トランス女性がルール破り女性風呂入浴 “混浴”した女性はパニック状態「すごいぐるぐる回っちゃって…」

多様性を尊重した社会の流れが急速に広がる中、もともと身体男性で生まれながら性自認が女性というトランス女性をめぐり、さまざまな議論が起こっている。特にトランス女性の女子専用トイレや女子風呂利用には反対の声が根強く、女性陣から「性的差別とは別」との指摘がある。ENCOUNTは実際に女子風呂入浴時にトランス女性と遭遇したことのある女性を取材。トランス女性への配慮と女性の権利を守ることをどう両立させればいいのか、率直な声を聞いた。

女性大浴場でトランス女性と鉢合わせた(写真はイメージ)【写真:写真AC】
女性大浴場でトランス女性と鉢合わせた(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「誰だろうと思って見たら、“その人”なんですよ。エッて」 合宿型女性イベントでルール破られる

 多様性を尊重した社会の流れが急速に広がる中、もともと身体男性で生まれながら性自認が女性というトランス女性をめぐり、さまざまな議論が起こっている。特にトランス女性の女性専用トイレや女性風呂利用には反対の声が根強く、女性陣から「性的差別とは別」との指摘がある。ENCOUNTは実際に女性風呂入浴時にトランス女性と遭遇したことのある女性を取材。トランス女性への配慮と女性の権利を守ることをどう両立させればいいのか、率直な声を聞いた。

 女性が風呂場でトランス女性に遭遇したのは2000年代始めに行われた合宿型のイベント中だった。イベントはレズビアンやバイセクシャル女性が主体となって運営され、ヘテロセクシャル(異性愛者)の女性も参加。ある時期からは、トランス女性も受け入れるようになった。もともとLGBT(性的マイノリティー)の女性同士が悩みを共有したり、交流したりすることを目的としており、かいわいでは有名なイベントの一つだった。

「もともと性的マイノリティーの人が立ち上げたイベントです。ワークショップをきっかけに、友だち作りや女性の連携を考え、女性の問題についての学びの場所でした。当事者がカミングアウトをするかどうかという話とか、婦人病の話、子宮筋腫について助産師が説明するワークショップもありました。歌やスポーツもありましたね。トランスの人たちは、“女声の出し方”についてのワークショップを開いていました。参加者は日帰りと泊まりがあって、1つ2つのワークショップに出て帰る人もいました。性的マイノリティーが7~8割、異性愛者も2~3割くらいはいたと思います」

 そのときは泊まりだけで60人弱が参加。トランス女性も少数ながらおり、寝食をともにしながら交流を図ったという。女性はレズビアンでパートナーとともに参加していた。トランス女性たちとは顔見知りだった。

 イベントでは事前にさまざまなルールが決められており、入浴時のルールもあった。その中でトランス女性に対しては、女性専用の大浴場の使用禁止が当事者に伝えられたという。これは、イベント会場の「大浴場は男女別」というルールにのっとっており、当時の社会的なトランスジェンダーに対する認知度からも妥当との判断があった。他の女性参加者と混浴になることを防ぐほか、宿泊した会場は貸し切りではなく、スポーツ団体や新入社員の研修など幅広い用途に利用されていたため、公共性を確保しなければならなかった。

「トランスの人は未オペ(性別適合手術を受けていないこと)の人も参加していましたけど、身体性別が男性の人はユニットのシャワールームを使って、大浴場を使用しないでくださいと伝えてありました」

 イベントの運営を手伝っていた女性がパートナーとともに大浴場に向かったのは夕方ごろだった。“異変”を感じたのは、大浴場の手間にあった待機所に差しかかったときだった。

