『ゴジラ』『大巨獣ガッパ』『キングコング』…50年以上前から欧州で評価されてきた怪獣映画の歩み
『ゴジラ』(1954年)、『大巨獣ガッパ』(67年)、宇津井健さん主演の『スーパージャイアンツ』(57~59年)シリーズも……。今、東京・市ヶ谷のインスティトゥト・セルバンテス東京で、54~79年に欧州で印刷された日本の娯楽映画と、同時期に日本で公開された欧州の娯楽映画のポスターなどを集めた展覧会「日欧の映画交流の誕生 娯楽映画の黄金時代・日欧映画交流」(今月10日まで)開催されている。現代は、日本のマンガ、アニメが世界を席けんしているが、50年以上前に海を渡った映画作品の数々。同展では、その歴史が紹介されている。
日本在住32年の映画批評家ダニエル・アギラルさんも、少年時代から「夢中」に
『ゴジラ』(1954年)、『大巨獣ガッパ』(67年)、宇津井健さん主演の『スーパージャイアンツ』(57~59年)シリーズも……。今、東京・市ヶ谷のインスティトゥト・セルバンテス東京で、54~79年に欧州で印刷された日本の娯楽映画と、同時期に日本で公開された欧州の娯楽映画のポスターなどを集めた展覧会「日欧の映画交流の誕生 娯楽映画の黄金時代・日欧映画交流」(今月10日まで)開催されている。現代は、日本のマンガ、アニメが世界を席巻しているが、50年以上前に海を渡った映画作品の数々。同展では、その歴史が紹介されている。(取材・文=中山治美)
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同展開会のキュレーターで、1966年にスペイン・マドリードで生まれた映画批評家のダニエル・アギラルさんは、日本の特撮やホラーなどの娯楽映画愛好家で知られる。日本在住歴は32年。幅広い交友関係から映画にも出演しており、『デスカッパ』(2010年、原口智生監督)の田中教授、『シン・ゴジラ』(16年、樋口真司監督)の駐日フランス大使役などで、特撮ファンにも認知されている。
ダニエルさんは幼少時代から映画のポスターやチラシを収集しており、今回展示されている152点のうち9割はダニエルさんの私物。その多くは、映画館から無償でもらったものだという。
「のちに映画評論家になった兄に連れられて映画館によく通っていたのですが、当時の2本立てはホラーとウエスタンとかで組み合わせがめちゃくちゃ。6、7歳の頃には、欧州で『UFOロボグレンダイザー』や『アルプス少女ハイジ』などの日本のアニメや香港のカンフー映画とか極東のものがいっぺんに入ってきました」
その波に乗ってやってきたのが日本の怪獣映画で、ダニエルさんは夢中になったという。
「一番最初に見たのは『大怪獣ガッパ』と『キングコングの逆襲』(67年)。怪獣が模型を破壊するシーンが魅力的だったのでしょう。子ども時代はいろいろ破壊したいけど、実際はできないから、それで破壊願望を満たしていたのかも知れません。以降はスペイン版『ぴあ』のような情報誌で怪獣映画を上映している映画館を探しては見に行って、映画館のおじさんに『ポスターをちょうだい』とおねだりしてました」
“戦利品”はポスターのみならず、『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(66年)のロビーカード(劇場ロビーなどに掲示していたスチール写真)から石原裕次郎さんが主演した『勝利者』(57年)のチラシ、さらには日英合作の大作映画として東宝で企画されるも、制作中止となった『ネッシー』(76年)のポスターなどファン垂ぜんのものばかり。さらによく見ると、『宇宙からのメッセージ』(78年)を手掛けた深作欣二監督のローマ字表記が「KINJI KUKASAKU」になっていたり、『海底軍艦』(63年)には出演していない植木等さんの名前が表記してあったりと、今となっては“ご愛嬌”なミスがあるのも楽しい。
「植木さんの名前は別の作品の資料を間違えて書いちゃったのでしょうね。『ゴジラ』シリーズの本多猪四郎監督の名前も作品によってローマ字表記がバラバラです。当時はネットもないから、自分でリストを作って調べるしかなかった」
その環境はダニエルさんの研究魂に火をつけ、日本語を独学で習得し、現在の職業につながったという。
同展覧会は今年9月からスペイン・サンセバスチャンでも開催予定。タイトル通り、宣伝素材を通して日欧映画ファンの交流が広がりそうだ。