日本のコロナ水際対策にバックパッカーため息「遅すぎる」 5月8日“完全開国”も東南アジアはとうに完全撤廃
日本入国時のコロナ水際対策がようやく終了することになった。厚生労働省が7日までに「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症に変更される令和5年5月8日以降に入国される方については、有効なワクチン接種証明書又は出国前検査証明書の提示が不要となります」とホームページで発表した。政府は1月27日に「5類」への格下げを発表しており、法解釈上、これまでのような検疫措置はとれなくなることが予想されていたが、ここに至ってようやく撤廃が明言されたかっこうだ。23年10月11日以降、日本人を含む全ての帰国者と入国者について、世界保健機構(WHO)の緊急使用リストに掲載されているワクチンの3回接種証明書または出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかの提示が必要だったが、5月8日以降はこれらの提示なしに帰国できるようになる。つまり、コロナ前に戻るということだ。
世界中で観光客の争奪戦 政府目標は2030年までに訪日外国人旅行者数6000万人
日本入国時のコロナ水際対策がようやく終了することになった。厚生労働省が7日までに「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症に変更される令和5年5月8日以降に入国される方については、有効なワクチン接種証明書又は出国前検査証明書の提示が不要となります」とホームページで発表した。政府は1月27日に「5類」への格下げを発表しており、法解釈上、これまでのような検疫措置はとれなくなることが予想されていたが、ここに至ってようやく撤廃が明言されたかっこうだ。23年10月11日以降、日本人を含む全ての帰国者と入国者について、世界保健機構(WHO)の緊急使用リストに掲載されているワクチンの3回接種証明書または出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかの提示が必要だったが、5月8日以降はこれらの提示なしに帰国できるようになる。つまり、コロナ前に戻るということだ。
この措置によってワクチンを3回接種していない日本人の海外渡航が活発化するのは確実だ。デジタル庁が発表している「全国のワクチン接種状況」によると、3回目接種数は全人口の68.61%(5日時点)。子どもや高齢者を含むものの人口の3割余が3回目のワクチン接種をしていないことになる。また1回目接種数は同77.96%のため2割強がワクチン未接種となっている。
コロナパンデミック前、海外を頻繁に訪れていた自営業者は大喜びしながらこう話す。「私はワクチンを3回接種していないので出国したら現地で陰性証明書を取得して帰国する必要がありました。費用も時間もかかるし仮にコロナ陽性となったら陰性になるまで日本に帰れなくなってしまいます。海外では陽性になった日本人が無症状のまま延泊を繰り返している事例も多いと聞きます。こうした不安があるので海外旅行はあきらめていましたが、日本もようやく“開国”するということなのでうれしくてたまりません。さっそく5月8日以降の海外旅行計画を練っているところです」。
実際、日本の水際対策緩和は他の国と比べて「遅い」という声が上がっていた。各国の対応は以下の通り。
【マレーシア】昨年5月以降、ワクチンを2回以上接種していない18歳以上の成人に対して渡航前のPCR検査や到着後24時間以内の迅速抗原検査、入国後5日間の強制隔離を課していたが、感染者数の減少を受けて8月1日以降は撤廃。ワクチン接種、未接種に関わらず入国手続きは原則不要となっている。
【タイ】昨年10月1日に新型コロナウイルス感染症を「危険伝染病」から「監視下の伝染病」に格下げし、タイ入国時のワクチン接種証明書または陰性証明書の提示が不要となった。公共交通機関内でのマスク着用は義務ではなく協力要請となり、コロナ感染者でも軽症あるいは無症状の人は自己隔離不要で外出可能。
【シンガポール】2月13日に水際対策を全廃。鉄道やバスなどの公共交通機関でのマスク着用義務も解除するなど、残っていた感染防止策もほぼ全て撤廃。ワクチン未接種者についても、入国前48時間以内の検査による陰性証明書の提示を不要とし、ワクチン未接種者への旅行保険の加入義務も撤廃。
