白鳥大珠が感じたプロ野球選手との差 メジャースポーツへの悔しさ「愛車は、住みは、服は?」

キックボクシング団体「RISE」と「K-1」の対抗戦が12日、26日に行われる。26日大会の「Cygames presents RISE ELDORADO 2023」(ABEMAで完全無料生中継)には27歳の白鳥大珠(TEAM TEPPEN)が出場する。今年は「バズる」ことが目標の白鳥がプライベートでのプロ野球選手との交流で感じた刺激を明かした。

プロ野球選手との交流を明かした白鳥大珠【写真:ENCOUNT編集部】
プロ野球選手との交流を明かした白鳥大珠【写真:ENCOUNT編集部】

MMA転向の可能性はゼロ「やるつもりは全くない」

 キックボクシング団体「RISE」と「K-1」の対抗戦が12日、26日に行われる。26日大会の「Cygames presents RISE ELDORADO 2023」(ABEMAで完全無料生中継)には27歳の白鳥大珠(TEAM TEPPEN)が出場する。今年は「バズる」ことが目標の白鳥がプライベートでのプロ野球選手との交流で感じた刺激を明かした。(取材・文=島田将斗)

「キックボクシングで夢を見せていく」――。そう話す白鳥の目には一切の迷いがなかった。

 昨今の日本格闘技界では、キックボクシングからMMAに挑戦する格闘家が増えている。平本蓮は2020年に、久保優太は21年に転向。昨年大みそかには芦澤竜誠がK-1からRIZINに移籍。4月1日にはこちらも元K-1ファイターの皇治との一戦だが、いずれはMMAに挑戦することも示唆している。鈴木千裕は二刀流。キックボクシングにも参戦しながら、MMAで着実に実績を伸ばしてきた。昨年10月に白鳥が戦ったYA-MANも今年5月には、初のMMA戦を行う。

「僕は、格闘技のなかでキックボクシングが1番好きです。今、懸念しているのがMMAに流れていく人が多いこと。より影響力のある人が転向していくので、MMAばかりに子どもたちも関心を持ち始めてしまうので、キックボクシングで夢を見せていかないとなと思います」

 挑戦自体を否定することはないが、それと引き換えにキックボクシングを落とす一部の格闘家の発言には思うところがあるようだ。

「キックボクシングの方が規模が小さいとか、それ“プロ”が言っちゃダメですよね。格闘技全体で夢を見せていくなかで、ネガティブな発言は良くない」

 なぜ、MMAへの挑戦が増えているのか。格闘家目線での考えをこう推測する。

「結局は国内のRIZINの注目度。みんな注目されたいので、あの舞台を目指していますよね。MMAの方が稼げるとか、米国に大きな舞台・UFCがあったりという部分もあると思います」

 昨年末から23年の目標は「バズること」と語ってきた白鳥。注目度の高いMMAへの転向の可能性については全否定した。

「挑戦している選手は率直にすごいと思います。僕も『MMAやらないの?』って言われるんですよ。でも、正直やるつもりは全くないです。自分が好きで憧れて始めたものなのでキックボクシングを大きくしたいという気持ちが強いです。はやりに乗っかろうとは思わないです」

「一緒にいると悔しさを感じる」と語った白鳥大珠【写真:ENCOUNT編集部】
「一緒にいると悔しさを感じる」と語った白鳥大珠【写真:ENCOUNT編集部】

同い年のプロ野球選手・田口麗斗投手との交流が刺激に

「夢を見せていく」。白鳥にはこう考えるに至ったきっかけがあった。プロ野球選手との交流もそのひとつだという。今年1月にはヤクルトの田口麗斗投手(27)とトレーニングする姿を見せていた。定期的に食事をするほどの仲だといい、刺激にもなっていた。

「一緒にいると悔しさを感じるんですよ。『車は何乗ってる』とか『どういう所に住んでる』、『何を着てる』もそうだし、僕が細かいところを見ちゃうんですよね(笑)」

 さらに「そういうのを意識し始めると悔しいし、俺ももっと頑張らないといけないなって思うんですよね。一緒にいても野球選手には余裕があります。同い年でも『俺がおごるよ』となるんですよ。そこは交互にやり取りはしているんですけど、それでも野球選手は余裕があるんですよね」と続ける。

 その上で「メジャースポーツとの交流には学びがある」と深くうなずき、“プロ”とは何であるかを口にした。

「やっぱり憧れられる人物であるべき。アマチュアのように試合だけをしていればいいわけではないです。プロってすごいな、プロにはそう簡単にはなれないって思うものを見せたいですよね。プロ野球選手になれるかと聞かれたら、すぐなれないとみんな思います。格闘技ってすぐにプロになれちゃうイメージがあるので、そこは変えたいですよ」

 白鳥の言う「バズる」は単に知名度を集めるという簡単なことではない。キックボクシングを大きく言えば格闘技を変えたいという強い気持ちだ。

「年俸も公開されているので、野球選手が稼いでるって幼い子どもでも分かるじゃないですか。今は(格闘技界も)YouTubeや他の仕事で稼いでいるケースはあるんですけど、僕はもっと“格闘技で”食べていっているというのを分かりやすく見せていきたい」と熱い。

 クールな姿が印象的な白鳥がまくし立てる。

「キックボクシングで、これだけ稼げるよとか、活躍すればこういうもの買えるよとか、見せていくべきだと思いますよね」

今後の展望を明かした白鳥大珠【写真:ENCOUNT編集部】
今後の展望を明かした白鳥大珠【写真:ENCOUNT編集部】

「まずは日本からイメージを変えたい」

 それでも「子どもに夢を与えていかないと」と繰り返す白鳥。キックボクサーとしてどう見せるのか。悩みがある。

「クリーンなイメージって大事だと思います。井上尚弥選手、堀口恭司選手に悪いイメージはないじゃないですか。メジャーになっていくのはそこが必要。目先の数字で言うと、乱闘とかってやっぱり見たくなりますよね。でもそこに頼りたくはない。ただそれを超えられる何かがあるかと言えば、現状はないんですよね……」

 そして「格闘技というジャンルが難しいんですよね。もともと野蛮なイメージを持たれたりもしているので」と肩を落とした。

「見せ方」という点で一目置いている選手がいる。平本蓮だ。試合だけでなく、ツイッターではトラッシュトークを展開。インスタグラムでは日常の様子や私服などを投稿している。ファッションブランドとのコラボレーションまでもこなす、まさにSNSを駆使する新時代の格闘家と見る向きもある。「方向性は全く違いますけど」と笑いつつも白鳥は絶賛した。

「自分の見せ方を分かっていて、注目したくなるんですよね。勝ってるところも見たいし、負けるところも見たい。いろんな層が注目するようなやり方がうまい。あとは小さい子だったり、同性の若い子が憧れになるような見せ方をしていますよね。ツイッターは別ですけど、インスタグラムはおしゃれな感じを見せたりしていて、うまいなと思います」

 26日はK-1との対抗戦。佐々木大蔵と対決する。白鳥が一番好きな格闘技・キックボクシングで、自分は見せていく。

「まずは日本からイメージを変えたい。変えられれば夢が広がる。そのためには、僕ら選手ひとりひとりが意識しないといけない」と真っ直ぐに見つめる。

 2023年、どんな姿を見せてくれるのか。白鳥が“キックボクシングの逆襲”をスタートさせる。

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