一夜で150万円の値下げも…中古車業者が「扱いにくい」と語るテスラ、読めない価格変動の背景

コロナ禍や半導体不足の影響により、中古車の取引が活発に行われている。高騰のピークは越えたものの、希少車や価値の高い旧車を中心に、価格が高止まりする傾向も見られる。一方で、中古車業者が価格の変動で頭を抱えている車種もある。いったい、何が起こっているのか。

日本でも普及しつつある電気自動車(イメージ)【写真:写真AC】
日本でも普及しつつある電気自動車(イメージ)【写真:写真AC】

定価500万で売っていた車を、突然120万値下げして380万に…

 コロナ禍や半導体不足の影響により、中古車の取引が活発に行われている。高騰のピークは越えたものの、希少車や価値の高い旧車を中心に、価格が高止まりする傾向も見られる。一方で、中古車業者が価格の変動で頭を抱えている車種もある。いったい、何が起こっているのか。

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「今までの歴史上の車のメーカーの中で、何も変わっていない車の価格をこれだけ変えたメーカーってないんですよ。要は定価500万で売っていた車を、いきなり120万値下げして380万にしますとか、今度は何か月後かにやっぱり70万値上げしますとか。中古車販売店としてはもう扱いにくいですよね。正直、“読めない”っていうことがリスクなので。そうすると、そのリスクをヘッジ(回避)した金額で買い取らざるを得なくなる。テスラは、10%前後は車両の本体の価格に変動があるなっていうことを前提に買い取る形になっています」

 国内最大級の自動車フリマサイト「カババ」を運営する株式会社アラカンの田中一榮代表が嘆きの声を上げたのは、米電気自動車大手テスラの販売戦略についてだ。EVが日本でも普及するにつれ、中古車市場でも取引数が増えているが、テスラの価格変動には振り回されているという。

 例えば、「モデル 3」ロングレンジの変動ぶりはすさまじい。2021年2月には655万2000円から、一気に156万2000円値引きされ、499万円となったことが話題となった。その後はじわじわと上昇に転じ、一時は700万円を超えたものの、現在は646万1600円となっている。グラフにすれば、株価の乱高下のような表ができ上がる。

 背景には生産体制の変更や為替の影響などの理由がある。それは他のメーカーも同じだが、「普通のメーカーはそういったことが起こっても、すぐに動かずに、プラスもマイナスもある程度吸収する」という対応を取る。価格の変化も急激なものはなく、車種によって20万~30万ほどの値上げを行ったメーカーがあるくらいだ。

「だけど、テスラはそういった世の中の変動があると、利益を一定にするために値上げもするし、値下げもする。為替だったり、彼らの製造原価が変わったりすると、ダイレクトに価格変更をしていく。しかもそれが何十万円という単位。我々車屋は車を買い取るときに、例えば1年落ちの車だったら、定価の75%ぐらいが妥当ではないかというような判断をします。つまり、定価が1000万だったら750万ぐらいで買い取るのが妥当だなって話していたものが、いきなりテスラが150万値下げして、定価自体が850万になると、買い取り金額を下げなきゃいけない。だけどそれが突然発表されるので、どうしていいか分からないんですよ。昨日まで1000万だったものが、翌日、定価自体が850万になったら、ハァ? みたいな感じになるじゃないすか」。田中さんは困惑気味に話した。

背景にテスラの特殊性 「テスラの販売スタイルだからこそ、できるとも言える」

 テスラの価格変動に対応するため、どうしても買取価格は慎重にならざるを得ないという。業界全体で、“暗黙の了解”もできていると明かす。

「どうなるかというと、ちょっと保守的になってくるんですよね。特に高年式の車になればなるほど、定価との連動が強い。やっぱり新車の定価をベースにある程度値段がついています。中古を検討している方は、新車の価格と比べて、1年落ちだから100万円安いとか、だいたいそんな感じで買うじゃないですか。その根拠が崩れる。そういうことがテスラの場合だけ起こっています」と、続けた。

 なぜ、テスラは思い切った新車の価格の上げ下げができるのだろうか。そこにはテスラならではの特殊な事情があると分析している。

「価格を簡単に上げたり下げたりできるのは、基本的に全部直営なのが大きいですね。スマホで車を売るようなメーカーで、全部自分たちでインターネットで売っているからできるのだと思います。普通、トヨタにしてもBMWにしても、フランチャイジーの別資本の会社に販売代行で売ってもらっているじゃないですか。そうすると、彼らに対していきなり『100万値上げします』なんてやったら、ものすごい反発が出るんですよ。あと現場が混乱するじゃないですか。そんなに大きい金額の変動ができるのも、インターネットで直でやっているメーカーだから。テスラの販売スタイルだからこそ、できるとも言えるんですよ。そこが他社との違いですね」

 同じテスラでも、価格が変動しない中古車もある。

「その車が新車でオーダーすればいつでも買える車なのか、オーダーしても1年待ち2年待ちみたいに届かない車なのか、というのも中古車の相場には影響を与えます。例えばテスラですと、モデルXという一番大きいサイズの車があるんですけども、このモデルXは今、マイナーチェンジのタイミングなので新車でオーダーしても納期が読めないんです。そうすると、どうしても欲しい人は中古で買うしかないじゃないですか。中古車は最終的には需要と供給の関係なので、需要しかない状態だと、金額は高騰しますよね。なので、高年式の車両だと新車の定価とほぼ変わらない金額で流通しています」

 中古車市場の常識も変えるテスラ。車を売りたいと考えている所有者や購入希望者も含め、最新ニュースにアンテナを張る必要がありそうだ。

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