【韓国】昨年9月3日以降、日本からの入国者に対する陰性証明書取得と提出義務を廃止。10月1日以降は韓国入国後1日以内のPCR検査義務も廃止。3月29日には一時措置として4月1日から24年12月31日まで、日本を含む22カ国・地域に対し、渡航前に取得が必要とされていた「電子渡航許可証」(K-ETA)の適用を免除すると発表。
【フランス】昨年8月1日以降、水際措置を解除。
【中国】1月8日から出発48時間前以内のPCR検査1回を課しているが、「ゼロコロナ」政策の事実上の終了により、約3年間にわたって停止してきた海外への団体旅行を2月6日から20か国を対象に解禁。3月15日からはフランスやイタリアなど40か国が追加されている。
【米国】昨年6月12日以降、陰性証明書の提示は不要となったが、米国市民と永住者を除く非移民についてはワクチン接種証明の提示が引き続き求められている。
以上のように、今や多くの国がコロナ前に戻っている。最近、韓国を訪れた音楽ライターは「仁川(インチョン)国際空港では煩雑なことはなくあっという間に入国できました。もちろん、ワクチン接種証明書や陰性証明書の提示は求められません。ソウルの繁華街である明洞や東大門周辺では若い日本人女性を多く見かけました。とりわけ東大門に近い広蔵(クァンジャン)市場は活気にあふれ屋台で多くの日本人がキムパプやビビンバを楽しそうに食べていました」と話す。
現状、ワクチン3回未接種の旅行者が韓国から日本に帰国する場合、コロナの陰性証明書が必要だ。「ソウルの踏十里(タプシムリ)駅から徒歩5分くらいのところに位置するシジェン医療財団ではPCR検査と陰性証明書をセットで取得することができます。費用は日本円で約6500円。検査後、およそ4時間から6時間で結果がメールで来ます。ソウルではこちらが最も安いといわれていますが、それでも旅行者にとって金銭的、時間的負担が大きいのでは」(ソウル在住編集者)。タイ・バンコクではMedConsult Clinicが日本人の間で有名だ。費用は日本円で約6000円。地元の庶民向け食堂の定食が1食200~300円ほどというバンコクの物価を考えると決して安い金額ではない。日本語が通じるDYMインターナショナルクリニックだと約1万円もかかるという。
そもそも、政府が新型コロナウイルスの感染症法上の分類を「5類」に格下げする、と発表したのは1月27日。そして開始は大型連休明けの5月8日だ。医療体制や医療費の自己負担などに検討が必要ということだが、「実施を3か月以上も先にしたのは遅過ぎます。実際、シンガポール政府は2月9日に新型コロナウイルスパンデミックの終息を宣言し、わずか4日後の2月13日から規制撤廃に踏み切っているわけですから。完全開国が遅れれば遅れるほど海外の観光客をタイやシンガポールなどに奪われてしまいかねません」と日本人バックパッカーはため息をつく。
政府は2030年までに訪日外国人旅行者数を2020年目標の4000万人から6000万人に引き上げる計画を掲げている。かなり先の話とはいえ、世界中で観光客の奪い合いが繰り広げられている以上、うかうかとしてはいられない。デジタル庁は入国者に対し検疫、入国審査、税関申告がスマホ画面で確認できる「Visit Japan Webサービス」を運営しているが、空港での検疫風景を見て首をかしげる旅行者は多い。最近、海外から帰国したマスコミ関係者がこう明かす。
「Visit Japan Webにデータを打ち込んで画面が青色に変わったら入国OKとなるわけですが、入国審査までの空港内の通路には係員が約30人ほど群がっていて、スマホ画面を一つ一つ目視でチェックしていました。現地出国時に航空会社係員によるチェックがあり、帰国時にも再度チェックがあるという二度手間の状態。あまりの人海戦術ぶりは文字通り目を疑う光景でしたね。いったい人件費にいくらかけているのでしょうか? 中には何もしないでぼーっと立っている係員もいました。何のためのIT化かさっぱり分かりません」。これでは海外からの観光客も戸惑うばかりだろう。こうした指摘を受けて、空港検疫では5日から日本到着時にワクチン証明書または陰性証明書の確認を取りやめている。つまり煩雑なダブルチェックを撤廃したというわけだ。
「Visit Japan Web」の運営が5月8日以降も続くのか不明瞭だが、いずれにせよこの日以降、日本はやっと“完全開国”となり海外旅行客の増加にもつながりそうだ。