元NHK岩田明子さん、20年前“ひろゆき”と合コンの過去「先方が覚えていると思わなかった」
政治ジャーナリストで元NHK解説委員の岩田明子さん。故・安倍晋三元首相に“最も食い込んだ記者”として知られている。昨年7月にNHKを退局。今年4月からは完全なフリーランスとなり、現在はテレビやラジオに出演するなど幅広く活動中だ。NHKを退局した経緯や民放テレビ局の印象、今後やりたいことを語ってもらった。
単独インタビュー NHK退局の経緯、民放の印象、今後のやりたいことを聞く
政治ジャーナリストで元NHK解説委員の岩田明子さん。故・安倍晋三元首相に“最も食い込んだ記者”として知られている。昨年7月にNHKを退局。今年4月からは完全なフリーランスとなり、現在はテレビやラジオに出演するなど幅広く活動中だ。NHKを退局した経緯や民放テレビ局の印象、今後やりたいことを語ってもらった。(取材・構成=中村智弘)
NHKを辞めることは数年前から何となく考え始めていました。世の中を見渡してみても、雇用が流動化しているし、一か所で働くという時代ではなくなっていたのは明らかでしたから。
こうした激変期にあって、私は、残された人生の中で、自分にどのような役割があり、責任を果たしていくべきかを考える時間が増えていきました。働き方をめぐって、安倍さんと議論を交わしたこともありました。2020年ごろのことです。安倍さんの見方も、私と同じでしたが、「いずれは辞めるべきタイミングが来るかもしれないね。だけど、今じゃないと思うよ」と言いました。
亡くなられる前の年の年末にも「岩田さん、今後の展望は変わったの? まだ、同じ気持ちなの?」と聞かれました。
そんな中、NHKでは早期退職制度の時限措置が始まっていました。昨年の申請締め切りが6月15日。ぎりぎりまで迷い、結局6月13日に申し込みました。
長年の記者人生の節目を迎えることになるので、お世話になった方々に内々のごあいさつをしたのですが、安倍さんにも「NHKの早期退職に申し込みました」と伝えました。
安倍さんは、「組織の外では、またいろいろな意味で大変だろうけど、頑張って。人生には、何度かリスクを取らなければならない局面がくるもの。そして、人生には山あり谷ありのストーリーが大事だと思う。リスクをとったり苦労をしたりすることは貴重な体験だと思うから」と噛みしめるように語っていたのが深く印象に残っています。
7月31日の退職が決まったわけですが、まさか7月8日に安倍さんがこの世を去ることになろうとは。夢にも思いませんでした。
実際にNHKを辞めて、フリーランスで通用するのかな、という大きな不安はあります。ただ、政治や外交取材を通じて、今まで自分が蓄積したものを世の中に還元していきたい。そして、今後は新しい世界でのわくわく感も実感してみたい、そんな気持ちです。政治外交以外の分野にも、ゆっくり少しずつチャレンジしていきたいですね。
TBS系『サンデージャポン』に初出演した時は、爆笑問題さんや杉村太蔵さんにコメントを拾っていただいたり、フォローを入れていただいたりして、救われるような気持ちになりました。前日は、緊張しすぎて眠れず、放送前から極度に疲れてしまいました。免疫力が落ちたからか、奥歯が炎症を起こしてしまい、歯茎から膿と血が出てきて、放送中は、口の中が血だらけだったんです。
心配になって歯科で診察を受けると、「歯の根が炎症を起こし、すでに骨が溶けています。抜歯は不可避ですね」とのことでした。フジテレビ系『めざまし8』に最初に出演した時も、同様に眠れず、血圧155の状況で臨みました。子どものころから根っからの心配性なんです。
アイドルの大ファン、東京・原宿まで沖田浩之や『竹の子族』を見に行ったことも
NHK時代は初任地の岡山で事件、東京に異動してからは政治外交の取材をしてきましたが、実はアイドルも取材したことがあります。05年、かねてより親交のあった総合プロデューサーの秋元康さんから、AKB48の立ち上げの会見に「ぜひ見に来てよ」と言われ、東京・秋葉原の劇場に行きました。私が「普通っぽいお嬢さんですね」と言うと、秋元さんは「そこがいいんだよ。ファンの皆でスターにしていくんだ。絶対、売れるから」と力説。そしてその後、現実のものとなりましたね。
インドネシアのアイドルグループ・JKT48がデビューする際も、現地に行って密着取材しました。当時は政治部記者でしたが、企画のコンセプトとして「クールジャパン」を打ち出し、提案しました。そして現地でのオーディション風景などを『おはよう日本』で独占放送することができました。
小学生のころは『たのきんトリオ』、『シブがき隊』などのグループや、松田聖子さん、中森明菜さんなどのレコードをよく買っていました。私は千葉県在住でしたが、当時は、沖田浩之さんや『竹の子族』を東京・原宿まで友人たちと見に行っていました。最近の“推し”はBTSですね。また機会に恵まれるのでしたら、JKT48の時のような企画も作ってみたいです。
先日はフジテレビ系『とんでもニュースを肴に~おしゃべり3人とリモート1人~』で、バラエティーに初出演しました。実業家の西村博之(ひろゆき)さんと共演したのですが、「お久しぶりです」と言われて、驚きました。私の方は、ひろゆきさんと面識があるという認識でしたが、先方が覚えているとは思いませんでした。
ひろゆきさんいわく、私が前線の記者で、自民党担当だった20年ほど前に、東京・赤坂で合コンしたらしいんです(笑)。当時、X JAPANのToshlさんと親交があり、私はひろゆきさんにToshlさんのCDを渡して、「ぜひ多くのご友人と聞いてみて」と話していたらしいです。収録日は昔話で盛り上がりました。
その頃は、政治の取材だけでなく、秋元さんなどが紹介してくれる芸能界の方や文化人など、異業種の人たちと、よく飲みに行きました。また、年齢の近い女優さんとクリスマスや大みそか、お正月などを定期的に過ごすようになり、今後はそうした“繋がり”も生かしていければと思っています。
もちろん、政治の分野でも、挑戦してみたいことはあります。最近、民放ではNHK出身の先輩や後輩が増えてきましたので、先輩方の教えを乞うたり、ご一緒できる機会があれば、うれしいです。NHKの同窓会、のような雰囲気になるかもしれませんね。そんなふうに考えると、やがて局の垣根を超えて、いろんなコラボレーションで発信する時代が到来するのかもしれません。
□岩田明子(いわた・あきこ)千葉県船橋市出身。1996年、NHKに入局。岡山放送局へ配属。2000年、東京放送センター報道局政治部へ異動、官邸記者クラブ所属。02年、当時官房副長官だった安倍晋三元首相の番記者を担当し、以来、20年以上に渡って安倍元首相を取材。08年、外務省記者クラブに所属、北朝鮮問題を担当。09年、政権交代を経て鳩山由紀夫内閣の菅直人副首相の担当を務める。13年、NHK解説委員室へ異動、政治担当の解説委員と政治部の記者職を兼務。22年7月、NHKを退局、ジャーナリストとして報道番組に出演する一方で、月刊誌や専門誌などで執筆活動も続けている。趣味は昭和歌謡。現在は母親と二人暮らしで、介護に奮闘中。千葉大学客員教授・中京大学客員教授。