患者がChatGPTで自己診断もまさかの“誤診” 外来診療の混乱も…医師が語る懸念
近年、急速に実用化が進んでいるAI(人工知能)技術。中でも米国企業が開発したAIチャットボット「ChatGPT」は各方面で大きな議論となっている。そんななか、ChatGPTで自己診断を行う患者が現れたとの医師の投稿が、ネット上で話題を呼んでいる。投稿者に話を聞いた。
AIによる自己診断で知識を得た患者が増えることで、外来診療の混乱も
近年、急速に実用化が進んでいるAI(人工知能)技術。中でも米国企業が開発したAIチャットボット「ChatGPT」は各方面で大きな議論となっている。そんななか、ChatGPTで自己診断を行う患者が現れたとの医師の投稿が、ネット上で話題を呼んでいる。投稿者に話を聞いた。
「とうとうこの時が。。
医『どうされましたか?』
患『胸が痛くてChat GPTで調べたら色々原因が』
医『ほう』
患『医者の診断がいるとのことでこの紙の鑑別全部してください』
医『は、はい(多いな鑑別)』
・・Chat GPTを使う患者さんが出てきました。外来時間が長くかかるようになってきたぞ」
対話文形式で自身の体験を投稿したのは、リウマチ膠原病専門医、総合内科専門医のAiueotips(@aiurotips)さん。投稿にはChatGPTへの質問と、それに対する回答内容を記した画像が添えられている。また、患者本人の個人情報が特定されないよう、投稿内容には多少のフィクションを織り交ぜているという。
「投稿した画像は私がChatGPTに質問して返ってきた返事を印刷したものですが、ご本人が持参された現物のChatGPT返信用紙もほぼ同等のレベルの内容でした。来院の数日前から痛みが出たという成人の患者さんで、それほどパソコンに詳しい方ではなくSNSも普段はまったくされていないとのことでしたが、お子さんが協力してChatGPTで検索されたようです」
投稿者の医師による最終的な診断は帯状疱疹(たいじょうほうしん)。ただ、診察時には皮膚症状がなく、帯状疱疹の可能性に言及しつつもその場での診断はできなかったという。後日症状が出たらすぐに来院するよう伝え、案の定、診察から2日後に症状が出現。ちなみに、ChatGPTの鑑別診断には帯状疱疹は挙がっていなかったという。
ChatGPTを提示されたときの心境について「とうとうこの時代が来たか……という率直な印象を受けました。まず用紙を見て私が確認したのが『有料版ですが、無料版ですか?』ということ。GPT3.5とGPT4ではAIのクオリティーがまったく違うため、どちらのレベルで検索されたか知りたかったからです。『もちろん無料版です』と答えられたため、その時点で今回の鑑別診断のクオリティーは大したことがないのだろうという判断を心の中でしておりました」と投稿者。
精度の低いAIの回答は患者に余計な心配を与えたり、間違った鑑別診断が出てきたりしする可能性も大いにあるといい「より慎重に答えないといけないなと少し心労が増しました。正しい鑑別を一緒に考えていくのは診療としてやりやすいのですが、見当違いの鑑別診断が字体として明記されている場合、そもそもそれがおかしいことから説明するのは限られた外来時間の中では非常に大変だからです」とAI診断の弊害を懸念する。
当面の間は、AIによる自己診断で知識を得た患者が増えることで、外来診療の混乱も予想されるが、一方でさらなるAI技術の進歩に期待する面もあるという。
「主治医の知識の裁量によって鑑別診断や確定診断に至るクオリティーが変わるのが正直なところ現代の医療だと思っています。しかしChatGPTが今後普及してくることで、間違いなく診断学の精度は各段に向上し、どの医師であっても等しく非常に高レベルの診断が容易にできる時代がかなり近い未来にやってくると思います。おそらく数年以内に、ほとんどの外来にAIが導入され、これまで以上に診療がやりやすくなると考えています。
ただ、そのような時代になっても結局のところAIにインプットする問診や身体所見、検査結果の内容がどれだけ詳細で正確なものであるかが重要になってきます。現時点ではAIで見つけることのできない病気もあり、医師は引き続き外来での身体診察能力を磨いていかねばならないと思います。このような身体所見の診察の場面すらも、10年もたてばAIによる機械診療にのっとられる時代が来るようにも思いますが……」
AI技術の発展で社会は今後どのように変わっていくのか。医療現場もまた大きな過渡期を迎えている。