夫のガンプラ全廃棄、妻の暴挙にネット上で賛否…専門家が教えるトラブル回避術とは
夫の帰宅時間の遅さから妻に趣味のコレクションを捨てられた――。2月に投稿された、夫が妻の行為について記したあるツイートが議論を巻き起こしている。このような結果になる前に双方の対応に問題はなかったのか。毎日をともに過ごしていく中で、それぞれ正しい趣味との付き合い方とはどのようなものか。夫婦問題に詳しいカウンセラーに話を聞いた。
男女から反響続々「人としてあり得ない」「そら捨てられるわな」
夫の帰宅時間の遅さから妻に趣味のコレクションを捨てられた――。2月に投稿された、夫が妻の行為について記したあるツイートが議論を巻き起こしている。このような結果になる前に双方の対応に問題はなかったのか。毎日をともに過ごしていく中で、それぞれ正しい趣味との付き合い方とはどのようなものか。夫婦問題に詳しいカウンセラーに話を聞いた。
反響を呼んでいるのはある男性ユーザーの投稿(現在は鍵アカウントのため、閲覧不可能)。事のいきさつはある日、夫が妻の了解を得て飲み会に参加したところ、帰宅が終電になってしまった。すると帰宅時間の遅さに妻が激怒し、夫の趣味のガンプラ(ガンダムのプラモデル)とお酒のコレクションを廃棄してしまったというのだ。この出来事に対して男女で賛否の声が上がり、その際の夫婦それぞれの対応に問題があったのではないか、といった議論が交わされている。
今回の妻側の対応に問題はなかったのか。夫婦問題に詳しいカウンセラーの高草木陽光さんは「この投稿前後のことが分からないので、この状況だけですべてを判断することはできませんが、まず大前提として人のものを勝手に捨てるのはよくないことです」と言及。「怒りの感情にまかせて人が大切にしているものを捨ててしまうというのは問題です。場合によってはモラハラ(モラルハラスメント)に該当する可能性があると思います」と、妻側の対応の問題点を指摘した。また、『夫婦問題相談室フォルテ』夫婦カウンセラー、おいかわのりこさんも「他人の物を勝手に廃棄する行為は、事情はどうであれ問題はあると思います」と分析した。
ツイートには趣味を持つ男性側から、一方的に捨ててしまうことに批判的なリプライが多く寄せられていた。捨てる、という行動に出る前に妻側としてできる対応が他にあったのではないのか。高草木さんは「捨てる以外の理想的な対応があったのは確かです。帰宅時間が遅い、だから捨てるというのは別の問題として切り分けて考えるべきだったと思います。早く帰ってきてほしい、遅くなるなら連絡が欲しいなど妻の望みがかないづらい、要求が通りにくくなってしまいます」と語った。
今回の一件は帰宅時間の遅さに逆上してしまったものと考えてしまうかもしれないが、専門家の目線からするとそんな短絡的なものではないとみている。おいかわさんは「妻のこの行為だけを切り取って決めつけて考えられないのではないかと思います。日頃からある程度許容し我慢してきた妻の許容範囲が超えたことで、夫への怒りから夫の大切な物を壊すという行動に結びついたのかもしれません。」と妻側の感情を分析した。また、高草木さんも「夫の趣味のものを捨てる、という行動に至ったのには何か別のところで原因があるはずです。趣味だけの問題で相談に来る、あるいは離婚するといった方はほとんどいません。家事や育児、コミュニケーションの問題などどこかで日常的に不満要素を抱えていたために引き起こされたのではないか、と思います」と解説。妻側の心境や事情をくむことも大事になりそうだ。
トラブル解決の秘訣は「日常的な会話」
また、一般論として、趣味が行き過ぎてしまった結果、家族に迷惑をかけるケースもあるという。高草木さんは「小さなケースも含めると趣味を起因とした相談が来ることは多いです。特に男性の場合は今回もそうだがコレクションする趣味が多い。すると、家の共有スペースまでそのコレクションが占めるようになり、家族内でトラブルとなる、といったケースもあります。多くの人はパートナーに指摘された際にすぐに気づくことができず、激怒されて初めて対策をする、といったパターンがほとんどです。『暗黙のルール』を守れる者同士であれば問題ありませんが、そうでない場合は金額や何か購入する際には互いに確認するなど家庭内でのルールを作ることが大事です」と自身のこれまでの相談の経験を踏まえ、アドバイスを送った。
