Netflix3週連続1位の韓ドラ『ザ・グローリー』 キリスト教に囲碁がからむ斬新なストーリー

Netflixで配信中の韓国ドラマ『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』がグローバルな人気を集めている。同ドラマは3週連続で週間TVTOP10(非英語部門)の世界ランキング1位になっており、日本でも『今日のTV番組TOP10』で連日1位を走り続けている。

3週連続で週間TVTOP10(非英語部門)1位となった『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』【写真:(C)Netflix】
3週連続で週間TVTOP10(非英語部門)1位となった『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』【写真:(C)Netflix】

Netflix非英語ランキングに韓国ドラマが4本

 Netflixで配信中の韓国ドラマ『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』がグローバルな人気を集めている。同ドラマは3週連続で週間TVTOP10(非英語部門)の世界ランキング1位になっており、日本でも『今日のTV番組TOP10』で連日1位を走り続けている。

 今週のNetflix公式集計によると、同ドラマの累積視聴は4億1305万時間になり、同部門で歴代視聴時間6位に浮上した。注目されるのはNetflixTVの非英語部門グローバル10位内に韓国作品が4本も入っていることだ。圧倒的1位は累積視聴16億5045万時間を記録した『イカゲーム』、4位はゾンビを描いた『今、私たちの学校は』、6位は『ザ・グローリー』、7位が自閉症スペクトラム障害を持つ弁護士を描いた『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』だ。『ザ・グローリー』は後半の8話が公開されてからまだ1か月にならないほど。今後、どれほど視聴時間を伸ばすか関心が集まっている。

(※以下、ドラマの内容に関わる記述があります)

『パリの恋人』『トッケビ』『太陽の末裔』『シークレット・ガーデン』など大ヒットドラマを手がけたヒット脚本家のキム・ウンスク氏が手掛けたNetflixオリジナルシリーズ。 22年12月30日にパート1(前半)が公開され、23年3月10日にパート2(後半)が公開された衝撃の復讐ドラマだ。高校生の頃に悲惨な学内暴力を受けたヒロインが18年後になって加害者たちに次々と復讐を果たしていくサスペンスで、全身火傷だらけの小学校教員ムン・ドンウンを演じた俳優ソン・ヘギョの冷たい表情に圧倒される。笑顔を見せないドンウンは、かつてのイジメグループのリーダーで現在は大金持ちの社長と結婚して娘をもうけたお天気キャスターのパク・ヨンジン(イム・ジヨン)、ゴルフ場を経営し富裕層とつながっているチョン・ジェジュン(パク・ソンフン)、ジェジュンのパシリ役のソン・ミョンオ(キム・ゴヌ)、薬物依存症である画家のイ・サラ(キム・ヒオラ)、客室乗務員のチェ・へジョン(チャ・ジュヨン)らを制裁。視聴者はドンウンが張り巡らせた緻密な罠と、そこへと追い込まれるイジメグループの破滅に大きな快感を抱くだろう。

 同ドラマのポスターに登場する花は朝顔で、英語名は『Morning Glory』。花言葉は「うれしいニュース」だ。ドンウンの復讐が始まったという知らせを暗示している。正確な品種は毒を持つ「悪魔の朝顔」と呼ばれており、手術用麻酔剤として外科手術にも使用される。ドンウンの強力な協力者で彼女に囲碁を教えたチュ・ヨジョン(イ・ドヒョン)が成形外科医という設定なのも、ドラマタイトルと強い関係があるのだ。毎話のオープニング映像ではドンウンにからみつくヘビが強いインパクトを与えるが、キリスト教ではヘビは人間に原罪をもたらした邪悪な生き物で、脱皮を繰り返すことで死と再生を象徴する。神として崇拝される一方でその毒で人々に死をもたらす両義的な存在だ。

 イジメを受けた屈辱の日々から立ち上がったドンウンはヘビのような存在であり、夫からのDV被害者であるカン・ヒョンナム(ヨム・ヘラン)から敬意のまなざしを受けるのもこうした背景があるからだ。その“毒”は劇中で効果的に使われている。ヨンジンは医師のヨジョンから毒を射たれたと狼狽し、色覚異常のあるジェジュンは、まさしくドンウンの計略で毒を盛られ悲惨な最後を迎える。こうしてイジメグループは互いに疑い合い、反目し、自滅していく。高校生の頃とは違い、形勢が次々と逆転していく様子はまるで囲碁の勝負のようだ。この囲碁もオープニング映像に登場しておりストーリーの展開を予言している。

 注意が必要なのは単なる復讐だけではなく、親の存在が深く描かれていることだ。ドンウンの母親はアルコール依存症で娘を高校退学に追い込んだ血も涙もない大人。お天気キャスターのヨンジンの母親も最後に娘を裏切り保身に走る。一方、DV被害者のヒョンナムは身を捨てて娘を守ろうとする。ヨジョンをサポートする形成外科医ヨンジンの母親も息子が負った心の傷を心配している。ヨンジンには幼い娘がおりたいそうかわいがるが、それはもっぱら社長夫人の自分が幸せであることを確認したいから。娘の実の父親がジェジュンであることを夫に隠しているヨンジンは、ジェジュンが娘の出生の秘密を明らかにしたことで狂乱状態となる。

 ジェジュンが見せつける実の娘への執着は、地位、権力、財産、すべてにおいて自分より勝るヨンジンの夫への“復讐”でもあった。しかし、この復讐は成就せず泥沼へと沈んでいく。細かいキャラクター造型を含め深みがハンパない。韓国ドラマに詳しい放送ライターがこう話す。

「まずキリスト教に囲碁という組み合わせが斬新です。荒唐無稽とも思われる筋書きも最終話で伏線がキレイに回収され、しかもキャストの巧みな演技で視聴者をグイグイ引き込む。もうひとりのイジメの被害者だった火傷だらけの女性が実はソン・ミョンオに最後の一撃を加えていたとか、逮捕され収監されたヨンジンはその事実を一生知ることがない、つまりそのことが最強の復讐となっているところが実に奥深いですね。視聴者は改めてオープニングの映像にどんな意味が隠されているのか、推理してみるのも楽しいでしょう」

 世界的大ヒットを背景に韓国メディアからは第2弾の放映を希望する声が上がっている。今シリーズの最終話では、互いの愛を確かめた主人公ドンウンと医師ヨジョンが、冷酷な殺人者への復讐に向かう姿が描かれた。続編は大いに期待できそうだ。

次のページへ (2/2) 【動画】『ザ・グローリー』のNetflix公式映像
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