春風亭昇太が貫く“頼まれたら断らない”生き方「足をちょっと突っ込んでみる」
日本テレビ系『笑点』の司会者で落語家の春風亭昇太が14日、東京・新宿文化センター大ホールで落語とクラシックの融合ライブ『まぜたらどうなる? 落語×クラシック』に出演した。文字通り、フルオーケストラをバックに落語の演目を披露する前代未聞の挑戦。終演後、63歳の昇太がチャレンジできるマインドを語った。
落語とクラシックの融合に初挑戦「普通はないですよ」
日本テレビ系『笑点』の司会者で落語家の春風亭昇太が14日、東京・新宿文化センター大ホールで落語とクラシックの融合ライブ『まぜたらどうなる? 落語×クラシック』に出演した。文字通り、フルオーケストラをバックに落語の演目を披露する前代未聞の挑戦。終演後、63歳の昇太がチャレンジできるマインドを語った。(取材・文=福嶋剛)
定刻の午後6時30分に幕が開き、ステージには総勢40人を超えるオーケストラ・パシフィックフィルハーモニア東京が登場した。指揮者は茂木大輔氏で、ハチャトゥリアンの『剣の舞』でにぎやかに始まった。演奏が終わると、オーケストラのメンバー1人が立ち上がった。タキシード姿の昇太だ。落語家たちによるジャズバンド・にゅうおいらんずでも担当するトロンボーンを披露。オーケストラに混ざっての演奏は初めてで、冷や汗をかきながら苦笑いで言った。
「まさかね。フルオーケストラに交じって演奏するとは思わなかったですよ。お客さんに分からないように、そーっとやっていましたから(笑)」
音楽好きの昇太でも、クラシックとのコラボは初めてだ。「やろう」と決めた理由は、指揮者が茂木氏だったからだ。同氏は、オーボエ奏者としてNHK交響楽団やバイエルン放送交響楽団で活動し、近年は『のだめカンタービレ』コンサートなどで指揮を執っている。無類の落語好きとしても知られ、古典亭盃呑(こてんてい・はいどん)の亭号も持っている。昇太は感謝を込めて言った。
「音楽の世界ではもちろん有名な方ですが、ものすごく落語に詳しい方なんです。でも、実はなぜ茂木さんとご一緒したかったというと、僕の大好きなプラモデルの世界では『知らない人はいない』というくらい有名なモデラーなんです。だから、茂木さんとお会いしてプラモデルのお話がしたかったんですよ(笑)。実際に最初の打ち合わせは半分以上がプラモデルの話でしたから」
今回、ステージで披露した演目は『愛宕山』(あたごやま)だった。幇間(ほうかん)の一八が旦那のお供で愛宕山までピクニックに出かける珍道中を描いた噺。そこにクラシックの名曲が効果的な場面で使用される試みだ。昇太は音を入れる箇所を記した手書きの台本を用意し、茂木氏が選曲した。
「考えてみたらオーケストラと落語なんて普通はないですよ。無音の状態で語りから想像してもらって、成立するものが落語なんでね。じゃあ、そこに音楽を入れたら効果的になるのかどうか、その判断が難しかったですね。でも、落語を良く知ってらっしゃる茂木さんだったから成立したんですよ」
それにしても贅沢な会でした
昇太が全身を使った大きな動きの場面で名曲が流れると客席から笑いが起き、オーケストラのメンバーや茂木氏も演奏のない場面では笑っていた。最後は『笑点のテーマ』をフルオーケストラで演奏。昇太もトロンボーンを演奏しながら指揮を執り、観客からの拍手が鳴り響いた。
「やる前は心配していましたけど、後ろで演奏してもらいながら落語ができるっていう他の人がやったことのない経験もできました。何よりお客さんの笑い声や拍手も自然に湧いてきたんで、『思っていたより上手くいったな』って、素直にうれしかったですよ」
俳優としての顔も持つ昇太は、今回のコラボを含めてさまざまな挑戦を続けている。その上で「大切にしていることは」と問うと、即答した。
「僕は基本的に『頼まれたら断らない』という姿勢なんです。もちろん、スケジュールとかお断りさせていただくものもあるんだけど、頼まれたら一応足をちょっと突っ込んでみるようにしています。今回のコラボは、初めは『ハードルが高い』と思ったんだけど、結果として足を突っ込んでみたら楽しかった。これが良いんじゃないですかね」
昇太は創作落語で『愛宕山』の続編を作ったという。オーケストラとのコラボ第2弾での披露も期待される。
「またこんな機会があったら楽しいと思います。それにしても贅沢な会でしたね」
無事に公演を終えた昇太は、安堵の笑顔で茂木氏と固い握手を交わした。
なお、本公演はクラシック専門ストリーミングサービス「カーテンコール」にて4月21日から7月20日まで配信される。