英検2級で大学の学費免除、定期券や家賃補助の例も 少子化進行で学生獲得競争激化
恵泉女学園大(東京・多摩市)や神戸海星女子学院大(神戸・灘区)が相次いで学生募集停止に追い込まれるなど少子化の波を受けて大学運営は厳しさを増している。そんな逆風の中、全国の大学では学生確保のためさまざまな取り組みが行われている。話題になっているのが英語の資格取得者に対する優遇措置だ。TOEICや英検などのスコアを提出し条件をクリアすれば学費が免除される大学もある。果たして効果はあるのか?
アクセス困難校に試練 募集停止の神戸海星女子学院大学は「坂道続きしんどい」
恵泉女学園大(東京・多摩市)や神戸海星女子学院大(神戸・灘区)が相次いで学生募集停止に追い込まれるなど少子化の波を受けて大学運営は厳しさを増している。そんな逆風の中、全国の大学では学生確保のためさまざまな取り組みが行われている。話題になっているのが英語の資格取得者に対する優遇措置だ。TOEICや英検などのスコアを提出し条件をクリアすれば学費が免除される大学もある。果たして効果はあるのか?
JR武蔵野線の東川口駅から無料のスクールバスで約12分。田園地帯の一角に私立浦和大(さいたま市緑区)のキャンパスが広がっている。子ども学部と社会学部があり昨年度入試の募集人員は各110人、90人の計200人。入試形式は総合型、学校推薦型、一般、大学共通テスト利用があり他大学と大きな差はないが、ホームページで「学習支援制度」の項目を見ると、「資格取得による特待生」の制度があり、実用英語技能検定2級資格取得者、GTEC(Advanced)スコア960点以上の所持者は年間授業料71万5000円が全額免除となる。対象期間は1~2年次の2年間で入学後の学業成績が不振の場合には特典を取り消すこともあるとしている。さらに英検準2級とGTEC(同)690-959点の者は半額の35万7500円が免除される。他にも簿記検定や社会福祉士などの資格所持者にも特待制度があるが、英語の勉強を頑張れば学費が大幅に安くなるというのは魅力だ。
英語資格による特待生制度では共愛学園前橋国際大(群馬・前橋市)が先駆者として知られている。HPの「学費・特待生制度」の英語資格について見てみると、英検CSEスコア 2100、GTEC970 (オフィシャルスコア)、TOEIC(L&R)500、TOEFL iBT 50など英検2級レベルのスコア取得者は初年度の授業料69万円が全額返還となる。また、静岡英和学院大(静岡市)のグローバルスカラシップでは、人間社会学部の合格者で英検2級レベル以上のスコア取得者は入学年次の授業料全額64万円を減免すると説明している。敬和学園大(新潟・新発田市)も英語の資格で評価する「資格特待生」制度をもうけており、英検2級以上の新入生について授業料の一部となる47万円を2年間減免(新入生資格特待生二種)、英検準1級以上だと授業料全額の69万円が2年間免除される(同一種)。上記3大とも一定数以上の入学者を確保しており経営上の不安はひとまず回避しているようだ。特待生制度をもうけている大学の中には「国立大学より安い」とアピールしているところもあり、経済的な困難を抱えている世帯にとっては選択肢のひとつになりそうだ。
一般的に英検2級は高校卒業程度の英語力とされており、英単語レベルは4000~5000語程度。早稲田大や慶応大の入試対策には約1万語程度が必要とされていることと比べるとその半分近くになるが、実際には英検2級レベルの英語力を持った大学生はそれほど多くない。英検2級所持者が学内で増えれば大学全体の学習意欲向上につながるし、特待生も自信を持ってキャンパスに通える。ただ、神戸海星女子学院大にも英検2級相当以上の資格を持つ入学志願者から申請があれば人数制限なしで1年次の授業料を免除する制度があったが、定員割れが続き力尽きたかっこうだ。同大の学生からは「JR、阪急ともに学校まで坂道が続き夏の暑い日はかなりしんどい」という声が上がっていた。
ある大学講師がこう話す。「英検2級レベル以上のスコア所持者を特待生として囲い込むという方法は学生獲得にとって良いアイデアだと思いますが、神戸海星女子学院大のように英語特待制度を導入しても学生募集停止になってしまった大学もあります。キャンパスへのアクセスが悪い大学、特に女子大はより淘汰の危機にさらされるでしょうから留学生の獲得や著名人講師の招へいによる知名度アップなどの方法も必要でしょう」。生き残りへの闘いが今後さらに激化しそうだ。