レストランで見知らぬ外国人に洋服褒められてドレス製作→まさかの“全世界配信”、実は著名人だった
レストランで見知らぬ外国人女性に着ていた洋服を褒められた日本人デザイナー。「どこで買えるかしら?」と尋ねられ、急いで同じ服を仕立てて渡すと、その写真が“全世界に配信”。そんな驚きのエピソードがネット上で話題になっている。投稿したケニア在住のデザイナー、Ayumi(@takiayumi)さんに聞いた。
「あなたの洋服あまりにも素敵で…どこで買えるかしら?」
レストランで見知らぬ外国人女性に着ていた洋服を褒められた日本人デザイナー。「どこで買えるかしら?」と尋ねられ、急いで同じ服を仕立てて渡すと、その写真が“全世界に配信”。そんな驚きのエピソードがネット上で話題になっている。投稿したケニア在住のデザイナー、Ayumi(@takiayumi)さんに聞いた。
「夫とディナーしていたとある夜。見知らぬ女性が『突然ごめんなさい、でもあなたの洋服あまりにも素敵で…どこで買えるかしら?』と。数日後にはアメリカに帰国するとのこと、制作スケジュールこじあけて間に合わせた。
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Ayumiさんがその写真を添えてSNSに投稿すると、3.7万件のいいね、3000件のリツイート、500万件以上の閲覧回数を記録するなど大きな反響を呼んだ。「素晴らしすぎる」「感動しております」「私もいつか着たい」「この方のインスタ見に行ったらアイコンになってましたね。最高です」「素敵なドレスですね!」など、エピソードに感激の声が相次いだ。Ayumiさんは「まさかイベントのプレミアで着てくれるとは…!」と驚きを込めた。
Ayumiさんは鳥取生まれ。日大芸術学部音楽学科を卒業後、レコード会社で勤務。洋楽を担当したことをきっかけに世界に興味を持ち、2014年、世界放浪の旅に出発する。約5年間で45の国と地域、171の都市を訪れる大放浪の末、アフリカのカラフルな布「キテンゲ」に魅せられ、たどり着いたケニアで19年4月ファッションブランド「ノマディック・アルティザン」をローンチ。現在は首都ナイロビに直営店をオープンさせている。
レストランでの外国人女性との出会いについて、ENCOUNTの取材に応じたAyumiさんは、「今回のレストランはナイロビ市内にあるホテル、Tribe Hotel(トライブホテル)内にあるレストラン、Jiko Restaurant(ジコレストラン)というところです」と説明する。
「レストランで話しかけられ、どこの洋服か聞かれたので、自分がデザイナーであることを伝えると、じゃあ注文できるかしら、となりました。その場でインスタグラムのアカウントを聞かれてフォローいただき、『ではお願いね!』とその夜はお別れしました。弊社は一点モノのブランドで、基本的には全て異なる布で全アイテムを制作しているのですが、私がその夜着用していたものと全く同じものがいいとのことで、翌日、布の仕入れ先に在庫を確認。運良く同じ布がまだあったのですが、もしかしたらその場の流れで欲しいって言ってくれただけかもな…と少しためらっていたら、夫が『そんなことない、本当に欲しそうだったから連絡しなよ!』と言ってくれ(笑)、インスタグラムのメッセージから『昨日はお会いできて光栄でした。ワンピースの件ですが、まだ興味があればお知らせください!』とメッセージを送ると、『もちろん!』とお返事をいただきました」
そこからは慌ただしく作業に追われる。「(女性は)ケニアには仕事でいらっしゃっていて、2日後の夜にはアメリカに向けてたつとのこと、急いで仕入れ先に連絡して布を購入、いつも配達をやってくれるバイク便のお兄さんに電話してスタジオまで運んでもらい、すぐに布の下処理と水通し。布が乾いた翌日にアイロンをかけ、裁断して、製作を開始しました。そしてその翌日に(出会ったレストランの入っている)宿泊先のホテル宛にバイク便でお送りしました」と、なんとか間に合わせた。
Ayumiさんの服はすべてハンドメイドで、デザインにもよるものの、1着の服を仕上げるためには最低でも1~2日かかるという。「私と、ケニア人正社員の裁縫士の方が2人おり、1着を1人で担当して作る場合も、1着を分業して作る場合もあります。仕上げは全て私が行います」
渡したドレスについては、「今年の春コレクションの新作として発表した、ピンタックスモックワンピースです。前後にそれぞれ30本以上のピンタックが施されている、とても繊細でエレガントなワンピース。襟を少し高めのハイネックデザインにし、肩にも少しタックをつけたりと、クラシカルでありながら袖はバルーンスリーブと、弊社ブランドらしい甘辛ミックスの長袖ワンピースです。背中ボタンにしたことで後ろ姿まで華やかな仕上がりです」という、自慢の作品だった。
外国人女性の素顔 「正直こんなに反響があるとは」
女性が米国に帰国すると、イベントに出席したときの様子が写真を世界100か国以上に提供するゲッティイメージズに掲載された。女性はカナダ人で、その素顔はナイロビ拠点の元外国特派員、現在はドキュメンタリーを中心とした映画製作者として活躍。全米監督協会、カナダ監督協会やカナダ作家協会のメンバーを務める著名人だった。女性は自身のSNSのアイコンにもAyumiさんから購入したドレスを着用する姿を公開するなど、とにかく気に入っている様子だ。
Ayumiさんの投稿はSNSで話題になり、大きな反響となった。
「正直こんなに反響があるとは思ってもおらず、ケニアは日本との時差が6時間遅いのですが、投稿した日は『わ~なんかたくさんの人にいいねもらってるなぁ』くらいだったのが、翌朝起きたらものすごい数のいいねとフォローの数になっていて一瞬固まりました。そしていつも通りパソコンを開けてメールを確認したらたくさんの受注メールが…。この時ようやく、『あれ、もしかしてすごい話題になったのかもしれない』と思いました」
作品は日本からでもオンラインで購入できるため、注文が殺到した。「そもそも大量生産のアンチテーゼとしてのスローファッションブランドなので、ゆえに一点モノを作っているし、そもそもの商品数もとても少ないです」としつつも、「ありがたい&びっくりすることに、オンラインストアは一晩でほぼ完売となりました」と感謝した。
Ayumiさんが服を作り始めたのはブランドを立ち上げる1年ほど前で、まだオーストラリアに住んでいる頃だったという。
「休暇で訪れた東アフリカ旅で出会ったアフリカの布、キテンゲに魅せられて『何かやりたい』と思ったところから、気づいたら日本からミシンを取り寄せ、自分で作り始めていました。なので洋裁は実は独学で、セカンドハンドの服を解体して仕組みを調べて学ぶという、今考えると特殊な始め方だったと思います」
日本から遠く離れたケニアがつないだ偶然の懸け橋。Ayumiさんにとって忘れられない出会いとなった。