横浜F・マリノスeスポーツがロケットリーグ参入 ユニフォームは「重みを感じる」、あふれる“日産車愛”も

横浜F・マリノスeスポーツは4月24日、Shadowverse、eFootballに続く第三のeスポーツ競技種目として、ジャンプやロケット飛行ができる特殊な車を操作してサッカーを行うゲーム『ロケットリーグ』への参戦を発表した。Jリーグ強豪クラブと“車×サッカー”が交わった経緯や、選手たちが持つF・マリノスへの思いは、どのようなものなのか。F・マリノスに加わったamatel、Mao、Arrowの3選手に聞いた。

横浜F・マリノスeスポーツに加入した(左から)Mao、amatel、Arrow【写真:ENCOUNT編集部】
横浜F・マリノスeスポーツに加入した(左から)Mao、amatel、Arrow【写真:ENCOUNT編集部】

横浜F・マリノスeスポーツに加入したamatel、Mao、Arrowにインタビュー

 横浜F・マリノスeスポーツは4月24日、Shadowverse、eFootballに続く第三のeスポーツ競技種目として、ジャンプやロケット飛行ができる特殊な車を操作してサッカーを行うゲーム『ロケットリーグ』への参戦を発表した。Jリーグ強豪クラブと“車×サッカー”が交わった経緯や、選手たちが持つF・マリノスへの思いは、どのようなものなのか。F・マリノスに加わったamatel、Mao、Arrowの3選手に聞いた。(取材・文=片村光博)

 F・マリノスのロケットリーグ参入は、クラブのファン・サポーターを中心に大きな反響を呼んだ。選手加入のきっかけは、同じくJリーグクラブの東京ヴェルディがロケットリーグに参戦しており、「ほかのJリーグクラブからも興味を持ってもらえるんじゃないか」(Arrow)と考えてコンタクトを取ったことだという。

「eスポーツチームに自分たちからアプローチしてプロ化することを目指していましたが、普通のeスポーツチームでは、チームに入ったところで話題が終わってしまうとも感じていたんです。日本国内ではまだ、ロケットリーグが大きな話題になることは少ないですよね。そんななかでも多くの人に興味を持ってもらうために、ヴェルディさんでの例を参考にしつつ、さまざまなことを考えてF・マリノスにコンタクトを取ってみようとなったんです」(amatel)

 問い合わせ先を調べるところからのスタートだったが、もともと“車×サッカー”に興味を持っていたクラブ側と意図が合致し、資料の送付、ミーティングを経て参入まで話が進んだ。その後、amatel、Arrowに加え、当初は別チームに所属していたMaoも参加し、参入決定のリリースに至っている。

リーダーを務めるamatel【写真:ENCOUNT編集部】
リーダーを務めるamatel【写真:ENCOUNT編集部】

 リリースでは、“クラブ愛”を感じさせるコメントも話題となった。実は3人ともサッカー経験者で、Maoに関しては地元が日産スタジアムのお膝元・小机だ。「トリコロールはいつも生活の中にありました」(Mao)。そんな3人は口を揃えて、伝統あるユニフォームに袖を通すことへの決意に言及した。

「横浜F・マリノスという名前の大きさは、すごく実感しています。格式と伝統のあるチームクラブと理解しているからこそ、その一員として多くの人に知ってもらう、見てもらうために、まずは僕たちからクラブに対する気持ちを持つことが大事だと思い、クラブに関するさまざまなことを調べました。初めて着るユニフォームがF・マリノスというのは重みを感じますが、それも背負ってやっていこうと思っています」(amatel)

「まずは自分たちがF・マリノスを知り、ファン・サポーターに寄り添うことが大事だと思っていますし、そのための活動もどんどんやっていきたいです。サッカー経験者としてF・マリノスのユニフォームを着られることは本当にうれしいですが、今はまだ“着ているだけ”。そこに重みを持たせるのが自分たちだと思っていますし、今後に期待してほしいです」(Arrow)

「いつも生活の中にあったトリコロールのユニフォームに袖を通して、すごく感動しましたし、『その一員になるんだな』というのが最初の感想でした。ただ、まだ何もできていないのが現状です。ユニフォームの重みに見合う結果をちゃんと出さないといけないんだという気持ちが、より強くなっています」(Mao)

