Sareeeと3度目一騎打ち、橋本千紘が激白「“強さ”がなければ“闘い”もできない」

きたる16日、東京・新宿にある新宿FACEで「Sareee-ISM」が開催される。同大会はWWE帰りのメジャーリーガー・Sareeeが、2年ぶりに日本での復帰戦を行うもの。先月25日には、Sareeeの相手はセンダイガールズプロレスリングの橋本千紘に決定した。そこで橋本を直撃し、Sareee戦にかける心境を聞いてみた。

代名詞の“ぎゅん”ポーズを取る橋本千紘
代名詞の“ぎゅん”ポーズを取る橋本千紘

テーマは“闘い”と“強さ”はプロレスに必要か

 きたる16日、東京・新宿にある新宿FACEで「Sareee-ISM」が開催される。同大会はWWE帰りのメジャーリーガー・Sareeeが、2年ぶりに日本での復帰戦を行うもの。先月25日には、Sareeeの相手はセンダイガールズプロレスリングの橋本千紘に決定した。そこで橋本を直撃し、Sareee戦にかける心境を聞いてみた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

「正直にすごくうれしかったですね」

 Sareeeの相手が自分になると聞き、橋本はそう思ったという。

「Sareeeさんがアメリカに行く前にはお互いにやり合っていたんですけど、自分としても初めて同世代のライバルができたなあと思っていました。だから(今回のオファーを)初めて聞いたときは『よしきたっ! きたな』って感じでした。実際、(Sareeeが)日本に帰ってきたって聞いて、また闘えるのかなとかもいろいろ考えていたところだったので」

 橋本の言う通り、両者は2019年に2度の一騎打ちを行い、1勝1敗の戦績を残している。

「闘っていてすごく刺激のある選手ですし、遠く離れていても、活躍を見ると刺激を受けるような方だったので、また闘えるってなったときに、すごくまた(可能性が)広がっていくなあって思いました」

 今回のポイントは、Sareeeが開催決定会見(3月13日、猪木元気工場)の席上で述べた“闘い”がテーマになっている。

 Sareeeいわく、「エンターテインメントではなくて、プロレスなので“闘い”だと私は思うんですね」と発言。続いて4月25日に行われた全カード発表会見では、橋本戦を発表した後、「私たちがしっかり“闘い”を見せる」と宣言した。

「(Sareeeは)何か思うことがあってそいういうふうに言っているんじゃないかって思うけど、私は常に“闘い”のあるプロレスをしているので、はい。きっと何か女子プロレスに対して思うところがあって、そういうふうに主張したいのかなあって思います」(橋本)

 しかし“闘い”の有無をテーマにするということは、業界的な反発を受ける。その裏には、「プロレスには“闘い”はないのか?」という疑問が付いて回るからだ。

 これに対し橋本はSareee同様、「プロレスはそもそも“闘い”だと思っている」と話し、以下のようにコメントした。

「私が思うのは、“闘い”というよりも“強さ”のあるプロレスを求めているので。“強さ”がなければ“闘い”もできないと思っているので。求めるところは“強さ”なので。自分も『そんなに“強さ”を求めたいなら総合格闘技に行けよ』みたいな意見も見ますけど、プロレスのなかでどう“強さ”を表現するのかが大切だと思っているので。プロレスの中での表現っていうのを私はどんどんしていきたいんです」

必殺の“オブライト”はSareeeを仕留めるか【写真:ぺぺ田中】
必殺の“オブライト”はSareeeを仕留めるか【写真:ぺぺ田中】

橋本千紘がブチ切れた試合は…

「きれいとかかわいいとか、それもいいですよ。もちろんそれもいいですけど、その前にしっかりと“闘い”をやった上でそういうことをやっていかないと…、まあ、うそはあとからバレてしまうので、(アメリカから)帰ってきた私がしっかりと“闘い”っていうものを日本の女子プロレス界に見せていきたいと思います」

 これは去る3月13日に猪木元気工場で行われた、「Sareee-ISM」開催決定会見でのSareeeの発言である。最近また盛り上がりを見せはじめたといわれる女子プロレスだが、正直、ここまで挑発的な言葉を並べられれば、業界内からそれなりの反発を食う。だが、Sareeeからすれば、それでも言っておきたかった発言なのだろう。

 これに関して橋本は、「かわいいのってすごく大事だと思います」と答え、こう続けた。

「ビジュアルも大事だと思います。でも、そのなかで、基礎や基本ができないままプロレスを見せるのは、ちょっと疑問に感じます。そういうプロレスは自分は見ないです。でも、それを好む人が実際にいて女子プロレスが盛り上がっているわけなので、需要があるのかなっって思うのと、でもこっちのほうが面白いぞっていう自信はすごいあるので、そこを見てもらえるように頑張りたいです」

 ここまで話を聞いてきた限り、橋本もSareeeと似通った考えを持っていることは認識できた。ではなぜSareeeがそこまで「私たちがしっかり“闘い”を見せる」と強調するのか。その真意を探るなら、令和の女子プロレス界に対して、ひとつの問題提起をしたいのではないか。そんな気がするのだ。

