コロナ明けで激増の中国人留学生が「餃子定食」に違和感 「変です」「日本だけのメニュー」

コロナ禍の落ち着きと政府による入国制限緩和によるインバウンド政策の積極再開によってこれまで本国で待機していた多くの中国人留学生が日本に続々と入国している。都内のある日本語学校によると、この4月からの受け入れ生徒数は昨年度の4倍以上に膨れ上がっているというからいっせいに移動が始まったようだ。

中国人留学生が違和感を覚える日本の「餃子定食」(写真はイメージ)【写真:写真AC】
中国人留学生が違和感を覚える日本の「餃子定食」(写真はイメージ)【写真:写真AC】

ガチ中華が国内で大増殖 本場メニューの中に「餃子定食」は見当たらず

 コロナ禍の落ち着きと政府による入国制限緩和によるインバウンド政策の積極再開によってこれまで本国で待機していた多くの中国人留学生が日本に続々と入国している。都内のある日本語学校によると、この4月からの受け入れ生徒数は昨年度の4倍以上に膨れ上がっているというからいっせいに移動が始まったようだ。

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 ところで、テレビの情報番組では東京・池袋や高田馬場、埼玉・西川口のガチ中華店の紹介が増えており、本場の料理を求めて訪れる中国人留学生の姿を映し出している。メニューには羊肉串、麻辣湯、牛肉麺など何となく想像できるものもあれば夫婦肺片、汽鍋鶏、甜麻肥蛤、鍋包肉響、油膳絲、麻辣小龍蝦など読み方すら判明しない料理もそろっている。

 しかし、ガチ中華店のメニューで共通しているのは『餃子定食』の名が見当たらないこと。実際に池袋北口の雑居ビルに入っているガチ中華フードコート『友誼食府』を訪れてみたが、そのようなメニューは見かけなかった。日本の大学への入学を目指して東京にやってきた中国人留学生がこう話す。「餃子定食というメニューは中国にはありませんので、最初に日本の中華料理店でその名を見たとき“奇怪”だと思いました」。他の留学生も異口同音に「変です」と声を上げた。

 それはなぜなのか。別の留学生がこう解説する。「中国では“餃子”といえば多くは水餃子を指します。中国北部地方の料理である餃子は現地では主食にあたるので、主食の餃子をおかずにして主食のごはんを食べるという日本の食べ方に違和感を覚えるのです」。

 日本で餃子といえばほとんどの人が焼き餃子を想像するだろう。これも中国とは異なる点がある。「中国では焼き餃子は通常、鍋貼(クォーティエ)と呼んでいます。余った水餃子を焼いて食べたことが由来らしいですが、そもそも余り物を食べるということですのであまり縁起が良くないですね。ちなみに諸説ありますが、中国語の餃子(ジャオズ)の発音は交子(ジャオズ)と同じですから新年を迎えるときに食べる縁起もの、といったような意味があるそうです」(日本語学校講師)。

 中国の料理サイト『楽做菜』を見ると、焼き餃子は『日式鍋貼』という日本オリジナルメニューとして紹介されており、「日本における餃子の人気は、米国におけるKFC、マクドナルド、韓国式バーベキュー、インドのカレーライスの人気をはるかに上回っています。日本人と一緒に中華料理を食べに行くと、餃子、チャーハン、麻婆豆腐が一番注文されます。最初は理解するのが難しかったのですが、これら3つが日本人の日常生活に溶け込み文化の一部となっていることが徐々に分かりました」と説明。材料として餃子の皮、生エビのみじん切り、豚ひき肉、黒きくらげ、しいたけ、もやし、卵1個を挙げている。

池袋のガチ中華店の実際の写真【写真:ENCOUNT編集部】
池袋のガチ中華店の実際の写真【写真:ENCOUNT編集部】

 そのような焼き餃子を地域振興策として積極的にPRしている代表的な街が栃木県宇都宮市だ。『宇都宮市公式WEBサイト』にはこう記されている

「宇都宮が餃子のまちとなったのは、市内に駐屯していた第14師団が中国に出兵したことで餃子を知り、帰郷後広まったことがきっかけです。また、宇都宮は夏暑く冬寒い内陸型気候のため、スタミナをつけるために餃子人気が高まったとも言われています。その後、1993年には、市内餃子専門店など38店舗により宇都宮餃子会が発足。現在は約90店舗が加盟しています」

 昭和初期に宇都宮地域の日本軍が、旧満州(現在の中国東北地方周辺)に向かった。当時の旧満州は日本の関東軍が実権を握っており、第二次世界大戦終戦後に旧満州から帰還した日本人が餃子を再現したことが背景にあるという(日本餃子協会HPより)。実際に同市内には『満州屋』と言う名の餃子専門店がある。日本の餃子人気は日本軍による満州占領という歴史的経緯が背景にあったようだ。

 では、留学生は『餃子定食』を一切食べないのか? 日本に住んでいる元留学生は「最初は抵抗がありましたが、日本人の友達と一緒に行くときは食べるようにしています。私も『餃子定食』にだんだん慣れてきたようです」。日本の焼き餃子は皮が薄くパリッと焼きあがっているため意外にごはんに合っている。日本で独自の進化を遂げた餃子はラーメン、焼肉と並ぶ日本の代表的国民食として定着している。

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