 そんな彼らの戦いの場であるロケットリーグとは、どのようなゲームなのか。その魅力は「テクニカルな動きをスピーディーな展開の中で繰り広げて攻防していくところ」(amatel)「プロの試合でも初心者の試合でも、熱さは同じ」(Mao)とさまざまだが、Arrowはサッカーにも共通する“原点”を強調した。

「フィールドが狭いので、誰でも得点を取れるのがロケットリーグです。ポジションは決まってないので、全員がストライカーになれて、ゴールキーパーにもなれる。自由に車を動かして、たくさんボールを追いかけることが楽しいと思います。

 初心者の方がスポーツをやると、だいたいみんなボールを追いかけますよね。でも、ロケットリーグはそれでいいんです。最初は気ままにボールを追いかけた方が、絶対面白い。サッカーで言ったら、初心者の小学生が集まるとだいたい“お団子サッカー”ですよね(笑)。ロケットリーグでも初心者は“お団子”になりますが、それも楽しめるといいですね」

Maoは「最初は“お団子状態”でも楽しい」とロケットリーグを紹介【写真:ENCOUNT編集部】
Maoは「最初は“お団子状態”でも楽しい」とロケットリーグを紹介【写真:ENCOUNT編集部】

ロケットリーグ観戦初心者が押さえるべき3つのポイント

 実際にプロの競技シーンを観戦して楽しむ場合には、どのようなポイントを押さえればいいのか。3人にそれぞれ挙げてもらったのが、『ブースト』『壁と天井のあるフィールド』『バンプ(体当たり)』だ。それぞれ解説してもらった。

『ブースト』は、「車体を速く動かすための動力源のようなもの」(amatel)で、空中を飛ぶことも含め、さまざまな技を繰り出せる。amatelは「選手はブーストアイテムを取りながら動いていますが、逆にブーストのない選手がすごいセーブをしたり、得点を決めたりすることもある。(ブーストがなくて)動きが制限されてもそういうことができるというのも、見てほしいポイントになりますね」と説明する。

 フィールドに壁と天井があることも、普通のサッカーとの大きな違いだ。「上に出した球が跳ね返ってきますし、ラインを割るということがない。跳ね返りも利用してプレイをつなげていきます」(Mao)。

 そして『バンプ』は、相手の車に体当りすること。トップスピードで激突すると相手の車を破壊することができ、破壊された車は復活までに3秒のクールタイムが発生する。「相手のゴールキーパーをバンプで妨害して、オープンゴールを決めるということもできますし、逆にシュートを打とうとしている車をバンプで破壊することもできます」(amatel)。この戦略性も、ロケットリーグ観戦では外せないポイントだ。

 一方で、ロケットリーグをこれから始めたいという初心者には、「最初は“お団子状態”でも楽しいですし、特別に何かが必要ということはないと思います」(Mao)とアドバイスを送る。さらに、Arrowは競技シーンの観戦を必ずしも自身の楽しみ方につなげる必要はないと続けた。

「観戦してから始める人と、ロケットリーグを全く知らずに始める人とだと、ちょっと入り方が違うと思うんです。最初は絶対に“馬鹿ゲー”としてやった方が楽しい。でも、競技シーンを知っている人からすると、『こういうことができるんだ』という知識がある状態なので、逆に考えすぎて難しくなってしまうとも聞きます。だから、自分がプレイするときは競技シーンで見たことは1回忘れて、『飛べちゃうんだ!』って驚いたり、ゲームの楽しさを見失わないようにしてほしいです」

チームの“点取り屋”Arrow【写真:ENCOUNT編集部】
チームの“点取り屋”Arrow【写真:ENCOUNT編集部】

ここから佳境に入る競技シーン 毎日の練習は深夜2時に及ぶことも

 3人が臨む競技シーンは、世界につながっていく大会『ロケットリーグ・チャンピオンシップシリーズ(通称:RLCS)』だ。所属はAPAC(アジア太平洋)地域で、フォール、ウィンター、スプリングの3つからなるシーズンのうち、現在は最後のスプリットであるスプリングを戦っている。そのレギュレーションをamatelに説明してもらった。

