堀潤氏がスーダンで知った意外な事実 学生が好きな日本のお笑い芸人、ごみ収集車に『キャプテン翼』

元NHKアナウンサーで、現在はキャスターやジャーナリストとして活躍する堀潤氏が内戦で揺れるアフリカ北東部のスーダンを取材し、撮影した写真を展示する企画展を11日まで、東京・恵比寿の「弘重ギャラリー」と両国「PICTORICO SHOP&GALLERY」で同時開催している。堀氏が取材に応じ、スーダンで見たことや日本人に伝えたい思いを明かした。また現地の意外な一面も紹介してくれた。

スーダンを取材した写真展の話をする堀潤氏
スーダンを取材した写真展の話をする堀潤氏

写真展を恵比寿「弘重ギャラリー」と両国「PICTORICO SHOP&GALLERY」で開催

 元NHKアナウンサーで、現在はキャスターやジャーナリストとして活躍する堀潤氏が内戦で揺れるアフリカ北東部のスーダンを取材し、撮影した写真を展示する企画展を11日まで、東京・恵比寿の「弘重ギャラリー」と両国「PICTORICO SHOP&GALLERY」で同時開催している。堀氏が取材に応じ、スーダンで見たことや日本人に伝えたい思いを明かした。また現地の意外な一面も紹介してくれた。(取材・文=中野由喜)

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「取材に行ったのは2019年から20年にかけてでした。取材に行ったのは悲惨な状態を伝えてほしいという地元で支援活動をする方たちの声があったからです。僕が行く前のスーダンは独裁的な政権に対し、市民が革命を起こそうとして治安部隊に制圧され600人ぐらいの遺体がナイル川に放り込まれる凄惨な状態でした。当時はリモートで取材をしていましたが、その後、独裁政権が倒れ、これから国がどう造られるかを取材しようと現地に入ったんです。ただ紛争はまだ各地で続いている状態でした」

 現場に入り最も驚いたのは市民の言葉だった。

「取材は首都ハルツームや南コルドファンなど紛争が続く地域に行き、ここまで犠牲を払ってもなぜ民主主義が必要なのかと市民に聞いて回ることでした。そこで聞いた言葉に感銘を受けました。それは市民の『責任をしっかり果たしたい』という言葉。自由や権利が欲しいと言うのを予想していたので驚きました。今まで自分たちの国なのに自分たちの手で作る責任を手に入れられなかった、ということがいかに自尊心を傷つけてきたか、責任さえ負えないのか、という思いを感じました」

 現地ではビジネスを始めようとする人、教師や人道支援に携わる人と出会った。だが、今も国軍と独裁的政権下で作られた準軍事組織RSFの主導権争いが発生するなど犠牲者は絶えない状態。

「連絡を取り合っていた人ともう連絡が取れなくなっています。子どもが生まれたばかりの家族も過酷な生活を強いられています」

スーダンの子どもたちに囲まれる堀潤氏
スーダンの子どもたちに囲まれる堀潤氏

 あらためて堀氏が日本に伝えたいこと、写真に込めた思いを尋ねた。

「つながっていることを分かってほしいです。たとえばウクライナと戦争するロシアが制裁を受けてもなぜ戦争を継続できるのか。元をたどると実はスーダンが関係しています。今、RSFと国軍が戦闘状態にありますが、RSFが力を維持しているのは違法に採掘する金があるから。その金をロシアに売り、ロシアは自国の貨幣価値が下落する中、入手した金でビジネスを支えています。スーダンで起こっていることはロシアの資金源に関係しているんです」

 スーダンの意外な一面も紹介してくれた。

「スーダンは、日本が支援してきた国の一つであることから日本人に対しての造詣が深く、首都ハルツームの大学には日本語学科もあります。日本のお笑いが好きな日本語を話せる学生もいて、『和牛と東京03が好き』と話していました。YouTubeで見ているそうで『和牛のシュールな笑いが好き』だそうです。まさかスーダンで和牛とは思わなかったです。あと、日本のゴミの収集の仕組みを見習っているようで、街にはごみ収集車が走っていました。そこで活躍していたのが『キャプテン翼』。ごみ収集車にキャプテン翼の絵がプリントしてあり、子どもたちが率先してゴミを捨てる仕組みを作っていました」

 展示中の写真は激しい戦闘の傷跡を写したものではない。

「そこで生き、家族と一緒に温かく暮らしたいと願う人たちや自然豊かなアフリカの大地の写真です。理由は武装勢力が銃を手に活動している場面はインパクトがありますが、日本人には異世界に見えると思ったからです。ただただ温かな暮らしを求める人たちの現状を伝えたいという思いで撮影しました。今、100万人の人が国内の避難民となり、40万人が国外で避難民に。本来、この人たちが得ようとしていた希望は何だったのかを写真で表現しました。僕の帰国後に起きた紛争で今は失われた景色もあります。子どもだけなくお母さんたちも食べていくために勉強したい、英語を教えてほしいと直談判にくる姿もありました」

 最後に命の危険もある地域に行く思いを聞いた。

「ニュースを伝える立場なのでウソを言ってはいけないし、聞きかじりの伝えたことがどこかの国の意図のあるフェイクニュースかもしれない。最近は信じられない方法で政府を転覆させようとすることが当たり前のように行われています。だから自分で見ないと伝えられないという思いがあるんです。僕は現場で見た、ということをなるべく増やしたいと考えています。さりげなく言ったことが、どこかの国の思惑を背負ったもので、それを無自覚で伝えているかもと思うと、自分で仕入れた内容でなければと出せないという思いになります。『実際はこうです』と言いたいんです」

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