飲食業界に“子連れ歓迎”の波? 「味集中」がコンセプトの一蘭、“お子様5人無料”の事業戦略
先月18日、スープ専門店「スープストックトーキョー」が離乳食無料サービスの全店拡大を発表。子育て世代から称賛の声が上がった一方、一部から「一人客が利用しづらくなる」「騒がしくなるならもう行かない」などの声が噴出、物議を呼んだ。子育て世代を応援するサービスに注目が高まるなか、とんこつラーメン専門店「一蘭」が全店で実施する「お子様ラーメン」の無料サービスも話題を呼んでいる。「味集中カウンター」など独自のシステムを導入する一蘭に、同店のコンセプトとお子様ラーメンサービス導入の経緯を聞いた。
スープストックが離乳食無料サービスを発表、一部で「一人客が利用しづらくなる」と物議に
先月18日、スープ専門店「スープストックトーキョー」が離乳食無料サービスの全店拡大を発表。子育て世代から称賛の声が上がった一方、一部から「一人客が利用しづらくなる」「騒がしくなるならもう行かない」などの声が噴出、物議を呼んだ。子育て世代を応援するサービスに注目が高まるなか、とんこつラーメン専門店「一蘭」が全店で実施する「お子様ラーメン」の無料サービスも話題を呼んでいる。「味集中カウンター」など独自のシステムを導入する一蘭に、同店のコンセプトとお子様ラーメンサービス導入の経緯を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
1960年に福岡で創業し、国内外に85店舗の直営店を展開する一蘭。特徴はカウンター席を一席ずつ仕切りで区切った店の造りとオーダー用紙による注文システムだ。周囲を気にせず、店員と一切会話をすることなくラーメンの味に集中できることから「味集中システム」と呼ばれ、特許も取得している。
「1993年に出店した那の川店から正面を区切るのれんをつけたのが味集中カウンターの原型です。その後、97年に出店した博多店ではじめて、隣席を区切る仕切りが導入され、徐々に現在の形になりました。お客様からの要望というより、代表の吉冨が自ら考案したもので、街頭アンケートで人目を気にせずラーメンを食べたいという女性の方の声なども参考にしました。エンターテインメント性を感じられると海外の方からも好評で、味への評価も相まって口コミやリピートを多くいただいております」
外国人からの人気の理由のひとつは、徹底的に臭みを取り除いた豚骨スープ。豚骨に不慣れな外国人や小さな子どもからもクセがなく食べやすいと好評だという。家族連れでにぎわう一部の店舗で、12年から導入されたのが「麺バー限定! お子様ラーメン」サービスだ。公式アプリの会員限定で、会員1人につき小学生未満の子ども5人まで半量のお子様ラーメンが無料で食べられるというサービスで、18年には全店で導入。コロナ禍の20年3月には対象を小学生以下まで拡大した。それまで、味集中カウンターなど主に一人客をターゲットとした事業戦略を展開してきたなか、なぜファミリー層向けのサービスを開始したのだろうか。
「弊社の理念は、すべてのお客様においしいラーメンを最高の状態で味わっていただきたいということに尽きます。お子様連れのお客様はラーメンを取り分けることが前提で、お子様に合わせた味にしたり、取り分けている間にラーメンが伸びてしまったりということがありました。お子様も保護者の方も、それぞれが好みの味で、最高の状態でラーメンを召し上がっていただきたいという思いからこのサービスを始めました。店舗は都心部と郊外の両方に出店しており、お子様連れが多い店舗もあれば大人の方だけでのご来店が多い店舗もあるなど、お客様層が店舗によってある程度分かれている傾向はございます。もともとなるべくお静かにラーメンに集中してほしいというコンセプトのお店ですが、導入から10年以上がたった今もクレームの声がほとんど寄せられておりません」
コロナ禍では、一蘭が以前から導入していた一席ごとのカウンターの仕切り、オーダー用紙による注文システムなどが感染症対策としても有効だと大きな注目を集めた。「まさかこういった形で注目を浴びることになるとは思っておりませんでしたが、コロナ禍でも行きやすいというお客様の声も多く、飲食店業界の中では比較的影響は小さかったかと思います」。常に時代の一歩先を行く一蘭の画期的サービス。子育て世代を歓迎する飲食業界の流れは今後も続いていくか。