ノアのGHCヘビー級王者と市川猿之助の意外な“縁” 4年前にスーパー歌舞伎観劇「すごく勉強になった」
世間を揺るがす、スーパー歌舞伎の立役者・市川猿之助の「救急搬送騒動」。プロレス界にも行方を案じている男がいる。ノアのGHCヘビー級王座を腰に巻くGLG(グッド・ルッキング・ガイズ)の首領ジェイク・リーである。
毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.147】
世間を揺るがす、スーパー歌舞伎の立役者・市川猿之助の「救急搬送騒動」。プロレス界にも行方を案じている男がいる。ノアのGHCヘビー級王座を腰に巻くGLG(グッド・ルッキング・ガイズ)の首領ジェイク・リーである。
プロレスには強さ、凄さに加えて人間力が大切とあって、ジェイクは様々な自分磨きに取り組んでいる。
いろいろなものに興味を持ち、さまざまなものを吸収したいと4年前の秋には東京・新橋演舞場でスーパー歌舞伎Ⅱ「オグリ」を観劇していた。主演はもちろん猿之助。伝統芸能の古典的な様式美に宙吊りや電飾、映像効果、巨大水槽など今風の要素もプラスされたド迫力の舞台に、大いに刺激を受けていた。
中高年のマダムたちが目立つ会場でも、長身、イケメンのジェイクは注目を集めた。「あの方、どなた?」と、コッソリ聞かれ「全日本プロレス(当時)のジェイク・リー選手です」とお伝えすると「あらまあ、プロレスラー? あんな二枚目がいるのですね」と驚いた様子だった。
観劇を終えたジェイクは「スーパー歌舞伎は初めて。古典芸能に新しい要素も取り入れていて、温故知新で素晴らしい。お客様を楽しませるというエンターテインメント、すごく参考になった。発信力が問われる時代ですから、強さだけでもダメ、口だけでもダメ、総合力、創造力が必要とされている。そういう点からもすごく勉強になった」と大満足の様子だった。
当初は歌舞伎界から猛反発されたというスーパー歌舞伎にも「新しいことを始めるのは大変なこと。応援だけではなく、反対や批判もたくさんあったはず。けど、それを乗り越えてこんな素晴らしい舞台になったのだから、ドラマチックで感動的」と、後の自身のレスラー人生を予告するかの様な言葉を残していた。
今年から全日本プロレスを卒業し、ノアに戦場を移したジェイク。GHC王座を清宮海斗から奪取し、中嶋勝彦、丸藤正道の挑戦を退け、V3戦(6月17日、愛知・名古屋国際会議場イベントホール)で杉浦貴を迎え撃つ。
「あんたとやりたいんだ」と王者から指名したが「タフで力強い相手に困らないとは、このこと。杉浦への想いが、もう我慢できない」と挑戦者を高く評価している。
杉浦は全日本プロレスに入門したが、2000年12月、ノアでデビュー。いわばノア生え抜き1期生といっていい。GHCヘビー級王座にも4度、君臨しておりノアを支えてきた。「アイアム・ノア」が誰よりもふさわしいかも知れない。
帰化申請も大詰め「うまくいくことを祈って、できることをガンガンやっている」
今のノアを象徴する清宮からベルトを奪い、中嶋、丸藤とノアの屋台骨を背負ってきた強者たちを蹴散らし、今度は杉浦もとなれば「ノアの舵取り役」を自称するジェイクの勢いはいよいよ止まらない。
夢である海外進出を見据えた帰化申請も大詰めを迎えている。「結果が出るまで時間はかかるけど、うまくいくことを祈って、できることをガンガンやっている」と前向きそのもの。
今できることに全力で取り組む。思えば、スーパー歌舞伎の観劇もその一つだった。ここまでの道のりや関わった人たちの努力にも思いを馳せ。気配り、配慮のできるジェイク。自己プロデュースにも励んでいる。リングコスチューム、入場テーマ曲、試合はもちろんのこと、オフザリングでも積極的な情報発信を心掛けている。
ファイトには人間力も醸し出される。リング上も下も、自分磨きを心掛けるジェイク・リーの魅力は日に日に深まっている。
スーパー歌舞伎を観劇したときは花道すぐの席だった。上演中、花道の左右を見渡しながら集団で飛び六方で下がる場面があった。若手歌舞伎役者の一人がジェイクに気が付いたのか「あッ!」という顔をした。プロレスファンなのだろう。すぐに役に戻ったが一瞬、視線がジェイクを捉えていた。
猿之助一門と思われる彼は今でもプロレスファンなのだろうか。今は大変な時だが「オレに気付いてくれた歌舞伎役者さん。オレも頑張っている。だからあなたも頑張って」と伝えたいところだろう。
応援されるだけではなく応援したい。ジェイクの気持ちが届くよう願ってやまない。