“令和版”オールスター戦を締めくくるのは誰なのか 昭和・平成のマイクパフォーマンスを振り返る
「ALL TOGETHER AGAIN 元気があれば何でもできる!」(6月9日、東京・両国国技館)が開催される。前回から12年ぶり、新日本プロレス、全日本プロレス、ノアの3団体を中心とする「令和版」オールスター戦に、早くもチケットはプラチナ化している。
柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.143】
「ALL TOGETHER AGAIN 元気があれば何でもできる!」(6月9日、東京・両国国技館)が開催される。前回から12年ぶり、新日本プロレス、全日本プロレス、ノアの3団体を中心とする「令和版」オールスター戦に、早くもチケットはプラチナ化している。
12年前の「平成版」(2011年8月27日、東京・日本武道館)を締めくくったのは、3団体の王者トリオだった。新日本のIWGP王者・棚橋弘至、全日本の3冠王者・諏訪魔、ノアのGHC王者・潮崎豪が夢のチームを結成。そろってドロップキックを放つなど、豪華な連携も実現した。
その5か月前の3・11東日本大震災の爪痕に苦しむ日本に元気を呼び込みたいと、プロレス界が一つになったパワーは凄まじく「プロレスの力」を再認識させられた。会場全体が一体となった。
大いに盛り上がった大会を締めくくったのは、棚橋の決めぜりふ「愛してま~す!」だった。各団体の選手、ファンも大合唱。当時のプロレス界の先頭を走っていたのは棚橋であったことは誰もが認めるところ。王者トリオが勝利したときには、棚橋が締めることは3団体合の上だった。
大会主催者だった東京スポーツ新聞社の一員だった記者は、時の社長の命を受け、交渉の最前線に立っていたが、オールスター戦の実現に向けていくつものハードルがあった。普段は興行戦争を繰り広げている団体同士の話し合いは、些細なことが障害になった。各団体の面子、プライド……カードや入場順など、苦労もあったが「愛してま~す!」で、すべてが報われた。
「昭和版」(1979年8月26日、日本武道館)のときには、馬場・全日本、猪木・新日本の激しい興行戦争の真っただ中だった。馬場、猪木の夢のBI砲が再結成され、熱狂のメインイベントとなったが、猪木さんが掟破りを仕掛けた。
試合後のリング上で馬場さんへ対戦をマイクアピール。興奮の坩堝と化していた観客席の後押しもあって、馬場さんも「よし、やろう」と応じたが、馬場さんの言うところの“クリアすべき問題”がクリアできず、馬場vs猪木の一騎打ちは結局、実現しなかったことがすべてを物語っている。馬場さんの猪木さんへの不信感が募ることになってしまったのだ。
先輩記者から「昭和版」の苦労話を聞かせてもらったが「平成版」では、団体間の確執は薄れ、ハードルはあったものの交渉は和やかだった。
そこで「令和版」である。発表会見には、新日本・棚橋、全日本・宮原健斗、ノア・清宮海斗が登場した。対戦カードをあれこれ想像するのも楽しいが、棚橋がろっ骨を負傷。6・9決戦までに復帰できるか心配だが、新日本にはオカダ・カズチカ、内藤哲也などが控えている。
大会のフィナーレを飾るのが誰になるのか? 締めの決めぜりふは、猪木さんを追悼するイベントとあって「1、2、3、ダーッ!」だろうが、音頭を取るのはどの選手になるのだろうか?
その前にも各選手の決めぜりふを聞いてみたい。最近はあまり聞かれないが、オカダの「カネの雨が降るぜ!」も、内藤の「トランキーロ! あっせんなよ!」もいい。宮原の「最高ですかー? 最高!」やノア勢の「アイアムノア」も楽しみである。
思えば、レスラーの決めぜりふは、蝶野正洋の「アイアムチョーノ!」、中邑真輔の「イヤオ!」、小島聡の「行っちゃうぞ! バカヤロー!」、永田裕志の「ゼア!」、諏訪魔の「地獄に落ちろ!」ゼウスの「人生は祭りや! ワッショイ、ワッショイ!」、HARASHIMAの「なんでかって? それは鍛えているからだー!」、WILD時代の征矢学の「WILDに行こうぜー!」など、各選手の個性が光っている。
ジュニア時代の藤波辰巳(現・辰爾)の「アイネバーギブアップ」、ハルク・ホーガンの「イチバ~ン!」、スタン・ハンセンの「ウィーッ!(ユース!)」なども一世を風靡(ふうび)した。ファンそれぞれに、好きな決めぜりふがあり、名勝負、名シーンがよみがえることだろう。6・9「令和版」オールスター戦でマイクを握るのは誰なのか? 試合ももちろん楽しみだが、マイクアピールはどうなのだろう。ワクワクが止まらない。