実際に夫婦の中で家事や育児等、2人で共同で行っていくことが多くある中、趣味が離婚原因となることは多いのだろうか。
最高裁判所の公式サイトで公表されている全家庭裁判所の2020年度司法統計「婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別」によると、離婚の原因として「(パートナーが)浪費する」が夫が6位、妻が7位に挙げられている。一概に浪費が趣味だけを指すとはいえないが、夫婦、そして家族内で趣味や金銭との付き合い方を決めておくことは夫婦間でトラブルにならないためにも非常に大切だ。「『趣味』の時間やお金のかけ方について、きちんと話し合い、確認し合うことをおすすめします。夫婦や家族との時間を優先したうえで、『趣味』にどの程度時間やお金をかけるか、パートナーが快く思える範囲はどこまでかを理解し、努力する姿勢を示すことができたら素晴らしいです。子育て中は協力し合い、お互いにパートナーが『趣味』をする時間が取れるよう配慮し合うことで、ストレスも減り、より良い関係性を保てるのではないでしょうか」(おいかわさん)。
では、「日頃からの不満」をためないようにするには具体的にどのように生活を送っていくべきなのか。未然に防ぐ方法の提言として高草木さんは、「毎日の中で対話を増やすことが重要です。週末、休みの日に長時間話を聞く、というよりも、普段から5分、10分でも妻側の話を聞き、ガス抜きをしてあげる。日々過ごしていく中で夫から話を聞いてもらえている、聞いてくれているという姿勢を妻側が感じ取れることが非常に重要です」。おいかわさんは「日頃からお互いに感じていることを定期的に伝え合うコミュニケーションを取ることが大切です。日頃から夫婦でお互いを思いやる言動があったり、改善に向けた建設的な話し合いがきちんとなされたりしていれば、未然に防ぐことはできたのではないでしょうか」と強調する。
仕事や家事、育児に追われる毎日の中、息抜きとして趣味に没頭する時間もあって当然。しかしその中でもパートナーや子どもに迷惑をかけないよう、日々夫婦としてコミュニケーションを綿密にとり、日常から互いに不満やフラストレーションをためないようにしていくことが重要だ。
高草木陽光
これまで9,000件の夫婦問題、家族問題に携わってきた夫婦問題カウンセラー。相談内容は、不倫・離婚・モラハラ・嫁姑問題・関係修復・再構築など多岐にわたる。著書に「なぜ夫は何もしないのかなぜ妻は理由もなく怒るのか」「心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK」(共に左右社)がある。個人カウンセリングの他、テレビ・雑誌でのコメントやアドバイスも多数。
ホームページ
https://haru-counseling.com/
Twitter
https://twitter.com/haru_takakusagi
ブログ
https://ameblo.jp/haru-shiawasekazoku/
連載「ココカラ夫婦物語」
https://kokokarapark.com/m/m4a98222c8038
おいかわ のりこ
夫婦問題相談室フォルテ:https://www.planning-forte.com/夫婦カウンセラー、子育てアドバイザー、コニュニケーション心理学トレーナー、マスターコーチ、NPLプラクティショナー。1968年生まれ 岩手県出身 日本女子大学家政理学科卒。延べ30年間にわたる結婚生活や、専業主婦、離婚、子育て、海外生活等の経験を活かし、「相談者が自分らしく幸せに生きるために後悔のない選択を」という理念のもとに、2014年「夫婦問題相談室フォルテ」を設立。カウンセリング実績は4000人以上にのぼる。夫婦それぞれの特性や問題点を見極め、「アンコンシャス・バイアス」や感情のコントロールについて分かりやすく説明するなど、夫婦問題の解消に向けた独自のサポートを行っている。特に、経験に基づく具体的なアドバイスを求める相談者が多数来室している。