「最初はスプリングオープン、次がスプリングカップ、最後がスプリングインビテーショナルと分かれています。最初のオープンとカップは予選とメインイベント(本戦)に分かれていて、メインイベントに出場すると、その最終順位に応じてRLCSポイントというものがチームに付与されます。インビテーショナルは、オープンとカップの累計ポイント上位16チームだけが招待され、そこでのポイントも合わせた累計ポイントのAPAC上位1チームが、世界大会であるメジャーに出場できます。メジャーは出場しただけでもRLCSポイントがもらえて、そこまでが1つのスプリットです。

 そして、3つのスプリット、つまりシーズンを通して地域での累計ポイント上位2チームによってファイナルが行われます。ファイナルはリーグ戦から始まり、シングルエリミネーション(1回負けると敗退)のトーナメント形式で行われていくことになります。僕たちはまず、予選を勝ち抜いてメインイベントに出場し、高い順位になってメジャーに出場できるようにすることが目標です。ベスト8に常にキープすること、そしてトップ4以上のチームまで上り詰めていくことを目指して、そのために毎日練習しています」

 毎日の練習は、基本的に日中は各自で練習し、夜9時からチーム練習を始め、スクリム(練習試合)を2つこなすのが日課。2試合終えた11時からは反省会だ。大会直前には3つ目のスクリムが入ることもあり、遅ければ練習は深夜2時まで及ぶこともあるという。その中で重視するのは、多様な戦術を使い分けるためのコミュニケーションだと選手たちは口をそろえる。

「ロケットリーグは相手によって戦術を変えることも必要で、同じ戦術でずっと勝てるということはありません。スクリムは練習の場なので、基本的に自分たちがどういう動きをしていたかなど、(プレイの)タイミングをすごく詰めているんです。だからこそ、コミュニケーションを取る必要があります」(Arrow)

 全員がすべての役割をこなすロケットリーグだが、F・マリノスの3人はそれぞれが特徴的なプレイスタイルを持つ。キャプテンのamatelは、ゴールキーパー出身ということもあり、チームの穴を埋める守備や、全体のことを考えての意見を出すことを得意としているという。

「僕はチームに足りていないところを補うことを得意としていて、例えば一戦目で負けてしまった場合は、足りないと思ったことを結構言っています。プレイスタイルとしては守備が得意というのもありますが、2人がゴールを見られていなかったり、隙があったりするタイミングで守備に入ったりとかすることが多い。エピックセーブと呼ばれる、いわゆる“すごいセーブ”をすることが多いですね。イレギュラーの多いゲームなので、そのときの対応は得意としていますし、見てほしいところです」(amatel)

 そして「得意なポジションとかはないんですけど、結果で言うと俺も一番決めてます(笑)」と話すArrowは、“点取り屋”として動きに長けている。

「得意なプレーで言うと、シュートを打つときにちゃんと相手を見て、壁を利用したりして、壁から跳ね返ったボールを直接シュートしたりということを、相手の位置によって選択できることですね。個人技も必要な部分かなと思います」(Arrow)

 Maoはamatelによると「すごく異質なプレイヤー」。こぼれ球への反応や、拾ってからのアクションの素早さが優れている。その特徴は、サッカー経験にも通じるところがあるようだ。

「こぼれ球に関して自分の中に確固たる感覚があるわけではなく、その時々に“そう思ったから”と動くとこぼれ球に反応できるんです。異質な選手というのは確かにその通りで、結構ピーキーな選手だと思います。無理やり押し込むようなプレーが、すごく好きなんです。サッカーをやっていたときも1トップでしたし、性格的に好きなんでしょうね」(Mao)

 では、それぞれの特徴をF・マリノスの歴代選手で例えると誰になるのか。テクニシャンのArrowは「ちょっとおこがましいかもしれませんが」とためらいつつも、「(中村)俊輔選手。精度を武器にしていますし、利き足も左ですから」と伝説的レフティーを挙げ、amatelは「セーブが得意ということもあり、川口能活選手でしょうか。自分がゴールキーパーをやっていたこともあり、現役時代はよく見ていました」と、やはりレジェンドの名前を挙げていた。

