高騰化の希少トヨタ車「絶対に売りません!」 30代女性公務員の覚悟「後悔はありません」
貴重なトヨタ旧車が今日も快走、“ツウ”をうならせている。1987年式スプリンタートレノAE86型 GT APEX 後期型、通称ハチロクだ。『頭文字D』でおなじみの1台。海外の収集家も熱視線を送る希少タイプ車のオーナーは、30代の女性公務員だ。もともとはペーパードライバーだったのに、今は「沼にハマっています」。一体、何があったのか。
「高かったです(笑)」でも後悔なし 『頭文字D』でおなじみ、87年式AE86トレノ
貴重なトヨタ旧車が今日も快走、“ツウ”をうならせている。1987年式スプリンタートレノAE86型 GT APEX 後期型、通称ハチロクだ。『頭文字D』でおなじみの1台。海外の収集家も熱視線を送る希少タイプ車のオーナーは、30代の女性公務員だ。もともとはペーパードライバーだったのに、今は「沼にハマっています」。一体、何があったのか。(取材・文=吉原知也)
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「専門店にお願いして、半年待って、去年の夏に手に入れたんです。お店の方からは『本当にラッキーだったよ』と言っていただいて。外見はきれいでも、中身がダメになっているものもあるそうなのですが、この個体はしっかり走れる1台なんです」。運を味方に付けて入手した、ファン垂ぜんの1台だ。
レトロな雰囲気にすっかり魅了されている。愛くるしいリトラクタブル・ヘッドライトも「ニコニコしているようで、かわいいですよね」と、お気に入りだ。
それだけではない。車と一体となって走る、その魅力が一番だ。「このクルマは自分で適切にギアを選択して操作しないと、気持ちよく走ることができません。そこがいいんです。『運転している』ということを実感できます。一体感が素晴らしいですね」と語る。
実は、セカンドカー。メインはオートマの輸入車に乗っている。そもそものカーライフとは。免許を取ってから3、4年ほどは、ほとんどペーパードライバーだったという。実家はもともと6速マニュアル車だったが、マニュアル車に苦手意識を持っていた。一方で、実家のファミリーカーがオートマ車に買い替え。社会人になって軽自動車に乗るようになり、徐々に運転の楽しさを知るようになった。
頭文字Dはアニメで見ていて、もちろん、AE86トレノの存在は知っていた。ドライブを楽しむようになり、次第に興味・関心は、“国産スポーツカー沼”へとまっしぐら。R32スカイラインGT-R、スープラ、RX-7……。なんと、特殊なレンタカー店を見つけ出し、AE86トレノを借りて運転するように。「奥深さを知ったんです。それで、私、ハチロク好きだったんだなって。手に入れることを決めました。好きなクルマを大事にメンテナンスして維持して乗りたい。そう強く思うようになりました。沼にハマっていったのはここ最近なんです」。深い物語があった。
近年の旧車・国産スポーツカー高騰化は、尋常じゃないほどになっている。やはり奮発したのだろうか。
「高かったです(笑)」
それに、こんな思いを明かす。「会う人会う人から、『俺の昔の頃は、20万円、30万円で買えたんだよ』といった“安さ自慢”の言葉をいただくのですが、私は今買ってよかったと思っています。軽自動車が何台買えようと、この1台を買ってよかった。かけがえのない存在なので、後悔はありません」。大事な人生の選択になった。
購入元の専門店からのアドバイスもあり、週末のオフや早く仕事が終わった日は、少しでも乗るようにしている。「継続的に乗っていると、何か異変があった時に異音などで気付くことができ、すぐに適切に修理に出せます。その意味でも、走らせていたいです」。言わば動態保存。女性オーナーの優しさ、いたわりが愛車の万全の維持につながっているようで、好調をキープしている。坂道発進も問題なし。うまく乗れば、高速道路はリッター14キロ。「結構、燃費はいいんですよ!」という。
これだけ状態のいい人気車。もし、お金を積まれて売却オファーを受けたら?
「絶対に売りません! もうこの状態のクルマは二度と手に入らないと思います」ときっぱり。
「自分の体の一部のようなもの。大事に大事に乗って維持していく。そんな使命感を持っています」と力を込めた。