「子どもの歯の矯正に100万円」に賛否 「価値は間違いなくある」「ポンと出せる親そういない」 識者の見解は

子どもの歯並びが気になる親にとって、矯正は大きな関心事だ。しかし、保険の利かない自由診療のため、高額な費用がネックとなる。今年に入り、子どもの歯科矯正に100万円を出すことを断念した主婦を「親ガチャ外れ」とやゆする投稿がネット上で議論を呼んだ。歯科矯正に100万円を出す価値は本当にあるのか、歯に詳しい専門家に聞いた。

子どもの歯科矯正が話題に(写真はイメージ)【写真:写真AC】
子どもの歯科矯正が話題に(写真はイメージ)【写真:写真AC】

子どもの歯の矯正に100万円は高いか安いか 日本人のデンタルIQは?

 子どもの歯並びが気になる親にとって、矯正は大きな関心事だ。しかし、保険の利かない自由診療のため、高額な費用がネックとなる。今年に入り、子どもの歯科矯正に100万円を出すことを断念した主婦を「親ガチャ外れ」とやゆする投稿がネット上で議論を呼んだ。歯科矯正に100万円を出す価値は本当にあるのか、歯に詳しい専門家に聞いた。

 話題になった投稿は、歯科矯正について「親ガチャ」という言葉を出して、“100万円を払う価値”を強調したもの。ネットの反応は二分され、賛成派は「100万円の価値は間違いなくあります」「歯並び綺麗になる最高」「歯の矯正は一生もの」と主張。「子供の歯科矯正、娘たちにお金出して1番成果があった意味のあるものだった」「100万掛かったけれど、見違える程に美人さんになった」と、実体験に基づく意見も複数見られた。

 一方、反対派は「100万ポンと出せる親、そうそういない」「うちも2人で150万以上と言われて断念しました」「親ガチャ外れ。って親からしたらイラッとします」と声を上げた。テーマが子どもの歯科矯正のため、「歯の矯正なんて絶対じゃないんだからいつか(大人になって)自分でやりなよ」という冷静な指摘もあった。

 医療法人誠真会しげなが歯科医院事務長で歯科経営コンサルタントの重永応樹さんによると、現在の歯科矯正はマウスピース矯正が主流の傾向という。

「治療費に関しては簡易的なものですと下は15万円くらいから、上は100万円を超えるものまで非常に幅があります。また矯正治療はシステムごとに特徴があり、それぞれにメリットやデメリットがあります。そして一番は診査・診断をする歯科医師の知識や技術、経験が治療結果に大きく影響します」と概要を語る。

 マウスピースは歯並びなどを医師が診察し、口のスキャンデー夕をもとに設計、メーカーに発注して、完成品が届く流れだ。一般の歯科医師に加え、矯正専門医のチェックを挟むかどうか、またマウスピースを海外メーカーに発注するかどうかなど、品質や工程数、医院のブランドなどにより、かかる費用は高額になる傾向にあるという。

「私のクリニックではマウスピース矯正は85万プラス消費税くらいです。矯正治療は期間が長く、原価率は決して低くはありません。また、自由診療ですので保険診療と比べたらそれ相応に責任やリスクもクリニック側に発生します。安易に安売りしないで、万全の体制で医療品質に責任を持って臨むことが大事だと思っています」と、価格設定の仕組みを説明した。

 実際に矯正の価値を考え、子どもの将来にわたる影響を考えれば、100万円を出すことは決してマイナスにはならないと重永さんは言う。

「最も大切なことは、矯正治療は100万円が高いか安いか、ということを安易に身の回りの価値と比べないことだと思います。海外旅行や高級レストラン、ブランド品などといったものへの消費と矯正治療にかかる費用を同一線上で考えるのではなく、人生における投資だと考えるべき。これを分からない方が多い。日本人のデンタルIQが諸先進国に比べて低いと言われているのは、国の政策にも責任の一端があると思っています。国民皆保険制度の恩恵でなんでも安く医療を受けられるという概念があまりに浸透している。少子高齢化によって医療費がひっ迫している現代においては、すべての医療を安く受けるという考え方ではなくて、『必要なところには必要なお金がかかるんだ』ということもそろそろ考えてもいいのではないかと思います」

 歯並びがよくなり、日々の歯磨きがしやすくなれば、虫歯のリスクを大幅に減らすことができる。かみ合わせが良くなることで、そしゃく機能も向上する。また見た目がよくなれば自分に自信が持てるようになり、笑顔が増えたりと健康面だけでなくメンタルに与える影響も大きい。人生における長い時間軸の中でその価値を判断するのが、矯正治療の本質と訴えている。

「歯は本来、上下で28本から32本ありますが、矯正治療をすることにより生涯にわたって歯を失うリスクを減らすことができれば、100万の価値以上は間違いなくあると思うんです。その理由は、例えばインプラントを1本入れるとなるとだいたい40万から50万ほど見ておかなくてはいけません。『8020運動』と言って、80歳まで20本の歯を残すことが推奨されていますが、この20本というのは、見方を変えると8本の歯を失っていることになります。それらをインプラントで補うとなると、1本40万でも総額で320万となります」

 最近では高額な医療費を無理なく支払うために、デンタルローンを選択できるクリニックも増えているといい、「これだけ自由診療が普及している現代において、高額医療費を一括で支払うという考えではなく、一生かけて使う自分の体だからこそ、長期的な観点で投資するといった感覚も必要ではないかと考えます」と続けた。

 もちろん、100万円が簡単に出せる金額ではないことも事実だ。また、出せたとしても高額な分、失敗したくない人は多いだろう。重永さんは医師の実績だけでなく、システムや治療の説明、医院のコンセプトなどを十分考慮して病院を選ぶことを勧めている。

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