「ゴミ置き場が汚い会社は6年以内につぶれる」 マシンガンズ滝沢秀一が見てきたゴミ捨ての実態
お笑い芸人とゴミ清掃員という、二足のわらじで活動しているマシンガンズの滝沢秀一。妻の妊娠がきっかけとなり、2012年に収入を支えるためゴミ収集会社に就職した。ゴミ回収の現場や分別方法などのSNS発信が人気となり、現在はゴミや環境問題をテーマにした著書執筆やイベント開催などを精力的に行っている。今回、滝沢が22年秋からスタートしたコミュニティー「滝沢ごみクラブ」の定期イベントを取材。11年にわたってゴミ回収の現場を見てきた滝沢だからこそ知る、「お金持ちと一般人のゴミの違い」を聞いた。「滝沢ごみクラブ」では、滝沢がインタビュアーとなりゲストに話を聞くトークショーを開催している。今回は、「ゴミ拾い仙人」として地域のゴミ拾いを行い、『ゴミ拾いをすると、人生に魔法がかかるかも♪』(あさ出版)の著者でもある株式会社プリマベーラ会長・吉川充秀氏を招いてトークショーを行った。吉川氏が年商47億円の会長ということもあり、滝沢はトークショーでも「お金持ちエリアと一般エリアのゴミの違い」を語っていた。
高級住宅街のゴミから感じた清掃員への配慮「ゴミから人の気持ちが分かる」
お笑い芸人とゴミ清掃員という、二足のわらじで活動しているマシンガンズの滝沢秀一。妻の妊娠がきっかけとなり、2012年に収入を支えるためゴミ収集会社に就職した。ゴミ回収の現場や分別方法などのSNS発信が人気となり、現在はゴミや環境問題をテーマにした著書執筆やイベント開催などを精力的に行っている。
今回、滝沢が22年秋からスタートしたコミュニティー「滝沢ごみクラブ」の定期イベントを取材。11年にわたってゴミ回収の現場を見てきた滝沢だからこそ知る、「お金持ちと一般人のゴミの違い」を聞いた。
「滝沢ごみクラブ」では、滝沢がインタビュアーとなりゲストに話を聞くトークショーを開催している。今回は、「ゴミ拾い仙人」として地域のゴミ拾いを行い、『ゴミ拾いをすると、人生に魔法がかかるかも♪』(あさ出版)の著者でもある株式会社プリマベーラ会長・吉川充秀氏を招いてトークショーを行った。吉川氏が年商47億円の会長ということもあり、滝沢はトークショーでも「お金持ちエリアと一般エリアのゴミの違い」を語っていた。(取材・構成=コティマム)
――トークショーでも話されていましたが、お金持ちのゴミは特徴があるようですね。
「僕は民間のゴミ清掃委託業者に所属しているので、その日によって回収する場所や回収するものが違います。だからお金持ちのゴミと一般人のゴミの比較もできます。高級住宅街はそもそもゴミの量が少ない。たばこの吸い殻も少ない。ゴミの種類も健康グッズや高級美容液、テニスボールなどが多い。逆に一般的な住宅街はゴミの量もタバコの吸い殻も多いです。栄養ドリンクや発泡酒、握手券付きのCD、100円ショップなどで買える安いカゴもよく捨てられています」
――そんなに違いがあるのですね!
