渡辺えり、初の新派挑戦へ 水谷八重子&波乃久里子から「芸を盗んでやるという気持ち」

俳優の渡辺えりが20日、都内で行われた六月新派喜劇公演『三婆』取材会に出席した。渡辺は今回の新派公演に初登場。当日は、新派俳優の水谷八重子と波乃久里子も登壇し、同作をアピールした。

六月新派喜劇公演『三婆』取材会に登壇した渡辺えり【写真:ENCOUNT編集部】
六月新派喜劇公演『三婆』取材会に登壇した渡辺えり【写真:ENCOUNT編集部】

水谷八重子と波乃久里子が新派の魅力を語る

 俳優の渡辺えりが20日、都内で行われた六月新派喜劇公演『三婆』取材会に出席した。渡辺は今回の新派公演に初登場。当日は、新派俳優の水谷八重子と波乃久里子も登壇し、同作をアピールした。

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 新派は1888年に誕生した日本の演劇の一派。大正、昭和にかけての庶民の哀歓・情緒を情感豊かに描いた演目で人気となった。同作は新派135年記念作品でもある。渡辺は「戦前からあるわけですよね。私は戦後生まれなんで、そんな大ベテランの135年前からやっている方々と一緒にやれるとは……」と話すと、波乃は「私ら135年やってるわけじゃないのよ。化石じゃないの。そんなの」とツッコミを入れ、笑いを誘った。

 しかし、渡辺は「私、そういう風に思っちゃったの」と返しつつ、「男の人だと、ふんどしを引き締めてって言いますよね。女の人だと何と言うんですか。女の人は食い込んじゃってそんなことできないじゃないですか。何か、たとえ話ないですか。そういう気持ちですよ。2人の芸を盗んでやるという気持ちで頑張りたいという思いです」と笑いを交えながら意気込みを語った。また、渡辺は「(水谷と波乃は)何をやっても受け入れてくれるお二人だと思います。私はいろんな失敗をすると思うんですが、包み込んでくれるという期待があります。初心に返って、新人のつもりで挑みたいと思ってます」と付け加えた。

 報道陣から新派の魅力について聞かれて波乃は「叙情的リアリズム。形がありますよね。日本でないとできない世界だと思いますね」と回答。渡辺が「物事を顕微鏡で拡大してリアルにやってきた新派ってすごいなと思います」とフォローすると、水谷は「新派はあくまでリアルに縛られるからつまらないかもしれない。ですけれども、明治・大正・昭和の日本人の細やかだった生活態度、人とのふれあい、風情、そういうものを一番色濃く芝居の中で何気なく演じてみせる。日本人の生き様を芝居の中で演じられる唯一の劇団だと自負しています」と熱弁を振るった。

 同作は有吉佐和子原作小説の舞台化。金融業者の武市浩蔵が亡くなると、ひょんなことから愛人の駒代(水谷)、本妻の松子(波乃)、妹のタキ(渡辺)が共同生活を送ることとなる。女たちの老後問題をユーモアたっぷりに描く。渡辺は「人間の目に見えない支え合う愛情を感じます。時代に翻弄(ほんろう)された女性3人という風に見えました。男の人に頼らざるを得なかった時代。作品を見たときにいつかやりたいと思っていました。写真でしか出てこない武市さんが日本社会の象徴に見えるんです。今日まで日本を作ってきた影の王みたいな。最後、その存在が消えてから、3人が光り出す。それがおばあさんになってからというのが、悲しいし切ない。私は面白いところはそこなんじゃないかと捉えています」と語り、同作をアピールしていた。

 同作は6月3日から25日まで三越劇場にて上演される。

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