「いろんなプロレスがあると思っているので。別に否定するつもりもないんですけど、自分たちのような、“強さ”を求めている女子プロレスラーもいるんだよってことを、もっともっと世の中に広めていきたい気持ちは強いです」(橋本)

 ちなみに女子プロレスにおける“闘い”や“強さ”を象徴する試合といえば、真っ先に思い浮かぶのは1990年代にあった北斗晶×神取忍戦が挙げられる。映像を確認すれば今でも伝わってくるそのど迫力ファイトは、令和の今では地上波のテレビ局では流せないのではないか。そう思わせる、放送コードギリギリ、いやそれを超えたものだった。

「映像は見たことがあります。あれが“闘い”っていえば“闘い”なんですけど、あれをしたいかしたくないかって言ったらしたくないですね(苦笑)。でも、お客さんが求めるものってどういうものなんだろう? って考えたときに、やっぱり人が本気でやり合っている姿って見たいのかなと思いますね」

 そんな話を聞いたところで、橋本に「試合中にブチギレた経験は?」と訊ねると、「いやー、ブチ切れた……試合をするっていうのが、ブチ切れるよりも奮い立たせられることのほうが多いですよね。やられてやり返すみたいな気持ちですよね」と答えた。常に冷静に試合を進めてきたのであれば、それは一つのカタチだが、アマチュアレスリングで世界レベルの実績(2012年、世界大学選手権67キロ級3位)を持ちながら女子プロレス入りした経緯を考えると、もしかしたら橋本は、今の女子プロレス界では強すぎてリミッターをはずせた経験がないのではないか。だとすればWWE帰りのSareeeにそれができるのかも焦点の一つになる気がした。

2019年10月13日、仙台サンプラザで行われた両者の一騎打ち【写真:水田雅彦】
2019年10月13日、仙台サンプラザで行われた両者の一騎打ち【写真:水田雅彦】

いまプロレス界で一番練習している選手

「“強さ”がなければ“闘い”はできない」と口にする橋本。それを踏まえた上で橋本のツイッターアカウントを確認すると、それに関連した見逃せない画面が「固定されたツイート」に設定されている。“バカサバイバー”青木真也戦(2022年12月29日、TDCホール)に関するものがそれだ。

「男とか女とか関係なく真っ向勝負をしてくださり本当にありがとうございました。青木選手からもっともっと学びたい。私はまだまだ強くなります」

 その理由について橋本は、「すごく感じることが多かった」とコメントし、以下のように続けた。

「試合には勝ったんですけど、試合はすべてコントロールされていたっていうのと、自分が思っていたことを何もやれなかったなあって。だから勝ったけど悔しさの残る試合で。勝ったけど悔しさが残る試合ってあんまりないんですけど、自分のなかでも印象深い試合で、この試合を忘れずにやっていたら、もっと成長できるなあって思って固定ツイートにしています」

 青木真也といえば、業界内外に毒舌を撒き散らしてはいるものの、良くも悪くもその裏に思慮深さを秘めた男として存在していると記者は考えている。

「そういうことも知っていて。あの青木選手がすごく自分のことをリスペクトした発言をしてくれて。(青木いわく)『今一番プロレス界で練習してる』って言ってくださったりとか。そういうことを少しでも感じてくれているんだっていううれしさ反面、青木選手もいまだにすごい練習をされていて。すごい技術も持っていて。そういう面では全然かなわないですし。忘れられないなっていう感じですね」(橋本)

 実際、自分が練習をしている自負は?

「そうですね。でも、そう思ってやらないと、自分自身、この人のほうが練習しているなって思った時点で負けだと思うので。あんまり私も自分に自信がないタイプなので、練習して自信つけるしかないなっていうのは、すごく感じます」

 ここまで話を聞いたところで、Sareee戦に話を戻すと、お互いに2019年以来、久々に肌を合わせるとしたら、今まで以上の何かを見せられる自信はあるのか。

「今まで以上の何かっていうよりかは、なんでしょう? あの頃以上の“闘い”はできるって私自身はすごく自信はあります」と笑顔を見せる橋本。しかも橋本にはSareee戦のフィニッシュに関しては具体的に思い描いている技がある。

「それはもう、私の必殺のオブライト(ジャーマンスープレックスホールド)で決めたいなっていうのはありますね」

 橋本は言う。

「(Sareeeとは)約3年半ぶりのシングルマッチなんですけど、どんな時でも私は“強さ”を求めるプロレスをやってきて。“強さ”を求めるには強い相手が必要で、まさしくSareee選手はその相手に相応しいと思っているので、私がSareee選手に勝って、“強さ”を証明したいと思います」

“闘い”とは何か? “強さ”とは何か? 3度目の橋本vsSareee戦は、令和の女子プロレス界に新たな光をもたらすことができるのか。

次のページへ (2/2) 【動画】橋本千紘がSareee戦についての意気込みを語る実際の映像
1 2
あなたの“気になる”を教えてください