朝倉未来、「30歳で引退」撤回の理由「格闘家としての自分にもう1度賭けてみたい」
長かった。MMAファイターとして最後の戦いから1年4か月が経った。フロイド・メイウェザー(米国)とのエキシビションマッチや「BreakingDown」開催。試合をしていない間もその名前は常にニュースになっていた。試合が見たいファンの不満がネットにあふれた。「もうオワコン」「頭痛ニキ」――。好き放題に言われてきたRIZINの大将・朝倉未来(トライフォース赤坂)がついに帰ってくる。前フェザー級王者・牛久絢太郎(K-Clann)との対戦を前に、「30歳で引退」撤回の理由やYouTuberとしての姿への葛藤、今後について話を聞いた。
前フェザー級王者・牛久絢太郎は「斎藤選手より弱い」
長かった。MMAファイターとして最後の戦いから1年4か月が経った。フロイド・メイウェザー(米国)とのエキシビションマッチや「BreakingDown」開催。試合をしていない間もその名前は常にニュースになっていた。試合が見たいファンの不満がネットにあふれた。「もうオワコン」「頭痛ニキ」――。好き放題に言われてきたRIZINの大将・朝倉未来(トライフォース赤坂)がついに帰ってくる。前フェザー級王者・牛久絢太郎(K-Clann)との対戦を前に、「30歳で引退」撤回の理由やYouTuberとしての姿への葛藤、今後について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)
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――試合予想で驚異の的中率を見せています。ご自身の試合を予想してもらえますか。
「2R以内にKOすると思います。したいなっていう希望でもありますね(笑)」
――牛久選手の弱点に腕力と挙げていました。それはなぜでしょうか。
「例えば3部練して1日10時間ジムにいるやつでも、5分×5Rを全力でやり続ける人って人間の限界を超えていると思っています。要するに陸上で言うと800メートルを全速力で走れる人はギリギリいると思うんですけど、1500メートルをずっとダッシュで走れる人間って存在しないじゃないですか。それに近いのがあると思う。
試合の中で抜きどころだったり、腕の力を使わないで、でも自分の有利な状態にいるということが上手い人がUFCでもトップにいると思うんですよね。牛久選手はずっと力を入れている。だからそれが弱点なのかなと思いますね」
――牛久選手は未来選手が今まで戦ってきたなかでどれくらいの強さになるのでしょうか。
「やってみないと分からないですけど、俺は斎藤(裕)選手の方が自分にとってやりにくい相手と思っている。斎藤選手と牛久選手が2回戦ったら、牛久選手が2回勝っている。(自分は1勝1敗だが)俺は対牛久の方がやりやすい。斎藤選手より弱いと思っています」
盛り上がる国内フェザー級、鈴木千裕は「勝負強い」
――RIZINのフェザー級が未来選手が参戦したときよりも盛り上がってきています。どう見ていますか。
「面白くなってきているなとは思います。シンプルにうれしいですよね。最初は敵がいなかったので。自分を奮い立たせてくれていますね。クレベル・コイケ選手にリベンジしたいという思いが強いので、そこは今の目標ですね」
――そんな目標のクレベル選手と鈴木千裕選手が6月にベルトをかけて戦います。鈴木選手の快進撃はどう映っていましたか。
「すごいっすよね。勝負強いというか。いつでも戦ってもいいかなと思っていますね。でも負ける気はしないっすね」
――格闘家として今回の一戦はどういう立ち位置になると思いますか。
「日本人フェザー級の1位を決めるって感じじゃないですか。だから拮抗した戦いにしたくないなと思っています。フェザー級の強い人が出てきて、誰が誰とやったらという論争があると思うんです。だからこそ差を見せつけて勝ちたいというのが希望ですね」
「30歳で引退」撤回の真意「自分の限界はまだまだ先にある」
――過去の発言の中であった「30歳で引退」から「今のところ辞めるつもりはない」という発言に変わったのはなぜでしょうか。
「プロになったときに30歳までに結果が残せないようだったら話にならないと思っていました。格闘技ってアウトサイダーだろうとアマチュアだろうと脳にダメージを負うし、本気で殴り合っている。そんな危険なスポーツをやって、30歳までに結果が出ないようだったら、明らかに違う人生を歩んだ方が良い。シフトチェンジした方がいいじゃないですか。
30歳までに『結果を出すぞ』という意味も含めて言いました。結果的にある程度証明はできました。お金も稼いだし、大みそかも試合をしたし、日本で1番知名度もある。思い描いていたものは全て叶えたとは思います。この1年半、本当の自由の中で周りの意見も無視して自分の好きな生活を送ってきた。友達とYouTubeを撮ってみたり、女の子と酒を飲んでみたりした。でも何か物足りないんですよね。
格闘技が1番楽しいなって気付いたんですよ。それもあり30歳までに引退と言っていたものの、まだ自分の格闘技をやりたい欲が膨れ上がりました。また格闘技に打ち込んだときに、自分の限界はまだまだ先にあって、強くなっている実感を得たので、その間に辞めるのはもったいないなと。格闘家としての自分にもう1度賭けてみたくなったんですよね」
――お金を稼いでさまざまな物を手に入れてなお、未来選手を魅了する職業・格闘家はどんな仕事なのでしょうか。
「格闘技って危ないし、もう何十億円も稼いでいて、別に試合なんてしなくてもいいと思う。でも、このスリル、刺激……1対1で戦ってどちらかに勝敗がついて全部を持っていける。そこまでにお互いが相手を倒すために努力をしてきて、お互いにお互いのファンがいて、これに勝るものはないなと。
体に悪いかもしれないです。パンチドランカーになって将来早死にするかもしれないし、早くボケたりするのかもしれない。でも、それが本望。それを選んだ道の方が自分にとって楽しい道になると思う。だから……好きなんですよね。戦うことが好き」
格闘家×YouTuberの姿に葛藤も「いつの間にか自分の首を絞めていました」
――「BreakingDown」の場であえて「本物の格闘技が好き」という発言をしていました。その真意は何だったのでしょうか。
「仕組みを理解しているんです。RIZINのレベルの高い試合が再生回数伸びなくて、BreakingDownのオーディションが1000万回再生いっている。でも僕は、本物の試合が好きなんですけど、みんなが興味を持つのはああいうオーディション。そこに来た人たちが本物の格闘技に興味を持ってもらえる可能性はあると思っていて、だからこそあの場で言いました」
――本業は格闘家ですがYouTuberとしてヒットして、引くに引けなくなったという発言がありました。実際どんな思いだったのでしょうか。
「数字にも追われていたし、周りの人生を変えた人たちの生活も背負ったし、いろんなプレッシャーがありますよね。YouTuberとしても再生回数が落ちたら言われますし、自分たちの生活を他の人たちよりもさらけ出している分、いろんな人に審査される。自分の自由で始めたことだけど、いつの間にか自分の首を絞めていました。でも、ようやく確立してきて格闘技をする時間ができたので、今こそ見せるときかなと思いますよね」
――もし牛久選手に負けたらどうしますか。
「負けたら、どういう感情になるのかな。なってみないと分からないですよね。でも、全く考えてないですけどね。負けることなんて」
――今後、海外挑戦を考えたりはするのでしょうか。
「夢を見たりはしますね。UFCで世界最強の舞台で戦ってみたいという思いはありますよ。試合をして、同じ日本人に応援されるみたいな。でも国内、RIZINで負けてるようじゃそんなこと言っていても話にならないのは分かる。影響力もあるので、簡単なことは言えないです。まずは目の前の試合で結果を出していくことですよね」