ハリポタ名優に直撃…監督挑戦の真相とは
ソ連の“史上最高のバレエダンサー”を描くエンターテイメント
――主役の俳優オレグ・イヴェンコ、脇を固めるセルゲイ・ポルーニンは成功したバレエダンサーですね。
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「セルゲイがワールドクラスのダンサーであることは間違いありません。もともと主演のヌレエフ候補でしたが、映画的な演技はオレグの方が長けていました。彼が演じたユーリ・ソロヴィヨフは61年のパリ公演で踊り、技術的には当時のヌレエフより上だったかもしれません。セルゲイはリハーサルの時でも素晴らしいダンスを見せてくれて、オレグへのアドバイスをたくさんしてくれました。一方、オレグは映画での演技は初めてにもかかわらず、すぐに反応し、理解できる才能がありました。映画の現場は、12時間ずっと待ち続けても、いつでも準備ができていないといけません。ドラマチックなシーンもあって、何度も演じることができなければいけないのです。だから、経験のある役者はテンションをキープし、上に持っていくのだけども、オレグは感覚的にそれを掴むことができました。特に空港シーンはすごく難しかったはずです。秒刻みでテンションが上がっていくシーンなので、最初に全部出してしまうと、何度も繰り返すことができません。もちろん僕が方向性は示しましたが、オレグは見事に演じてくれました。それには、ダンサーとしての鍛錬があったのかもしれません」
――あなた自身はヌレエフのコーチ、プーシキンをなんとロシア語で演じていますね。
「もともと魅力的なキャラクターだとは思っていましたが、最初は演じるつもりはなかったんです。自分が監督する映画で、出演するのは大変と分かっていたから。ただ、この映画の出資が難航していました。ロシアからの出資を募った時に、『国際的な知名度が一人もいない。なぜ、あなたは出ていないのだ』と言われ、だったら、と思ったのです。ただ、結果的にロシアからの出資は実現しなかったのですが……。ロシア語は少し話せるけども、母国語ではない言語で演技をするのは大変です。英語なら、思考プロセスは直結しています。しかし、ロシア語では深いところでの感情の繋がりがないまま、セリフにしなければいけません。現場の通訳、スタッフ、ロシアの俳優たちの助けを借りました」
――プーシキンも実在の人物です。実在の人物を演じる上で気をつけていることは?
「今のようなメディア時代では、いろんな記録映像や音声が残っているかどうかで難しさは変わってきます。記録映像が多ければ、演じる上で役に立ちます。プーシキンはユーチューブを検索すると、60年代の映像が出てきます。彼を知っている方もまだ存命なので、肉体や喋り方について、お話をいただき、リサーチしました。逆にフィクションのキャラクター、例えば、『ハリー・ポッター』のヴォルデモートは原作の描写自体があまり細かく書かれていないだけに、監督以下スタッフ全員がヴォルデモート像を映画的に作り上げる作業が必要になります」
――監督は3本目ですが、腕を上げたと思いました。若い女性も飽きずに見られるようなエンターテイメントになっています。そこは意識していますか?
「すごく嬉しいですね。最初から、そういう作品にしたいと思っていましたから。皆さんはスターになったヌレエフをご存知でしょう。でも、その姿を描くことには興味がなかったんです。僕らは青年時代に焦点を当てたかった。この映画は伝記ではなく、成長の物語なのです。それには、ほとんど造詣がないバレエ界について勉強しなければいけませんでした。特にソ連時代のバレエ界です。いかに事実に即した形で、正確に描けるかにこだわりました。なにしろ、ロシア人、ロシア文化との出会いは僕の人生を豊かにしてくれましたから。ロシアの方も納得するものにしたいと思いました」