「外にロッカーがあり、休めるような場所があったんですけど、ほかの団体の若い女性たちがいて、なんだか不穏な空気でした。ヒソヒソしているなと思いました」

 胸騒ぎの理由は分からなかった。ただ、混雑時間帯にもかかわらず、妙にひっそりとしていた。「そのくらいの時間帯にお風呂に行く経験は以前もあったんですけど、そのときは本当に人っ子ひとりいない」。女性はそのまま脱衣所に入り、服を脱いで大浴場のドアを開けた。洗い場に他の入浴者は見当たらない。そして、大浴場に目を向けると、予期せぬ光景を目撃したという。

「誰だろうと思って見たら、“その人”なんですよ。エッて」

 女性の認識では、そのトランス女性は手術をしていなかった。女性は瞬時に凍りつき、どう対応すべきか迷った。

「本当に1人だけ入浴していたんですよ。大きな湯舟の縁に腰かけて。何やってんのってとがめるようなことをしても、長話になったり、逆ギレされる可能性も怖いと思いました」

 自分のことより同伴者のことが心配になった。「彼女も驚いていましたよね。うわーって思ったと思う」。動揺を必死にこらえながら、無言で体を洗い終え、トランス女性も入浴している中、湯舟に入り、二言、三言言葉をかわし、先に風呂を出た。

「でも、手術をしたら言うよね」 理解できた若い女性たちの“不穏ムード” 約束破られ大混乱に

「頭の中は『この人、オペしたんだっけ?』、そればっかりで…。でも、手術をしたら言うよねっていうことがすごいぐるぐる回っちゃって。確かに、その場ではブラブラさせていなかったんですよ。チラチラ見ちゃいましたが、とにかく、はてなでいっぱい。結局、その場では分からないままお風呂から出て…」

 あとから考えてみれば、身体男性であることを悟られないようにする“タック”と呼ばれる方法を使っていた可能性もあった。「ほかの人がいないというのは、この人がいたから逃げたんだなと思いました」。若い女性たちがソワソワしていた理由も理解した。トランス女性と風呂場で鉢合わせたショック、事前の約束を破られたことによる不信感、直接確かめることもできない葛藤…さまざまな感情が入り混じった。

 イベントは運営も参加者も性的マイノリティーとの交流に積極的で寛容だった。それでも、今後のあり方について考えざるを得ない出来事になった。発生から20年近くたつのに、女性にとってはトラウマのように記憶に刻まれている。

 令和になり、トランス女性への配慮をどうすればいいのか、議論を呼んでいる。社会全体が差別のない世界の実現を目指す一方で、元男性のYouTuberが女湯入浴を喜々とレポートするなど、ごく一部の当事者による心ない行動によってトランス女性に疑いの目が向けられる騒動も起きている。

 トランス女性の女性専用施設への出入りについて、女性は「たとえ手術済みであっても、私は一切許さない状態であるべきだと思います」との考えを示す。その場合、トイレが男女の区別しかなければ、男性トイレに行こうとしても服装や髪型からトランス女性が利用するのは難しくなる可能性もある。しかし、女性は「そこに気を使うのであれば、同じように、(トイレなどで)性被害に遭ってPTSDを抱えている女性の絶対的安心を守ってほしいです。薬を飲みながらパニックを抑えて社会に適応しようとしている女性がいます。トイレはフラッシュバックを起こした女性にとって、一時的な避難所として利用をする人もいる。女性だけの場所はどうしても必要」と訴える。変装して“トランス女性”と自称し、女性専用施設にしのび込む悪質な変質者もいる。トランス女性に罪はないものの、男性的な要素が少しでもあれば、それに恐怖を覚えてしまう女性が現実にいる。そのことにも配慮すべきと主張した。

 性的指向や性自認を理由に差別や偏見が起こることはあってはならない。ただ、こと女性専用施設においては、社会の理解が追いついていない現状も踏まえ、一線を引く必要があると女性は指摘する。「女性の安全を守ることは差別ではない。女性の生存権です。これを多くの人々に気づいてほしいと願っています。女性のスペースというのは絶対必要」と結んだ。

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