バー店主、ルアー職人から転職組も 進化しまくった“令和ソフビ”の魅力とは?

ウルトラマンやリカちゃんなど、誰もが一度は遊んだことがあるソフト塩化ビニール製のソフビ人形。1960年代後半に起きた「第一次怪獣ブーム」時に製造された人形は、高値でやり取りされるなどコレクターアイテムとしても人気だ。近年ではアーティストがそれぞれの世界観を表現した「クリエーターズ・ソフビ」が注目を集めており、日本の伝統工芸とコラボレーションした作品も誕生している。レトロ玩具の販売や買い取り、アートソフビの企画・販売を行う有限会社ヤマト(愛知県名古屋市)の代表・山本祐介さんにその魅力を聞いた。

東京・渋谷に誕生したソフビ人形の専門店【写真:ENCOUNT編集部】
東京・渋谷に誕生したソフビ人形の専門店【写真:ENCOUNT編集部】

カルチャーの発信地・渋谷に専門店

 ウルトラマンやリカちゃんなど、誰もが一度は遊んだことがあるソフト塩化ビニール製のソフビ人形。1960年代後半に起きた「第一次怪獣ブーム」時に製造された人形は、高値でやり取りされるなどコレクターアイテムとしても人気だ。近年ではアーティストがそれぞれの世界観を表現した「クリエーターズ・ソフビ」が注目を集めており、日本の伝統工芸とコラボレーションした作品も誕生している。レトロ玩具の販売や買い取り、アートソフビの企画・販売を行う有限会社ヤマト(愛知県名古屋市)の代表・山本祐介さんにその魅力を聞いた。(取材・文=西村綾乃)

 世界的に人気のキャラクター『ポケットモンスター』の関連商品を販売するオフィシャルショップ「ポケモンセンターシブヤ」(東京・渋谷)など人気店が集まる渋谷パルコに3月、アートトイの販売・展示を行う「T-BASE」の新店舗が誕生した。オープンを記念して行われたイベントには、数量限定の商品が並ぶとあり開店前から長蛇の列が。アジアなど海外からの客の姿もあった。

「アートトイを専門に扱う店舗は銀座店に次いで2店舗目。アートや音楽などカルチャーの発信地としても注目される渋谷の店舗には、ソフビを知らなかった人にも興味を持ってもらえるように、きゅうりをモチーフにした作品など、ポップな作品を並べています。イベントでは、お店のイメージカラーでもあるオレンジとイエローを使ったソフビのほか、スタジオ24が制作した『AND1(アンドワン)など限定の品が人気でした。迷路のような作りにしているので、ソフビとの出合いを楽しんでほしいです」

「知らない人も思わず手に取ってしまうような」と考えた商品棚には、クマやウサギなど動物モチーフのものや、女の子などかわいらしいものはもちろん、グロテスクな怪物のソフビも並ぶ。ラメなどを混ぜキラキラと光るもの、クラックという割れたように見える塗りを施したものなどその装飾もさまざまだ。

「フィギュアのような立体物は、初期投資がかかるのですが、粘土で形を作り溶かした、ろうで原型を作っていくソフビは、フィギュアよりは安価で少ないロット数で制作できる。バーの店主やイラストレーターなど、趣味や副業として活動していた人が作家になるケースも増えているんです。ペインターネット フトアゴンの伊藤俊彦さんは、元々釣り用のルアーを作っていた職人さん。魚を引きつける技術をソフビに応用されました」

 イラストレーターのタカハシユリさんが考案した、頭に大きなリボンを付けた女の子のキャラクター「チヨコ」は2021年にソフビ化された。イラストから飛び出したチヨコを手にしたファンは「一緒に遊びに行って写真を撮ったりできるのがうれしい」と笑顔。持ち運べることでより愛着が増すと語る。

お気に入りのソフビを手にした山本祐介さん【写真:ENCOUNT編集部】
お気に入りのソフビを手にした山本祐介さん【写真:ENCOUNT編集部】

 クリエーターズ・ソフビは、日本で生まれたカルチャー。00年初めごろから数が増えていったという。デザイナーとおもちゃメーカー。山本さんのようなショップと共同でソフビを生み出す作家が新しい魅力を広げている。

「世界的に人気のTOUMAさんとは代表作のナックルベアと、紅里工房が守り続けている『らでん』をつかった作品を作りました。ソフトビニールの上に、繊細ならでんを施すのは困難でしたが、迫力ある作品が完成しました。今後は輪島塗りや、漆器などと融合したソフビを開発していきたいです」

 YouTubeでは2年ほど前から、「山本祐介 オタク社長 トイズキング」として「ソフビの世界のスゴイ人」として作家の紹介もしている山本さん。「作品はもちろんですが、作家が持つ背景にも興味を持ってくれる人が増えました」と手ごたえを感じている。

 自身も子どものときからソフビ人形が大好きだったと語る山本さんは、「子どものときに『買ってもらえなかったんだよね』と30~50代の方が爆買いされるケースもあります。1個買ってしまったが最後、もうひとつ、またひとつと増やしていくと、人形たちの世界も広がって、並べると達成感もあります。こんなキャラクターいたんだというユニークなものなど、いろいろな作品があるので、ぜひお気に入りを見つけに来て」と呼びかけた。

次のページへ (2/2) 【動画】レアアイテムもズラリ…東京・渋谷に誕生したソフビ人形専門店の実際の様子
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