セーラームーン大好き、フランス発の24歳歌姫…多様性あふれるロロ・ズーアイ
甘美でミステリアスな歌声が魅力的なフランス発のシンガー・ソングライター、ロロ・ズーアイが、今夏開催された音楽フェス「サマーソニック」で来日初公演を果たした。最新の音楽ジャンル「トラップ」を取り入れ、多様性あふれる音楽で世界の人気を集めるだけでなく、有名ファッションブランドのキャンペーンにも起用。多方面で活躍をみせる注目の24歳がインタビューに応じた。
「混在した街の雰囲気から影響」のアイデンティティー
シンガー・ソングライター、ロロ・ズーアイが、今夏開催された音楽フェス「サマーソニック」で来日初公演を果たした。最新の音楽ジャンル「トラップ」を取り入れ、多様性にあふれる音楽で世界の人気を集めるだけでなく、有名ファッションブランドのキャンペーンにも起用。多方面で活躍をみせる注目の24歳がインタビューに応じた。
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<フレンチ―アルジェリアンのロロ・ズーアイは、フランスを代表するシャンソン歌手エディット・ピアフから、2000年代の「ベイエリア・ヒップホップ」まで幅広い音楽から影響を受け、高校生の頃からスマートフォンのアプリを駆使してソングライティングを始めた。今年4月に自身初のアルバム「High Highs to Low Lows」を発表するなど音楽界で躍進。ファッション界でも注目を集め、Tommy Jeans 2019春夏キャンペーンやCOACH FALL 2019 グローバル広告キャンペーンに起用されている>
──サマーソニックのステージはいかがでしたか。
「開演前は、数十人くらいのお客さんしかいなかったので、心配していたんですけど、始まった瞬間に大勢の方が集まってくださって本当に驚きました。私のパフォーマンスが注目されていたんだなと実感することができましたね」
──少女アニメのキャラクターのようなスカートが印象的でした。
「(笑)。私は『美少女戦士セーラームーン』に代表されるアニメや、ヒラヒラしたテニススカートが大好き。せっかく日本にいるのだから、そういう好きな要素をもっと強調したアイテムを身につけようと思いました」
──日本の文化からの影響があるのですか。
「ニューヨークで暮らしていると、多様な文化が存在します。ストリートが変わるごとに、異なる国の雰囲気が味わえたりする。そういう混在した街の雰囲気から影響を受けることが多いですね。日本もそのうちのひとつです」
「日々の暮らしをするのにやっとな状況」で作り上げた初アルバム
──あなたはまた、フランスで生まれ、その後、米サンフランシスコ、ラスベガス、ニューヨークとこれまでさまざまな場所で生活されたそうですね。そういった経験も、音楽に影響を与えた部分があるのでは?
「私はフランスで生まれた直後にサンフランシスコに渡り、その後18年過ごしました。両親が離婚した影響で、途中に父親の暮らすラスベガスで数週間暮らしたこともありましたが、現在はニューヨークで暮らしています。この経験は、どれも特別なものだったと思います。また、母親はシングルマザーでありながらも、姉と私をしっかり育て上げ、毎年夏にはフランスへ連れて行ってくれました。また父親の祖国であるアルジェリアもアメリカやフランスと異なる雰囲気で忘れられませんし。これまでの人生で触れた景色のすべてが、自分の音楽に反映されていることは確かであり、自分のアイデンティティーとして表現したい部分であります」
──アルバム「High Highs to Low Lows」では、英語だけでなくフランス語も駆使した歌詞になっていますね。それもあなたの個性ということでしょうか。
「これが最初のアルバムになるので、自分のアイデンティティーをしっかり提示したい思いは確かにありましたが、それよりもメロディにのせた時にしっくりくる『言葉』を選んだ、と言った方が最適だと思います。言語に関しては、特にこだわりはなくて。サウンドに合うものを自由に選んでいきたいだけです。だから『Desert Rose』という楽曲ではアラビア語を取り入れたりもしていますし。決して流暢な発音ではありませんが(苦笑)」
──ではアルバムは、どんなテーマを持って制作されましたか。
「私の日常にフォーカスして、どういう人間でミュージシャンなのかを表現した内容になります。このアルバムを制作していた当時、私は最低賃金で働き、日々の暮らしをするのにやっとな状況でした。しかし、アルバムのレコーディングでロサンゼルスやマイアミなどに連れて行っていただいた時は、ファーストクラスに搭乗でき、さらにラグジュアリーなホテルに宿泊できた。でもそれが終わると、魔法が解けたように、地元でミルクシェーキをサーブする日々が待っている。そのコントラストをアルバムで表現したつもりです」
──アルバムを制作しているなかで感じた「ハイ」な瞬間と「ロー」な瞬間を教えてください。
「最高だったのは、いいアイデアが閃いた瞬間ですね。『これはきっと最高の楽曲になる!』という予感がすると、とてもワクワクしました。でも、そこから思い描く音にたどり着くまでは本当に『ロー』な気分になることがしょっちゅう(笑)。特に最後のミキシング作業は、思い通りになかなか進行せず、最悪な気分になったことも。また、メロディが思い浮かぶ瞬間も最高なのですが、ちゃんと意味のある歌詞を考えなくてはいけないと思うと、塞ぎ込んだ気持ちになることが多かったですね」
「人と人を結び付ける」音楽への情熱
――ファッションを通して伝えたいことはどんなことですか。
「ファッションに対する考え方やアプローチというのは、自分のそのときの気分で着やすいもの、自分がかわいいと思うものを着るということです。そのときのムードを反映した服を着ています。例えばきょうは気分がよくておしゃれをしたいと思ったときには、時間をかけてこだわって。きょうはレインボーカラーの服を着ているんですけど、例えばきょうはスタジオに行くだけ、誰も自分の写真を撮らないと分かっていれば、楽な格好で、例えばスウェットを履いていくかもしれません。そのときの気分を反映しています」
――ミュージシャンとしての夢を教えてください。
「私のミュージシャンとしての夢は、本当に自分の好きなことをやって活動していけるということ。いままさにそれができています。音楽を通して自分を支え、そしてほかの人の支えになってくれる、そんな音楽を作っていきたいと思います。音楽は人と人を結び付けるもので、人の気持ちに訴えかける力があります。そういった音楽を作っていきたいです。まさにいま自分がこうして音楽で活動できていることは自分の夢であって、これから達成したい目標があると思いますが、それを追い続けていくことが自分の夢です」
□ ロロ・ズーアイ。シンガー・ソングライター。24歳。仏パリ生まれで、現在は米ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動。2017年にシングル「High Highs to Low Lows」をリリース。「Spotify’s Fresh Finds Best of 2017」に選出されるなど注目を集める。また、今年2月開催の第61回グラミー賞で最優秀R&Bアルバム賞を受賞した女性シンガーH.E.R.の作品「H.E.R.」に収録された「スティル・ダウン」にソングライターとして参加した。今年4月に初のアルバム「High Highs to Low Lows」を発表。8月18日に「サマーソニック2019」(東京会場)に出演し、初の来日公演を行った。