マシンガンズ滝沢秀一が“ゴミ清掃員芸人”になったワケ「このままだと精神がもたない」

お笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一。お笑い芸人とゴミ清掃員という、二足のわらじで活動している。すでに芸歴は20年超えだ。しかし今から11年前の2012年、妻の妊娠をきっかけに、収入を支えるためゴミ収集会社に就職。当初は「芸人で売れたら辞めよう」と思っていたが、現在も続けている。ゴミ清掃員として日々経験する現場の様子をSNSで発信し、ゴミの仕分けや捨て方などをレクチャーしていくうちに、ツイッターのフォロワーは16万人に。また『このゴミは収集できません』(白夜書房)や『ゴミ清掃員の日常』(講談社)といった、ゴミ関連の著書も次々と出版。さらに環境省から「サステナビリティ広報大使」にも任命され、現在はゴミをテーマにした講演やイベントで多忙な日々を過ごしている。今回、滝沢が2022年秋からスタートしたコミュニティー「滝沢ごみクラブ」の定期イベントを取材。ゴミ清掃員としての日々や思いを聞いた。

お笑い芸人とゴミ清掃員の二足のわらじで活躍するマシンガンズ・滝沢秀一【写真:ENCOUNT編集部】
お笑い芸人とゴミ清掃員の二足のわらじで活躍するマシンガンズ・滝沢秀一【写真:ENCOUNT編集部】

M-1王者の姿を見て固めた決意「日本一のゴミ清掃員になろう」

 お笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一。お笑い芸人とゴミ清掃員という、二足のわらじで活動している。すでに芸歴は20年超えだ。しかし今から11年前の2012年、妻の妊娠をきっかけに、収入を支えるためゴミ収集会社に就職。当初は「芸人で売れたら辞めよう」と思っていたが、現在も続けている。

 ゴミ清掃員として日々経験する現場の様子をSNSで発信し、ゴミの仕分けや捨て方などをレクチャーしていくうちに、ツイッターのフォロワーは16万人に。また『このゴミは収集できません』(白夜書房)や『ゴミ清掃員の日常』(講談社)といった、ゴミ関連の著書も次々と出版。さらに環境省から「サステナビリティ広報大使」にも任命され、現在はゴミをテーマにした講演やイベントで多忙な日々を過ごしている。

 今回、滝沢が2022年秋からスタートしたコミュニティー「滝沢ごみクラブ」の定期イベントを取材。ゴミ清掃員としての日々や思いを聞いた。(取材・構成=コティマム)

――ゴミ清掃員を始めた当初はどのような思いでしたか?

「最初は嫌だったんですよ。本当はお笑いだけで暮らしたいのに、目の前ではゴミを回収している。(捨てる人の中には)うそをつくやつや分別しないやつもいる。腹立ってたんですよね。

 僕は1998年にマシンガンズを結成して、同じ年のデビューにサンドウィッチマンがいます。あるときお笑い番組を見ていたら、M-1王者の彼らがMCから一番遠い席に座っていたんです。あのサンドウィッチマンがあの席に座っているの? 『俺みたいなもんが売れるのか?』って……。このままだと精神がもたないと思いました。

 つらいだけの仕事は嫌じゃないですか。1日の大半が仕事の時間なのに、それを毎日苦しいままやるのはつらいから、清掃員の仕事を進んでやるようになりました。そのときに、『日本一の清掃員になろう』と決めました」

――「日本一の清掃員になろう」と決めて、心がけたことは?

「どうしたらクレームが出なくなるだろうと考えて、道行く人全員にあいさつしてみたり、分別してもらうために現状を発信したり。自分が『問題を追う側』になったら、気持ちがぐっと楽になりました。すべて気持ち次第ですね」

――今でこそ分別に詳しいですが、最初は知識ゼロ?

「全くないです。わけ分かんなかったです。『少量であれば不燃ごみで出していい』『ここの地域はダメ』とか、地域によって全然違う。『渋谷区って大丈夫なんでしたっけ?』と、仲間に聞いて繰り返し覚えていきました。そうするとだんだん興味が出てきて、今まで見たこともなかった自分の地域のゴミパンフレットを見たり。『1回に出していい量は3袋なんだ』とか、知らないでしょ?」

――知らないです!

「どこの自治体も1回に出していい量は3~4袋って決まりがあります。僕もそんなことすら知らなかった。1軒のお宅が20袋出したら満杯になって、その後は回収できない。だから1回につき3袋までと決まっています」

――滝沢さんレベルになると、ゴミ袋を持っただけで内容が分かったりするのでしょうか?