 その中でMaoは「自分に似ているなと思う選手となると思い浮かばないんですが……」としながら、「縦にスピードのある動きをする選手には憧れがありますし、すごくカッコいい」と宮市亮を指名。amatelからは「Mao選手のプレイスタイルだと、西村拓真選手かな? 相手にとって危ないところに入り込んでいきますからね」と提案されていた。

横浜F・マリノスの一員として結果にこだわる【写真:ENCOUNT編集部】
横浜F・マリノスの一員として結果にこだわる【写真:ENCOUNT編集部】

実際に乗りたい車は? 人気はやはり日産車

 ロケットリーグには数多くの車が実装されているが、F・マリノスの選手になったからには、日産車の話題は避けて通れない。amatelは「僕たちも“サッカー+車”ということは常々意識しています」と語り、「『日産車があるから使ってみたい』と思ってくれる人がいると、僕たちとしてはすごくうれしいです。入り口としてすごく大きいですよね」と続けた。

 ゲーム内ではGT-R R34とフェアレディZが実装済み。特にGT-Rは今でも人気があるとのことで、amatelも「GT-Rのテールランプがすごく好き」だという。では、ゲーム内の車で欲しいと思う車はあるのか。“忖度なし”の回答を求めたところ、Maoは真っ先に「やっぱりGT-R R34は欲しいです」と思いを明かしている。

「今は中古車価格もすごいことになっていますよね。学生のときに無理してでも買っておけばよかったなと思っています。当時は今の5分の1くらいの価格でしたから……。好きなポイントはやっぱりフォルム。誰から見ても、いかにもスポーツカーという形をしていますし、テールランプも唯一のものですし、そういうところに惹かれます」

 先立って“テールランプ愛”を語っていたamatelも「レースゲームでGT-Rがあれば使うくらい好きです」と続き、「テールランプが本当に好きなんです。ロケットリーグもそうですし、レースゲームでも暗いステージがありますよね。そこに光るあの赤色のテールランプがすごく好きなので、やっぱりGT-Rですね」とした。

 一方でArrowは、ほぼゲームオリジナルの車のみを使用しており、その紹介をしてくれた。「使っているのはOctaneという車と、Fennecという車です。特に最近はOctaneですね。最初のチュートリアルで誰でも使う車で、乗り慣れている相棒です」。Arrowの技に憧れ、真似したくなったら、“形から入る”ことは誰でも可能ということでもある。

 最後に、F・マリノスの選手として注目されるシーズンだからこそ挑戦したいことを聞いた。

「第一に、どんどん良い結果を出していけるようにしたいです。ただ、マルチに活動していきたいとも思っています。ロケットリーグを多くの人に知ってもらいたいという気持ちもありますし、APACの競技シーンはほとんどみんな知り合いのようになっていて、新しい風があまり吹いていないという現状もあります。高校生の大会などから、新しい世代がどんどん上に上がってきて、一緒に戦ってしのぎを削って世界に挑戦していきたいという思いが強いです。そのためにも、僕たちの姿を見て憧れを持っていただくことが大事だと思いますし、それに値するだけのユニフォームだとも思います。僕らがロケットリーグの面白さを伝えられるように入り口を広げつつ、実力も上げていくことで、ロケットリーグを広めていきたいなと思っています」(amatel)

「私もまずは結果です。そして、せっかくJリーグクラブの一員として活動できるので、まずはF・マリノスのファン・サポーターに競技の魅力を発信していきたいですね。今日も初めてロケットリーグを見る人の話が出ていましたが、サッカーのファン・サポーターが試合を見終わったあと、『あ、じゃあロケットリーグはどうなったのかな』とチェックしてくれるくらいに、F・マリノスの中でロケットリーグの存在を大きくしていきたい。ツイッターでもF・マリノスサポーターの方からの反響を肌で感じたので、うまく発信しながらやっていきたいですね」(Mao)

「まずは結果、これが一番大事です。その上で、初心者の人たちがどれだけ増えてくれるかがロケットリーグにとって大事だとも思います。なので、初心者が交流できる場を用意するという形で、ロケットリーグに貢献したいなと。すでに個人配信ではプランを言っているので、これからスタートしたいと思います」(Arrow)

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