「教師辞めるなんてもったいない」 13年勤めた女性が収入減でも決断したワケ 非常勤の実情とは

「教師辞めるなんてもったいない」――。周囲から言葉をかけられながらも、新たな道を歩む決断をした女性がいる。2年前の春に小学校教師を退職した、ぺんぎんさんだ。現在は非常勤講師として教育界に引き続き力を添えており、今春に念願のピアノ教室を開校。「安定した収入はなくなった」が、新たな可能性を見いだすことに喜びを感じているという。学校の先生を辞めて感じたこと、リアルなメリット・デメリットとは。

教師を退職した後のセカンドキャリアをどう描いているのか(写真はイメージ)【写真:写真AC】
教師を退職した後のセカンドキャリアをどう描いているのか(写真はイメージ)【写真:写真AC】

現在も教育界に携わる 念願のピアノ教室開校 “なんでもかんでも教師がやらないといけない”の課題点

「教師辞めるなんてもったいない」――。周囲から言葉をかけられながらも、新たな道を歩む決断をした女性がいる。2年前の春に小学校教師を退職した、ぺんぎんさんだ。現在は非常勤講師として教育界に引き続き力を添えており、今春に念願のピアノ教室を開校。「安定した収入はなくなった」が、新たな可能性を見いだすことに喜びを感じているという。学校の先生を辞めて感じたこと、リアルなメリット・デメリットとは。(取材・文=吉原知也)

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「『教師辞めるなんてもったいない。』
たくさんの人から言われた。確かに、これまでの努力、手厚い福利厚生、安定した収入はなくなった。でも教師としての経験は今も非常勤講師として働くのに十二分だし、自分の人生を楽しむ時間ができた。
一度きりの人生、楽しめない方がもったいない」

 就職や転職、進学など、多方面で新生活が始まる春の季節。今月14日、ぺんぎんさんは、改めて自分に言い聞かせるようにこうツイートした。

 ぺんぎんさんは、公立小学校に13年間(産育休3年含む)勤め、2年前の2021年3月末に退職した。子どもが4月から小学生になるタイミングだった。ただ、教育界から完全に退いたわけではなく、非常勤講師として勤務。現在は支援員として働き、「後補充」と呼ばれ、初任の教師が出張の日に代わりに担任を受け持つ仕事もこなしている。

 教師人生にひと区切りを付け、新たな夢をかなえた。「私は音楽を専門に勉強していたため、退職後、自宅でピアノ教室を開く準備をしてきました」。このほど、ピアノ教室に初めて、体験レッスンの生徒を迎え入れ、「ドキドキワクワクです」。ピアノの“先生”として、新たな船出だ。また、「メルカリの出品や、個人的に楽譜作成の依頼をいただくなど、細々とやっております」という。

 安定した公立校勤務から、自分の裁量次第の個人事業主への転職。正直なところ、お金の面はどうなのか。「収入面に関してはもちろん、かなり減りました。ボーナスもありません」と明かす。

 それでは実際のところ、働き方や労働環境などはどう変化したのか。メリットについて、「支援員と後補充として働いているので、決まった時間学校で働くだけでいい。自分の業務が少なく負担が軽い。子どもの急な体調不良や参観日など休みがとりやすい。自分の子どもと過ごせる時間が増える」ことを挙げる。さらに、副業が可能になるため、「自宅でさまざなビジネスに取り組める」ことも魅力的だという。

「今の現場は『先生方の善意で成り立っている』と感じています」

 一方のデメリットは。「収入は減る。非常勤は1年ごとの契約のため、次年度も同じように働けるかの保証がない。福利厚生は充実していない」。実情を教えてくれた。

 教師生活で学んだことをどう生かしているのか。「一言では難しいですが、ピアノ教室なら子ども一人ひとりに寄り添った指導ができるのでは、と思っています。支援を必要とする子どもたちと過ごしていますので、一人ひとりの個性や発達の特性に応じた声掛けの仕方、支援などができるかと思います」とのことだ。

 ここのところ、教師の労働環境は「ブラック」との指摘が相次いでいる。社会課題として、環境改善は急務だ。

 ぺんぎんさんは「学校というところはビジネスとは無関係です。営業もない、売上もない、子どもの成長がすぐに現れるわけでも、数字で見えるものでもないです。そこが教育の面白いところでもあり、難しいところでもあると思います」と話す。

 そのうえで、教育現場の現状についても言及。「ただ、今の現場は『先生方の善意で成り立っている』と感じています。奉仕の精神が強すぎるように思うのです。先生方みんな面倒見がいいので、とことん子どものために頑張ってしまいます。ビジネスならサービス精神旺盛すぎて赤字だな、と思います」との見方を示す。“なんでもかんでも教師がやらないといけない”。そういった空気感の解消がポイントの1つになるといい、例えば「プール掃除やワックスがけなどは、外部に委託してほしいです」と挙げる。

 教育界への貢献・サポートへの思いは強い。先生たちの教育現場の大変さにも思いをはせながら、恩返しの気持ちを持って、こんな理想像を描いている。「私は将来的に学校の先生を助けるモノ(コンテンツや教材など)を作りたいという夢があります。現場の人手不足は重々承知で、担任として働くことが一番の手助けなのはもちろんなのですが、私の教師経験を生かして何かできればと考えているところです」。元教師だからこそできることを目指しているという。

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