「お金持ちは消費の仕方が違う。お金持ち地域は、子どもが勉強するドリルなんかも多い。塾オリジナルのドリルが定期的に出てくるので、『教育にお金をかけている』というのが分かる。ドライフラワーやフルーツなんかも出てくる」
――そこまで分かるんですね。捨てる側はそこまで見られていると思わないですが……。
「見ようと思って見ている訳ではないのですが、見えてしまいます! 分別していなければ、当然、違反ごみが入っているんじゃないかと調べますし。汚いところは汚い。清掃員も人間ですから、『この人ちゃんとやってくれてるな』って分かる。高級住宅街では、ティッシュの箱に竹串を入れてくれていた人もいた。清掃員に竹串が刺さらない配慮だなと感じます。ゴミから人の気持ちが分かるんです。配慮してくれているとうれしいですよね」
――滝沢さんのツイッターでは、「カレー爆発」が話題になっていました。カレーをそのまま捨てたら大変なことになるのですか。
「カレーをそのまま袋に入れて捨てると、清掃車に入れたときに潰されたものが飛び散ってきます。カレーが入っていることに気づかずに入れてしまって爆発する。他にもシチューとか、ようはゴミ汁ですね。各家庭で絞られていない生ゴミの汁。思った以上に、絞ってくれない人が多いです。誰が回収するか、その後どうなるかって気にしてないので、みそ汁や、おしっこを入れる人もいる」
――そんな人もいるのですか……。
「1人の“民度”でだいぶ変わります。1人が汚く出していたら、周りも汚く出す。ゴミって伝染するんです。ペットボトルのラベルも、1人がはがさないで出したら、『はがさなくても持っていてくれるんだ!』と周りもはがさなくなる。きれいなところはきれい、汚いところは汚いです」
洋服を月額7800円のレンタルに、お金持ちのゴミを見て「消費が変わりました」
――トークショーでは、ゴミの状態で会社の状況も分かるとおっしゃっていました。
「ゴミ置き場が汚い会社は、6年以内につぶれます。これはゴミ清掃員になって、たまたま6年目に気づいたんです。『そういえばあの会社なくなってる、あの会社もなくなってる』って」
――ゴミの分別ができていない会社は、なくなっていたと。
「もちろん、ゴミを分別しないことが直接つぶれることはつながらないけど、ゴミ置き場が汚いと『愛社精神はないのかな』と思います。『この会社を大きくしよう』と思ったときに、『このゴミの出し方をしたらどう思われるか。うちの会社恥ずかしいよな』と想像力が働くかどうか。そういう人がいなかったり、上司が管理できていなかったり、表ではちゃんとして裏ではテキトーとか。それがほころびになっているのかな」
――ゴミの捨て方に人間性が表れているのかもしれませんね。
「まさに人間性が表れる。包丁をそのまま捨てる人はそういう人間。想像力が足りない。捨てた時点で終わり。『そこから先に回収する人がいる』って考えられないんです。生きる営みの中にゴミ捨てがあるので、そこをちゃんとできない人ってどうなのかなと思って。だから自分のことも直しました」
――清掃員になってから「直した、変えた」ことを教えてください。
「お金持ちのゴミをまねしています。まず消費が変わりました。特に洋服。今までもそんな買っていたわけじゃないけど、先輩から譲り受けていました。でも結局ゴミで出しているので、レンタル洋服に変えました。1か月3着とズボン1着で、コーディネーター付で月7800円です」
――服をレンタルですか!
「1か月たったら返すので、物が溜まらないのがすごく心地いい。だいたいどこの家庭でも、25着くらいは洋服が溜まってるんですって。それを超えると断捨離を始めてゴミが出る。レンタルすればそういうことがなくなります。あとは、100円ショップもやめました。もちろん100円ショップが悪いわけではないですが、『簡単に捨てないもの』を買おうと」
――その他に意識したことはありますか?
「やはり捨て方です。実は僕の家のゴミは、僕の清掃員仲間が回収してるんです。直接僕がゴミを渡すこともある。だから、(余計に配慮して)分別する。僕が飲んだペットボトルじゃなくても、ラベルやキャップがそのままだったら外して渡します。先ほどの『伝染する』じゃないけど、僕がラベルをはがして半年たつと、周りもそれをやってくれるようになった。僕が見本を示せたのかな」
――考えや行動がゴミに反映されていますね。
「すべて、『人の見てないところでどうやって捨てるか』です。ゴミっていうのは『人の見てないところで、どういう自分でありたいか』を表していると思います」
□滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)東京都出身。1976年9月14日生まれ、46歳。98年に西堀亮とお笑いコンビ・マシンガンズを結成。『THE MANZAI』2012・14年認定漫才師。12年からゴミ収集会社で清掃員として勤務。ゴミ回収の現場の様子や分別などの知識をSNSで発信し、環境問題や食品ロス問題に取り組む。現在は自身の体験をもとに講演会やコミュニティ「滝沢ごみクラブ」などの活動を行う。環境省サステナビリティ広報大使。著書に『このゴミは収集できません』(白夜書房)、マンガ『ゴミ清掃員の日常』(講談社)、『ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本』(太田出版)など。