「ライバルはイーロン・マスク」 東大4年で退学が話題、22歳“科学界の異端児”の素顔

二酸化炭素を減らす装置「ひやっしー」などを開発したり、本気で火星に住むことを目指している化学者で発明家の村木風海さん(22)。最近では、東京大を4年生で退学することを発表して、世間を驚かせた。ライバルは、宇宙開発も手掛ける起業家のイーロン・マスクだと言い切る化学界の異端児。その素顔に迫った。

実験道具を手にする村木風海さん【写真:ENCOUNT編集部】
実験道具を手にする村木風海さん【写真:ENCOUNT編集部】

村木風海さんインタビュー 代表的な研究・発明に「ひやっしー」「そらりん計画」

 二酸化炭素を減らす装置「ひやっしー」などを開発したり、本気で火星に住むことを目指している化学者で発明家の村木風海さん(22)。最近では、東京大を4年生で退学することを発表して、世間を驚かせた。ライバルは、宇宙開発も手掛ける起業家のイーロン・マスクだと言い切る化学界の異端児。その素顔に迫った。(取材・文=中村智弘)

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 3月31日に東大を満期退学した村木さんは晴れ晴れとした表情でこう話す。

「東大を辞めることを考えている時に、自分が『東大』という肩書きに固執していることに気付いたんです。辞めて、今は吹っ切れました。一歩成長できたかなと思います」

 現在は一般社団法人・炭素回収技術研究機構(CRRA)の代表理事・機構長として、地球温暖化を止めるための発明や、人類の火星移住を実現するための研究などを行っている。やることは、曜日ごとに分けているというが、詳しく聞くと、まるでスーパーマンのような活動ぶりだ。

「月曜&木曜で研究して、火曜&水曜はパイロットの訓練を受け、金曜はメディア対応や講演会を行って、日曜は海で研究船の操縦教官をしています。土曜は休日ですかね。名前(風海)の文字にあるとおり、本当に空や海が大好きなんです。もともと、研究者になるつもりはなくて、旅客機のパイロットになりたかった。でも、高校2年の時に自分の研究が国の事業として採択され、研究者として生きると腹をくくった。将来は“空飛ぶ化学者”になろうと思っています」

 4月からは、様々な医療行為や医療機械を用いた検査もできる国家資格・臨床検査技師の資格を取るために、夜間の学校に3年間通う予定。さらに、公衆衛生学、原子炉の運転技術、サイバー防衛などを学ぶため、9年間、大学院などに通うつもりだという。博士論文も自身の研究所で執筆し、論文博士などの制度を利用する予定だそうだ。この計画のすべては、何でもできる“スーパー化学者”になるため。これだけ、様々なことに興味を持つようなったのは、小学4年生の時に出会った恩師の影響が大きいという。

「『学びは冒険なんだよ』と教わったんです。以来、どこの学校に通いたいという目先のことではなく、何を学びたいかっていう気持ちで動くようにしています。僕は常に死ぬ瞬間のことを考えています。死ぬまでに、どれだけ人生を楽しんで、冒険したかが大事なんです」

アウトドア派だという村木風海さん【写真:ENCOUNT編集部】
アウトドア派だという村木風海さん【写真:ENCOUNT編集部】

実はアウトドア派 ふらっと伊豆諸島や温泉地へ

 二酸化炭素の削減などの大きなテーマでは、世間一般に意識を浸透させることが大切だ。ただ、化学は難しい言葉が多く、理解してもらうにはハードルも高い。村木さんも十分、そのことはわかっている。地球温暖化防止のため二酸化炭素を回収できる機械を「ひやっしー」、空からガソリンの代わりになる燃料を作ることを「そらりん計画」と名付けた。

「分かりやすく、なじみやすいネーミングにすることを意識しています。言葉こそが世界を変えるからと思っているからです。ネガティブなイメージのある二酸化炭素にしても、こんなに面白い物質で、可能性の塊で集めれば集めるほど、こんなにワクワクする未来がありますよ、ということをポジティブに伝えたいんです」

 室内にこもって研究ばかりしていると思いきや、実はアウトドア派だ。時間があれば、ふらっと一人で伊豆諸島や温泉地などを訪れる。海岸を歩いていると、突如、アイデアがひらめく瞬間があるという。食べることも、生きがいのひとつだ。暇を見つけては、カフェ巡りもしている。「どんなに嫌なことがあっても、よく食べて、よく寝れば、朝にはケロッと忘れられます」。

 村木さんの目標は、地球を温暖化から守り、人類第二の故郷として火星を開拓すること。やることのスケールが大きすぎて、はたから見ると、本当に実現できるのか、と疑問を持つ人もいるかもしれない。

「これまでも色んなことを言われてきました。でも、これは趣味でやっていることなんです。人の趣味にケチをつける権利は誰にもないと思っています。二酸化炭素がかわいくてしょうがなくて、熱狂的に13年間研究してきた。趣味で遊んでいたら、地球を冷やしちゃいました、というノリなんです」

 研究室にある実験道具を紹介してくれた時には、本当にうれしそうな表情をみせた村木さん。化学界の異端児が世界を変える。

□村木風海(むらき・かずみ)2000年8月18日、山梨県出身。日本の化学者、発明家、冒険家、社会起業家。一般社団法人炭素回収技術研究機構(CRRA)代表理事・機構長。10年、小学4年生の時に化学者の道へ。17年、総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)異能vationプロジェクト「破壊的な挑戦部門」に採択され、CRRAを創設して機構長に就任。18年、大村智自然科学賞。19年、研究実績により東京大学推薦入試で理科一類に合格。同年、『世界を変える30歳未満の日本人30人』としてForbes JAPAN 30 UNDER 30 2019 サイエンス部門受賞。21年、内閣府ムーンショットアンバサダーに就任。同年12月、『今年の100人』としてForbes JAPAN 100に選出される。代表的な研究・発明に「ひやっしー」「そらりん計画」「成層圏探査機もくもく計画」がある。

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