「そういう勘はあります。袋を持っただけで分かる。怪しい雰囲気の袋を開けたら、タオルでぐるぐる巻きに隠されたスプレー缶が出てきたり。これは僕だけじゃなく、半年もすれば清掃員みんな身につきます。1日何千というゴミを回収してるので、重みや『なんか中で動いたな』って違和感があるんですよ。ペコって小さな音が鳴ったり、缶の音だったり。『瓶1本くらい隠しても大丈夫だろう』って思っても、だいたいバレてます。ゴミのプロです、みんな」

2022年秋からスタートしたコミュニティ「滝沢ごみクラブ」でトークショーを開催【写真:ENCOUNT編集部】
2022年秋からスタートしたコミュニティ「滝沢ごみクラブ」でトークショーを開催【写真:ENCOUNT編集部】

ゴミは生きる営みの一環「捨てた後、燃やした後にどうなるのかを知るべき」

――11年の中で困ったゴミや「最強のゴミ」はありますか?

「僕が袋をつかもうとしたときにベテラン清掃員から大声で止められて、その中に使用済注射器がいっぱい入っていたり。夏場はペットボトルが圧倒的に多くて、熱中症になるような気温の中で走って回収するのが本当に大変です。僕は実際に見たことがないですが、運転手が『これが一番最“恐”。最も恐ろしい』と言っていたのは、充電式の湯たんぽ」

――充電式の湯たんぽ?

「その中に入っている、リチウムイオン電池ですね。あれ、すごく小さいですけど、圧迫されると燃え始めるんです。その場で燃えれば対処できますが、40分後に急に燃えたりする。それが清掃車火災に結びつくんですね。ゴミの中に入っているから取り出せないし、燃える素材があればブワっと広がる」

――恐ろしい!!

「携帯用の扇風機も、素材がプラスチックなのでプラスチック資源に捨てる人もいます。あれが発火すると、まわりが全部プラスチックなのですぐ燃える。無知が大火災につながります。その中の最“恐”が、充電式の湯たんぽ。もともと熱を持たせて温めるものなので、これが圧迫されると簡単に火が出る。運転手も『あれだけは一番気をつけてくれ』と言っています」

――リチウムイオン電池の入ったものは、どうやって捨てたらいいのでしょうか?

「不燃ゴミで出していい地域もあるし、袋を買って危険物として出すとか、拠点回収もあれば自分でメーカーに持って行く場合もある。買うときに、捨てるときのことを考える人ってあんまりいないんですよ。『どうやって捨てるんだろう』と、1回考えてくれるとうれしいです」

ゴミに関する著書も多数執筆。トークショー後はサイン会も【写真:ENCOUNT編集部】
ゴミに関する著書も多数執筆。トークショー後はサイン会も【写真:ENCOUNT編集部】

――ゴミ出しをする人たちに伝えたいことは?

「ゴミって、生きる営みの一環だと思うんです。お金を稼ぐ、恋愛をする、寝る起きる、ご飯を食べる、そういう生きる循環の中に、ゴミを捨てる(という行為)も入っている。でもゴミは見向きもされないもので、考えたくない人もいる。日本のゴミの最終処分場の量は、残り20年くらい。みんなが考えてない結論がそういうことだと思う。『自分で使ったものをちゃんと処理する』ということが大事。『安いから捨てりゃいい、燃やせばいい』ではなくて、自分の買ったもの、使ったものがどうなって、捨てた後、燃やした後にどうなるのかを知るべきだなと思います」

――これからもゴミ清掃員を続けますか?

「もちろん続けます。これが本業といいますか。僕の目標は日本一の清掃員になることと、日本のゴミを減らすこと。ゴミについて知りたいと思ってくれる人がいるから、これからも現場に立って現状を知りたいです」

□滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)東京都出身。1976年9月14日生まれ、46歳。98年に西堀亮とお笑いコンビ・マシンガンズを結成。『THE MANZAI』2012・14年認定漫才師。12年からゴミ収集会社で清掃員として勤務。ゴミ回収の現場の様子や分別などの知識をSNSで発信し、環境問題や食品ロス問題に取り組む。現在は自身の体験をもとに講演会やコミュニティ「滝沢ごみクラブ」などの活動を行う。環境省サステナビリティ広報大使。著書に『このゴミは収集できません』(白夜書房)、マンガ『ゴミ清掃員の日常』(講談社)、『ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本』(太田出版)など。

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