負する相手にも巡り会えた。フィジカルでスピーディーなスターダムの多人数マッチをオーストラリアマットに導入したいとも考えている。

 キャリアこそ浅いものの、ポテンシャルの高さはスターダムで実証した。チャンスさえあれば世界中どこでも通用するレスラーになるのは間違いない。今後の活躍が楽しみだ。

次のページへ (2/2) 【写真】ファンを魅了する国際派ユニット・クラブビーナスのジーナ&白川未奈&マライア・メイ
1 2
あなたの“気になる”を教えてください