母子同室が議論、ボロボロの体で新生児の世話「つらい、限界」 産院頼ることは「母親失格ではない」

待望の我が子を出産し、産院で始まった母子同室が想像以上に過酷だったと訴えたネット上の投稿が大きな反響を呼んでいる。ただでさえ、出産には精神的・肉体的負担が伴い、人によっては陣痛開始からかなりの長時間を眠れないまま過ごしているケースもある。会陰切開や帝王切開などの手術を受け、心身ともにボロボロの状態の中、生まれた赤ちゃんを夜通し産院に預かってもらうことは許されないことなのか。産院での母子同室中に、赤ちゃんが泣き止まないことから、相部屋を出て深夜に廊下で育児をしたことがあるという20代の1児の母に聞いた。

「母子同室」が連日トレンド入(写真はイメージ)【写真:写真AC】
「母子同室」が連日トレンド入(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「もう1日で限界…」 ボロボロの体で始まる赤ちゃんの世話

 待望の我が子を出産し、産院で始まった母子同室が想像以上に過酷だったと訴えたネット上の投稿が大きな反響を呼んでいる。ただでさえ、出産には精神的・肉体的負担が伴い、人によっては陣痛開始からかなりの長時間を眠れないまま過ごしているケースもある。会陰切開や帝王切開などの手術を受け、心身ともにボロボロの状態の中、生まれた赤ちゃんを夜通し産院に預かってもらうことは許されないことなのか。産院での母子同室中に、赤ちゃんが泣き止まないことから、相部屋を出て深夜に廊下で育児をしたことがあるという20代の1児の母に聞いた。

 生まれたばかりの赤ちゃんは、とてもいとおしいものだ。ところが、覚悟して産んだものの、母子同室に初日からつまづいてしまった。話題になった投稿には「育児なめてた」「もう1日で限界…」と、悲痛な言葉が並ぶ。しかし、リプ欄には全国の母たちから励ましの言葉が相次いだ。「母子同室」は連日トレンド入りし、その在り方を巡って、医師も巻き込んで大きな議論を呼んだ。

 今回取材に応じた女性もツイートを確認し、共感した1人だった。

「私も産後の母子同室は想像以上に大変で、『これからずっとこれが続くのに、1日でこんな精神状態でこれから自分は大丈夫なのかな?』と不安になりました。1日中、家族にLINEで弱音を吐いてしまいました」

 他人事とは思えなかった。出産経験のある女性なら、一度は頭によぎったことがあるかもしれない。

 母子同室は、産院の方針によって異なる。芸能人御用達の都内の有名な産院は、出産から退院時まで夜間は預かってもらえる。母子同室は、日中の限られた時間だけ。出産の疲れを癒やすため、マッサージ室で施術を受けることも可能だ。

 しかし、そのような方針を取る病院は、あまり多くない。

「私の産院は、初産婦さんは2日目から母子同室でした。同じ部屋の方は経産婦さんで、産んだ直後から一緒に過ごしていました」と、女性は話す。

 母子同室で、もっとも気になったのは自身の体調面だった。「後陣痛がひどくつらかったです。また、眠れないことに加えて、初めての授乳が全くうまくいかず、すごくストレスを感じていました」。無事に出産し、安堵(あんど)する間もなく、ノンストップの育児が始まる。授乳の方法も一からだ。産後のダメージを回復させながら、慣れない育児に戸惑った。

 産院側は臨機応変に対応してくれる姿勢も見えたという。

「お願いすれば、いつでも預かってくれるような雰囲気でした。夜中なかなか寝ないときや食事の時間になっても、息子がギャン泣きで困っているところを見かねて声をかけて下さり、預かってくれることもあり、とてもありがたかったです」

 とはいえ、どのタイミングでスタッフや助産師に声をかけていいのかは、迷うこともあった。「私自身これからなのに甘えちゃダメだと思ってしまい、なかなか自分からお願いすることができなかったです」。そのため、母子同室中には、泣き続ける子どもを自力であやすことが多かった。相部屋のため、子どもが何をしても泣き止まない場合は、そっと部屋を出て、廊下で寝かしつけた。

「同部屋の方が、3人目のママさんということでとても慣れてらっしゃるようで、赤ちゃんは全然泣かないし、よく寝ている様子でした。うちの子の泣き声のせいで産後すぐのママさんが休めないのが申し訳なく、廊下に出ました。同部屋のママさんや病院のスタッフの方は『お互い様だから気にしなくていいのよ!』と言ってくださるけど、やっぱりどうしても気を遣ってしまいました。廊下で寝かしつけているとき、見回りに来た助産師さんは『大丈夫? 預かるわよ!』と声をかけてくださり、預かってもらう日もありました」

退院後に感じた母子同室のメリット「あの時間がなかったら…」

 母子同室を経験したことで、よかったことは何だろうか。

「メリットは、産んだ後すぐに一緒に過ごすことで、愛情がとても芽生えました。『つらい』という気持ちだけでなく、一緒に過ごせて幸せでしたし、『生まれてすぐに2人で過ごせるのは私だけの特権!』と思えました。また、寝かしつけや授乳のタイミング、おむつ替えなど、助産師さんに相談しながら試行錯誤できたことで、家に帰ってから少し余裕を持ってお世話をできました。あの時間がなかったら、帰ってから正しいことを教えてくれる人が身近にいないと不安なことも多かったですし、すごく大変だったと思います」

 限られた入院期間の中で精一杯吸収したことは、退院後の育児に役立った。完璧とはいかなくても、自信を持って臨めるようになった。

 一方で、「デメリットは、やはり『つらい』です。産後体調も戻らず、睡眠も足りてない時に、何をしても泣き止まないし、何で泣いてるのか分からない。授乳もうまくできない。同じ部屋の赤ちゃんはこんなに静かに上手に寝ているのに……と孤独を感じました」と語った。

 世の中情報であふれているとはいえ、初産であれば、誰もが緊張するもの。赤ちゃんへの向き合い方もそれぞれだ。

 母子同室について前向きに捉えている女性だが、あくまでも優先するのは体調との考えを示す。

「母子同室はつらいことに間違いはありませんが、少し落ち着いた今思えば、あれはあれでいい経験だったなぁと思えます。ですが、『つらい、限界』と思ったからと言って、母親失格ではないと思います。つらい時は預けてもいいと思いますし、私ももっと産院を頼ればよかったなと思っています。退院してからは嫌でも赤ちゃんにつきっきりですから」と、締めくくった。

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