計量へは「毎日怖さがある」 平田樹が戦うもう1つの敵、よぎる階級変更「上げたいなとも」

「あと400グラムです」――。試合まであと3日となった平田樹。25日に開催される「ONE Fight Night 8」(ABEMAで完全無料生中継)でハム・ソヒ(韓国)と対戦する。顎のラインはシュッと引き締まっている。もう“計量失敗”は許されない。平田の表情には自信と不安が見え隠れしていた。

終始穏やかな表情だった平田樹
終始穏やかな表情だった平田樹

栄養士をつけ、体調は万全

「あと400グラムです」――。試合まであと3日となった平田樹。25日に開催される「ONE Fight Night 8」(ABEMAで完全無料生中継)でハム・ソヒ(韓国)と対戦する。顎のラインはシュッと引き締まっている。もう“計量失敗”は許されない。平田の表情には自信と不安が見え隠れしていた。

 格闘家になる前、平田は柔道エリートだった。ウルフ・アロン(東京五輪金メダル)らを輩出する名門の講道館・春日柔道クラブに所属し、小学生時代から全国出場、高校でもインターハイ出場経験のある実力者だ。ABEMAのリアリティー番組『格闘代理戦争』を経て、アマチュアMMAでは4戦4勝(4SUB)、プロに転向してからアジア最大の格闘団体「ONE」の舞台で6勝(2KO)1敗。アトム級2位との対戦までステップアップしてきた。

 しかし、平田には“計量失敗”のイメージが定着してしまっている。

 2020年2月に行われたナイリン・グローリー戦、22年8月のリン・ホーチン戦でONE独特の尿比重テストを伴う計量をクリアできずキャッチウエイトでの試合に。昨年11月には日本人にもなじみのある韓国人ファイターのソヒと対戦予定であったが、クリアできず、キャッチウエイトでの試合をソヒも拒否したためこの試合は消滅した。キャリア3度目の計量失敗だった。

 今回はクリアできるのか。ファンにはそんな思いもよぎるが、自分との戦いである減量に勝つため、食事面を徹底管理。尿比重についても学んできた。

「栄養士を付けてもらっています、食事を毎日連絡を取り、自分の体と相談しながら、摂取しています」

 試合が消滅してしまった11月は計量当日にジャストの予定で体を作っていたが、今回は全く違う。「あと400グラムです。アンダーまで落としてから入ろうと思うので、もう少し動いてから、明日の夜まで過ごします」と落ち着いた表情だ。

昨年11月、試合消滅可能性があるなかでフェイスオフに臨んだ平田樹(左)【写真:ENCOUNT編集部】
昨年11月、試合消滅可能性があるなかでフェイスオフに臨んだ平田樹(左)【写真:ENCOUNT編集部】

アンチ上等「めっちゃイラつく、でも結局試合見るじゃん」

 試合前の平田といえば殺気だ。昨年11月には試合が消滅する可能性があるなかで、ソヒとのフェイスオフに臨んでいたが、顔からは疲れや怒りがにじみ出ていた。当時を「練習をしただけで終わったので、何も見せられずに終わったことの悔しさと自分に負けたなという感じ」だったと振り返る。しかし、今回のインタビュー中は穏やかな表情が印象的だった。その胸中には、やはり計量への不安があるという。

「毎日、怖さがあります。きつくなると階級を上げたいなとなるんですけど、それは試合が終わってから考えようと思います」

 3度目の失敗には多くの非難の声が寄せられた。一部の者からは関係のない誹謗中傷の言葉をぶつけられることもあった。アンチも平田の心に何か影響を与えているのか。それは杞憂に過ぎなかった。

「めっちゃイラつく立場の存在です。でも結局(自分の試合を)見るじゃんって思っちゃいます。本当はコメント返したいんですけどね(笑)」

 強気な平田が戻る。SNSにアンチもいながら、インスタグラムのフォロワー数は21万超。日本の女子格闘家の中ではずば抜けてトップだ。試合直前のこのタイミングでも増えているという。

「(SNSの)見せ方とかは特にない。普段の自分を出しているだけで、みんなが反応してくれる。試合前に私はフォロワーがどんと増えても対戦相手(ソヒ)は増えていないですよね。その点でも差があると思います」とフォロワー数1.7万人のソヒを鼻で笑った。

 前代未聞とも言える3度の計量失敗を経ても、試合が組まれる。稀有(けう)な存在だ。オファーに何を思うのか。

「やっぱりそれだけ見たいカードだということですし、チャトリさんの『信じてるからやりなさい』という言葉もあるので、今回は裏切らないように試合をします」

 強気な発言とアジアンビューティーな見た目で人気の23歳だが、その裏には不安と自信が入り混じる等身大の姿がある。まずは計量で自分に打ち勝ち、本当の実力を見せつけたい。

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