ジャニーズ問題「再発防止特別チーム」が会見 「現役タレントへの調査は慎重にアプローチ」/一問一答全文
ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長(享年87)をめぐる性加害疑惑を受け、組成された「外部専門家による再発防止特別チーム」の記者会見が12日、都内で行われた。同問題に関する会見は初めてで、この日はチームリーダーで元検事総長の林真琴氏と精神科医の飛鳥井望氏が登壇した。以下、一問一答。
リーダーの元検事総長・林真琴氏、精神科医・飛鳥井望氏が質疑応答
ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長(享年87)をめぐる性加害疑惑を受け、組成された「外部専門家による再発防止特別チーム」の記者会見が12日、都内で行われた。同問題に関する会見は初めてで、この日はチームリーダーで元検事総長の林真琴氏と精神科医の飛鳥井望氏が登壇した。以下、一問一答。
――どういう事実があったのかをどういうふうに解明していくのでしょうか。
林氏「被害告発を出発点として、過去の事務所幹部や対応について問題点を検証し、再発防止策を提言していきます」
――事務所側は事実を認めていないが。
林氏「我々は特別チームの立場で検証していきます。その事実はあったかどうかを判断するのは、我々の専権事項です」
――ジャニー氏への性加害疑惑は1960年代から報じられ、裁判でも認められる判決がありました。それでも合宿所があるなど、事務所が組織的な関与が疑わる事案だと思いますが。
林氏「ジャニー氏による性暴力があったことを前提とし、それを起こしやすいようなガバナンスに問題があったかを検証したいと思っています」
――過去40年にさかのぼる検証になると思う。メディア側の問題もあると思うが。また、どのようなスケジュールで調査していくのか。
林氏「スケジュールの目途は全く定まっていません。メディアがどのような対応をしたかは、我々による検証対象ではありません」
――「タレントに罪はない」という意識はお持ちでしょうか。マネジャーによる性加害も報じられたが。
飛鳥井氏「これだけの歴史、組織の規模だといろいろ出てくると思います。性加害に対する甘い風土があるなら、検証しないといけない。使用者へのジャニーズ氏への思い、その中で性被害を耐えなければいけなかったとすれば、タレントたちに罪はないと思います」
――申告した過去のタレントのみを調査するのでしょうか。
林氏「過去の加害行為の存在を前提として検証していきます。再発防止を提言していくために、被害を告発された方には事務所がどう対応したのか、性行為がどのように行われたのかを検証するため、話を聞かせていただきたい。ただ、被害を告白することは心理的負担なので、所属された方にすべからく話を聞くことはありません」
飛鳥井氏「性被害を調査されること自体が、被害の傷口を広げてしまいます。お話していただける方に聞きたいと思っています」
――ジャニーズ事務所によるメディアコントロールがあったからこそ、メディア側の対応に問題が生じたのでは。
林氏「ジャニーズ事務所の対応を検証する中で、そういったことも検証対象の視野に入ってくると思います」
――今後、被害者側から賠償請求もあると思います。報酬はジャニーズ事務所からもらっているのでしょうか。
林氏「我々は、事案に対する損害賠償を認定するチームではありません。また、このチームはジャニーズ事務所が設置したものですから、報酬は設置する側からいただきます」
――なぜ、第三者委員会を設置しないのでしょうか。
林氏「今回、我々は独立した形で調査しているので、『第三者委員会』と受け取ってもらって構いません。私は、必ずしも『第三者委員会』と名乗る必要がないと思っています。もちろん、日弁連のガイドラインを踏まえて活動していきます」
――調査はどの程度まで公表するのか。中間報告は
林氏「スケジュールは定まっておりません。検証結果は皆さまにお知らせしたいのですが、調査、検証をしながら考えていきます」
――この役割を引き受けた経緯は。
林氏「5月14日に(ジャニーズ事務所としての)リリースがあり、その後に打診を受けました。今回、こういった問題は深刻と感じていました。こうしたことが2度と起きないためのガバナンスを作ってほしいということであり、私が引き受けたいと思いました」
飛鳥井氏「この問題はガバナンスの改善を考える上で、被害者支援が不可欠であり、引き受けるべきと思いました」
――現役幹部への聞き取りは。
林氏「幹部のみならず、周辺への聞き取りは必須のものだと考えています」
――深刻な問題と考えた理由は。
林氏「性暴力は社会的な地位に乗じて、立場の弱い者に対して起こりやすいという認識を持っていました。今回はその範ちゅうに入るひどい深刻な問題であり、2度と起こさないための提言をすることは社会的な意義があると考えました」
飛鳥井氏「立場の強い者が立場の弱い者に対しては、防ぐのは難しい深刻な問題です。ガバナンスの改善によって、どのように防ぐかを考えていかないといけないと思います」
――現役タレントへの調査は。
