「驚くほどのスピードで浸透」 制服のジェンダーレス化 都市部では公立中学校全体の6、7割に

新学期を迎え、中学校や高校で入学式を迎える新入生も多いだろう。学校制服は近年ジェンダーレスの流れが加速している。公立学校を中心に、制服における性差をなくす動きはますます広がっている。制服メーカー大手の菅公学生服株式会社に実態を聞いた。

女子スラックスの一例【写真:カンコー学生服提供】
女子スラックスの一例【写真:カンコー学生服提供】

10代の制服に何が起こっているのか

 新学期を迎え、中学校や高校で入学式を迎える新入生も多いだろう。学校制服は近年ジェンダーレスの流れが加速している。公立学校を中心に、制服における性差をなくす動きはますます広がっている。制服メーカー大手の菅公学生服株式会社に実態を聞いた。

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「近年で言うと、ジェンダーレス制服の導入は前期、今期ぐらいからそれまでの倍くらいになっています。スピードとしては非常に増加傾向になっている。特に都市部のほうから早めに始まってきており、都市部の中学校では6割、7割ぐらいがジェンダーレス制服の導入を進めています」

 こう語るのは、企画推進部部長の吉川淳稔さんだ。

 東京では公立中学校全体の6割で導入が進み、「あと2年ぐらいで多様性、ジェンダーレスということを含めたモデルチェンジは収束に向かうのではないかと思っています」と推測する。ジェンダーレス制服が登場したのは、わずか5~6年前と言い、「驚くほどのスピードで浸透してきている」と続けた。

 男女の区別はあるものの、性差が少なく見えるジェンダーレス制服は性的マイノリティーの悩みを持つ生徒に配慮したものだ。男女の垣根を完全に取り払った男女共用制服も普及しつつある。サイズが異なるだけでユニセックス展開しており、前のボタン合わせの左右も自分で変更できるなどの工夫がなされている。

 吉川さんによると、当初これらの制服は性的マイノリティーの当事者の生徒が在籍する学校が単体で導入する傾向にあった。しかし、最近では各地方自治体の教育委員会が主体となって積極的に推進しているという。

「世の中全体の流れとして多様性を認め合う、尊重する動きが活発化し、それに呼応するように教育委員会が各学校に取り組み事項を通知しています。そこから、学校が動いているという状況に近いように感じます」

 また、これまでは学校単位で制服は異なっていたが、市町村のエリアごとに複数の学校が同じ制服を導入する傾向が増えてきているという。

 その理由について、吉川さんは「市町村内で転校があったときにも、制服を買い替えることなく着用できること、全体を通して(性的マイノリティーの生徒に)しっかりと配慮していることをお伝えするために行っているのではないかと思います」と分析している。

 具体的にどのような制服が増えているのだろうか。

 吉川さんは、「男性用、女性用の色柄においての区別、識別が少ないものが圧倒的に選ばれています。もともと詰襟やセーラー服を採用していた学校は明らかに見た目だけで男女差が大きいのでブレザー化する傾向が強くなっています。その際にネクタイ、リボンをご用命いただく場合は、ネクタイに統一されています。リボンはやっぱり女の子のアイテムというのが理由ですね。女子のスラックスは必ず入れてほしいと言われます」と明かす。

 制服のカラーはどのような生徒でも抵抗なく着用できるものを用意している。「例えば、スラックスの柄というのはあんまり派手な柄にすると穿きづらい。ブレザーも紺やグレーがベースです。スカートはタータンチェックでかわいく、赤や青など華やかな色が主流でしたが、(ジェンダーレス制服は)スラックスとスカートが全く同じ柄で採用になるところもあります」と説明した。

従来の制服との比較【写真:カンコー学生服提供】
従来の制服との比較【写真:カンコー学生服提供】

セーター、カーディガンに加え、「パーカ」の選択肢

 また、高校ではパーカの導入が多いといい、「パーカはもともと男女の区別のないアイテムで、普段の着用時に性差を感じにくい、体型を拾いにくいといった理由でパーカを導入している学校が増えています。私服でもよく着用するアイテムですので、胸にエンブレムを付けることによって学校のものであることをしっかりと象徴します」。従来のセーター、カーディガンに加え、新たな選択肢になっている。

 止まらないジェンダーレスの流れ。一方で、制服に個性を出そうという動きもあると、吉川さんは言う。スラックスを取り入れ、多様性を認めるなかで、生徒の意見も制服に反映する。これまでは見られない傾向だという。

「今は在校生のキャリア教育を含めて、生徒参画型のプログラムは非常に増えています。メーカー決定までは教職員やPTAがしますが、制服デザインや仕様については生徒と一緒にメーカーが話をして生徒から見た視点を入れて最終的には作り上げていく。思いのこもった制服になっていっていると思います」

 制服は通学時に毎日着用するもの。青春時代を楽しく、気持ちよく過ごすための重要なアイテムだ。性的マイノリティーの生徒に配慮しつつも、あらゆる生徒が満足できるような制服をつくることは今までも、これからも変わることはないと吉川さんは語る。

「今後は、制服を通じて『自分らしさ』を表現する時代になるのではないかと思っています。性別によるアイテムの垣根はなくなり、柔軟な着こなしが楽しめるように学校も変わってきています。『ジェンダーレス』も『かわいい』も『かっこいい』もかなえる、そんな制服をつくっていきたいと考えています」と結んだ。

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