林氏「被害を申告されている方には直接、お話をうかがいです。ただ、現役タレントの方は慎重に配慮したアプローチをしたいと思っております。網羅的にあらゆるタレントを調査することは考えておりません」
飛鳥井氏「調査の対象になるだけで負担になるので、網羅的な調査は一切、考えておりません」
――ジャニーズ事務所側は会見せず、チームが先に会見することはどう思いますか。
林氏「藤島社長とは何の話もしていませんし、それ自体はジャニーズ事務所側で考えることです」
飛鳥井氏「いずれ、提言をしたときにはジャニーズ事務所の代表者として、これをどのように実現するかのお考えは示していただけると思います」
――現経営陣の責任、未成年タレントを抱える幹部はより大きな責任があります。一般論として、ジャニーズ事務所幹部はどのような責任を持っていたと考えますか。
林氏「ジャニーズ事務所の責任、特に幹部の責任。これは責任という言葉は厳密に使えば、私たちは責任を認定するチームではありません。『責任』というものを『問題点』に置き替えて、今の質問に答えるすれば、当然、今回の検証の対象になります。幹部の『問題点』というものは、それは検証の中の一番重要な検証事項の1つだと考えています」
――経営陣の責任の有無を明らかにされますか。未成年タレントの安全を確保する責任があるはずですが。
林氏「ジャニーズ事務所の責任、幹部の責任を認定するチームではありません」
――以前、所属していた人物(マネジャー)の加害について調査は。
林氏「当該、その事実に関して元マネジャーを調査するかは考えていく必要があります。(加害)ジャニー喜多川氏ではない場合も度外視はできません。別の人による性暴力については、(調査から)外すということでは全くありません」
飛鳥井氏「性加害に対して甘い風土があったかどうかは、このチームが検証すべきと考えています」
中立性については「疑問視される必要はありません」
――チームの発動によって、子ども期に受けた被害の回復をどう考えていますか。
飛鳥井氏「被害者の心の回復とジャニーズ事務所の信用回復は表裏一体です。被害者の心の葛藤などを聞くこともあると思います」
――藤島ジュリー景子社長が会見していない。これはガバナンスも問題ではないか。
林氏「現時点で、それは明らかにジャニーズ事務所に考えることでありますが、起きている事象についてどのようなガバナンス、説明責任を果たすかは検証の対象です。今後、提言することはあると思います」
――事実認定について。社長が「知らなかった」と表明した中、事実認定はできるでしょうか。
林氏「ジャニー氏による性暴力があったことを前提として、さまざまなことを検証していきます」
――(林弁護士は)ジャニーズ事務所の顧問弁護士と先輩後輩の関係です。チームの独立性を担保できますか。
林氏「以前、検事をされていたときの先輩、後輩の関係ではありますが、30年以上前のことです。私に就任を打診してきた弁護士は違う方ですし、今回の人選には関わっていないと思います。(中立性を)疑問視される必要はありません」
――数人の被害と何百人の被害とでは責任が違うと思うが。
飛鳥井氏「網羅的な調査は負担ですが、加害者と被害者の関係性はほぼ共通している。被害者は相当数ということは確かだと思いますので、掘り下げるべき点は掘り下げることは可能だと思います」
林氏「事務所が事実を認定していない状況で、再発防止策を提言するにあたって事実認定は、我々の専権事項。事務所側に事実を認められなくても、提言はしていいきます。判断するのは事務所側です」
――事務所の連携とは図っていますか。
飛鳥井氏「連携はしていません。非常に厳しく区別しております」
――再発の「定義」を聞きたい。亡くなっている以上、再発はないのではないか。
林氏「個々の性暴力にとどまるものではありません。行為者がジャニー喜多川氏でなくても、性暴力が事務所内で起きないことを提言します。また、組織の問題点があるならば、それがないようにする提言もします」
飛鳥井氏「強い立場を利用して立場の弱い者に性暴力を行うことが問題。ガバナンスの改善で防ぐことを提案していきます」
――捜査機関に協力を得ることはありますか。
林氏「刑事手続きに我々が関与することはありません」
――チームは何人で構成されますか。
林氏「チームは私たち2人ともう1人で3人のみですが、増やす可能性はあります」
――事実認定ですが、被害者の証言だけで「認定」は難しいのでは。
林氏「法的責任を追及するチームではなく、性暴力の案件が起きたことを前提として、ガバナンスの問題点を検証するのが役割です。通常の法的責任を追及する状況では、事実認定ができなかったになるかもしれない。『これは確からしい』となれば、認定していきます」
――週刊文春との裁判で事実認定があった後も、ジャニー氏は少年たちは自宅に泊めていたという報道もありますが。
林氏「まさにそのようなことなど、事務所の対応、幹部の対応も検証していきたいと思っています」
――「刑事手続きに関与する必要はない」とのことですが、このような組織的な犯罪を見過ごしてきた責任は、元検事総長の立場としてあるのではないでしょうか。
林氏「ご指摘は承ります。ただ、今回、私は、いち弁護士として私的な立場で取り組んでおります」